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映画『ARGYLLE アーガイル』感想

予告編
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最近サボってたけど久しぶりにまとめて映画感想文投稿しようかと⑤



とんでもスパイ映画


 ペニーワイズ? ヴォルデモート? かわいいモンじゃないですか。

 ジョーカー? サノス? むしろカッコイイですとも。

 とまぁ、挙げ出したら切りが無いほど、これまでに多くの悪役キャラクターが世に生み出されてきましたが、ここまで嫌悪感を抱いた悪党を目にしたことがあったでしょうか。いやマジで、ほんと、猫に酷いことするような奴は地獄に落ちてしまえばいい



 ……すみません。本題に入ります。マシュー・ヴォーン監督の最新作ということで、個人的には観ないワケにはいかなかった本作。『キングスマン』に続いて、またもや “とんでもスパイ映画” を見せてくれました。とにかく「痛快」とか「爽快」なんて言葉が似合うアクション映画です。

過去の監督作に負けず劣らずの過激っぷりでしたが、特別グロくもなかった本作。『キングスマン』シリーズや『キック・アス』とは違い、映倫の年齢指定すら入っていませんでした。しかし、表現はマイルドになっているにも関わらず、決して見応えは劣っていなかったのも素晴らしい。


 相変わらずやっていることは無茶苦茶というか笑、「そんなわけない」のオンパレードを全力で楽しめるのがマシュー・ヴォーン監督によるアクション映画の魅力の一つ
 そんな中で今回特に印象的だったのは、戦闘シーンでの効果音とは裏腹に、映像は痛々しく見えない瞬間が多くあったこと。特に後半、発煙筒のカラフルな煙がスクリーンいっぱいに充満する光景は、グロテスクな描写を濁しつつ、その場に居るエリー(ブライス・ダラス・ハワード)とエイデン(サム・ロックウェル)二人の心情をロマンチックに、あるいはユーモラスに表現してくれていました。まるで『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(感想文リンク)での戦闘シーンを彷彿とさせるような色彩豊かな映像だけでも観ていて楽しいはず。

 何より、形を留めない変幻自在な煙を利用した、最早メルヘンチックとも呼べる表現の一つ一つに対しても、「マシュー・ヴォーン監督のスパイアクション映画だし」という免罪符(?笑)も相俟って、何でもアリに思えてくる。前述したような「そんなわけない」のオンパレードを違和感なく楽しめたのは、そんな理由から。

 なればこそ本作は、映画館という外界と隔絶された空間でもって、全力で映画鑑賞を楽しむのが吉。スクリプト比は通常のシネマスコープのサイズのままでしたが、大きなスクリーンと包み込まれるような音響の中で楽しめるIMAX鑑賞が一番かもしれません。


 また、アクションで言えば、本作一番の個人的名シーンは、終盤での一幕。ネタバレ防止のために詳細は述べませんが、これぞ「そんなわけない」笑! しかし、興奮せずにはいられないアクションシーン。ナイフを利用して戦場を駆け巡る疾走感、その勢いのまま回転しながらの銃乱射。この爽快過ぎる戦闘シーンを何に喩えようものか。“マシュー・ヴォーンみ” 炸裂の大立ち回りは、是非とも実際にご覧になって楽しんで頂きたいところです。
 一昔前に遊び尽くしたアクションゲームなんかを思い出させられましたが、そんな話を掘り起こしたところで話が脱線するだけなので割愛。



 自身が書いたスパイ小説が、偶然にも実在のスパイ組織の行動と合致していたため、命を狙われるハメになった主人公・エリー。そんな彼女が執筆する小説の主人公エージェント・アーガイルの活躍を描くパートもとても良い。
 劇中劇と呼べなくもないことあり、現実パートに比べて若干濃い目の味付けというか、まぁハッキリ言うとクサかったりキザだったりする立ち回りの雨あられなわけですが、そういった演出が本編をより魅力的にしてくれていた印象もあります。含蓄ありげなセリフが物語上の伏線を回収していくという気取った演出すら、本作の手に掛かれば一切クドく感じない不思議。

 また、予告ティザーでも描かれていましたが、見るからに妖しいというか一筋縄ではいかなそうな女スパイと、何年前のヒーロー像かと疑いたくなるような敏腕エージェントという構図も然ることながら、それらを演じているのがヘンリー・カヴィルやデュア・リパというのも素晴らしい。見てくれだけで笑ってしまうというか、ビジュアルの力強さが作品のテイストに負けていない。いやむしろ引き上げてくれている。ついつい能書きを垂れたくなってしまいますが、一目で世界観をバチッとハメ込む画作りだけで、観客を最高に楽しませてくれる。




 序盤、エリーが初めてエイデンと遭遇するシーン。新幹線の中で突如始まる殺し合いは、どこか『ブレット・トレイン』(感想文リンク)を彷彿とさせる。作品のテイストが似通っていると思えたので引き合いに出したわけですが、このアクションシーンに限ってのことではありません。本作も同様に、なんだかんだで偶然ではなく必然によって運命が展開していく。強引なところもありましたけど、本作だったら何でもOK。

「伏線回収」と言ってしまうとチープに聞こえてしまいそうですが、そんな驚きや興奮のサプライズの一つ一つが、裏切りにもロマンスにも化けてくれるのが本作の良いところ。ストーリーとしての面白さだけではなく、キャラクターの魅力を引き立ててくれるような、点と点の結び付け方。こういったところも魅力の一つだったんじゃないかな。


 逃げる者、追う者、必然的に同じ動線になりながらも、時間軸を少しずらしながら同時進行で描くなど、イタチごっこ的な展開ですら退屈に感じさせないテンポの良さも素晴らしい。とにもかくにも、(ここまでダラダラと述べておいて何ですが)余計なことは考えずに観て楽しむのが一番の映画です。

 ちなみにサムネの写真は、TOHOシネマズ日比谷に展示されていたものです。……逆光であんまりうまく撮れませんでしたが。


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