有永 糸

ありなが いと と申します。 物書きになりたい会社員。語学留学を目指して英語勉強中。 …

有永 糸

ありなが いと と申します。 物書きになりたい会社員。語学留学を目指して英語勉強中。 書くことと読むこと、食べることが大好きです。

最近の記事

愛しぬく強さ~『銀の森のパット』が教えてくれたもの~

またひとり、文学界の魅力的なヒロインを見つけてしまった。 『銀の森のパット』という小説に出会ったのは、少し遠いが定期的に足を運ぶ、お気に入りの大きな書店だった。 手元にはもう数回読んでしまっている小説しかなくなり、「何か新しい作品が読みたい」と思って、外国文学の棚を探していたとき。 厚さもちょうどよくて、寒色だが不思議とあたたかみを感じさせる、森が描かれた表紙デザインも素敵だった。ぱらぱら捲って何行か拾い読みしてみたとき、この本を読もうと決めた。 主人公、パットの目を

    • この選択を正解にしたい

      先月、引越しをした。 一年暮らした小樽から、以前一人暮らしをしていた札幌へと戻った形だ。 今回の引越しは、強い覚悟と決意を伴う決心だった。 そのまま小樽のアパートに住んでいれば、職場まで徒歩15分というかなり便利な環境だ。買い物にも全く不便せず、駅にもとても近かった。それに何より、海水浴場までも歩いて行ける距離。海が大好きなわたしにとって、まさに理想的な暮らしだったのだ。 それなのに、たった一年でこの素晴らしい環境を手放すことになった。でも、これは自分で選んだことだ。

      • 耳から癒される

        食料品の買い出しのため近くのスーパーマーケットへ向かうとき。 イマイチ気分が上がりきらない通勤時間。 部屋で家事仕事を片付けるとき。 わたしはいつも、iPhoneから「音」を流している。 聴くものはその日の気分によって変わる。 Spotifyにダウンロードしている楽曲だったり、 英語のリスニング講座だったり、 応援している芸能人のラジオだったり。 中学生の頃からずっと聴き続けているボーカロイドの曲は、歌詞なんてすっかり丸暗記して、気付くと部屋で口ずさんだりしている。 わた

        • 愛と笑顔をお守りに

          ちょっとしたことで不機嫌になり、イライラを他人にぶつけ、自分のことしか考えない。 そんな人より、 いつもニコニコ上機嫌で、誰に対しても広い心を持ち、あらゆるものに感謝している。 そういう人の方が豊かに生きられるに決まっている。 分かってはいるのだ。でも、どうしても後者のようには振る舞えないときもあって。 今の職場に来てから3年が経とうとしている今、イライラとモヤモヤで気分が塞いでしまうことが多くなったのを自覚している。 前までは気にもならなかったことが気になり、思い通り

        愛しぬく強さ~『銀の森のパット』が教えてくれたもの~

          思い出巡り旅

          先月、大学時代からの友人と、大学時代を過ごした町、函館へ遊びに行ってきた。 観光地や名所を巡る観光旅行ではなく、言うなれば「思い出巡り旅」。きっかけは友人の一言だった。 「ゼミの先生に会いに行かない?」 彼女は大学時代、わたしと同じ文学研究系のゼミに所属していた。そのときお世話になった先生が定年退職を迎えたそうで、それを知った彼女がわたしを誘ってくれたのだった。 先生の名前を目にした途端、懐かしい大学時代の記憶が一気に甦った。 下の名前をもじった愛称で呼ばれていた先生

          思い出巡り旅

          苦手なこと

          ---友達とのメールのやり取りが楽しかった中学生時代とは、わたしはすっかり変わってしまったのだろうか。 溜まっていくLINE通知の数字をぼんやりと眺めながら、ふとそんなふうに考える。 ……わたしは、LINEが苦手だ。 LINEでのコミュニケーションが未だに上手くできない。 使い始めてから10年も経つのに、上手く使いこなせるようになるどころか、どんどん下手になってしまっている気がする。 苦手な理由ならもう自分で分かっている。 相手の顔が見えず、声色も表情も分からないうえ、

          苦手なこと

          働くことを考える

          気が付けば、働き始めてからもう10年が経過している。 高校生で初めてアルバイトを経験してから、受験の時期を除いてわたしはずっと働き続けてきた。 アルバイトを始めたきっかけは、自分でお小遣いを稼ぐためだった。毎週のように通っていたカラオケ代、友達とランチやカフェに行くためのお金、オシャレして出かけるための洋服代…。 学生生活を楽しく過ごすためには、自由に使えるお小遣いが必要だった。だからわたしは、放課後に友達と遊びに行くため、土日の日中をほぼ毎日、ファストフード店でレジを打っ

          働くことを考える

          26歳を振り返る

          先月、わたしは27歳になった。 いつの間にか、20代も後半に来てしまった。 学生時代のわたしにとって、27歳なんてものすごく大人で、誇りと自信をもってバリバリ働いている……なんてイメージしていたけど、実際はそんなに順風満帆ではなくて。 27歳のわたしは、10代のわたしがイメージしていたよりもずいぶん子どもだ。 性格も、癖も、人格も、それほど成長していない、とすら思う。 10年経ってもまだこんなに子どものままだなんて、10年前のわたしが知ったらガッカリするかもしれない。 ご

          26歳を振り返る

          身を焦がすような恋が 陽だまりの友情に変わる頃

          電車に乗って、大切な友人がわたしの町に遊びに来てくれた。 前回わたし達の地元近くで遊んだとき、「次は小樽に行くね」と言ってくれたその約束を果たしてくれた。 昔から、絶対に適当なことを言わない子だった。嘘をつかず、真面目で、賢くて、しっかりと物事を考えてから言葉を口に出す子だった。 わたし達が出会った高校時代から10年経った今も、その誠実さはずっと変わらない。 自分が乗る電車の時間を、わたしに間違えて伝えてしまった彼女。待ち合わせ場所の駅で顔を合わせた途端、謝罪の言葉が挨拶が

          身を焦がすような恋が 陽だまりの友情に変わる頃

          それは最高の「青春」 ~映画『カラオケ行こ!』感想~

          先月末、公開発表からずっと楽しみにしていた映画を観に行った。 歌が上手くなりたいヤクザ役を綾野剛さん、変声期に悩む合唱部の中学生役を齋藤潤くんが演じる映画、『カラオケ行こ!』だ。 綾野剛さんが大好きなわたしは、Xで映画の情報をずっと追いかけていた。 原作マンガを読んでしっかり予習してから観に行こうか迷ったが、前情報はほとんど入れずに観に行くことにした。 以前、大好きなマンガが映画化されて大喜びで観に行ったとき、わたしの1番好きなシーンが省略されていてがっかりした経験があ

          それは最高の「青春」 ~映画『カラオケ行こ!』感想~

          美しくて、あたたかくて、幸せだったある冬の日

          わたしは冬が好きだ。 寒いし、暖房費も高くつくし、寒さを耐えるエネルギーを得るためにボリュームのあるものを食べたくなってしまうせいで気を抜くとすぐ体重が増えてしまうし、わたしの住む地域は特に、ほぼ毎日雪が降ってJRもよく遅延する。 それでもわたしは冬が好きだ。通勤や買い物の度にどれほど大変な思いをしても、そう言い続けている。 数日前、ちらちらと優しい雪が降るだけの、穏やかで気温も比較的高めの日があった。 朝起きたときから部屋に差し込む日差しが明るく、それだけで嬉しい気持ちに

          美しくて、あたたかくて、幸せだったある冬の日

          今年のテーマ「愛」

          先日、少し遅ればせながら初詣に行ってきた。 年始は仕事で忙しかったため、初売りの人出も少し落ち着いてきた頃に帰省し、母と一緒に何年ぶりかの地元の神社へ。 昨年の感謝と今年初めのご挨拶、ささやかなお願いごとを心の中で唱えた後、楽しみにしていたおみくじを引きに行く。 もう10日も過ぎていたので巫女さんには会えなかったけど、2種類並んでいたおみくじを両方購入し、ドキドキしながら開封。 結果は「吉」と「小吉」。去年が大吉だっただけに少しだけ残念な気持ちになってしまったけど、一年の

          今年のテーマ「愛」

          年の初めに思うこと

          あけましておめでとうございます。 今年もどうぞよろしくお願いします。 2024年の幕開けは、わたしにとっては仕事の正念場だった。 みんなが休んでいる中、初売り戦争を乗り切るため駆けずり回る。販売員とはそういう仕事だ。分かっていることだし、自分で選んだ仕事なのだから、まさか今さら文句なんて言えない。 でも、年越しに家族で過ごせないのは、やっぱり寂しいと思ってしまった。だから、今年の春頃からは、帰る場所が実家になるのだと思うととても嬉しい。 大学時代から続けていた一人暮らしを

          年の初めに思うこと

          物への執着心を手放す

          ぐるりと、部屋の中を見渡してみる。 散らかっているわけではないけどなんだか雑然として見えるのは、物が多いからだ。 子どもの頃から、物に囲まれた空間で生活してきた。 母は買い物が大好きで、物を買っては溜め込むタイプだったから、その影響は決して小さくはないという気はしている。 雑誌でモデルさんが身に付けていて、友人の持ち物を見て、テレビで紹介されていて、ネットの広告をついクリックして…… 日常に潜むたくさんの誘惑にしょっちゅう負けて、わたしは「欲しい」と思った物を次々手に入れて

          物への執着心を手放す

          反抗心は悪じゃない

          わたしはわりと、「素直」と呼べる部類の人間だと自覚している。 他人の意見は尊重したいと常々思っているし、人の話はまずじっくり聞いて受け止めたいと思っている。誰かからのアドバイスは有難く受け取って自分なりにやってみようと努力するように心がけてもいる。 悪く言えば「単純バカ」とも言えるけど、素直な方が人間関係、上手くいくことも多くて。相手の言葉を素直に受け取って、それに応えようと一生懸命やっていると、そのまじめさを買って信頼してくれて、心を許してもらえたり、ポジティブな言葉を

          反抗心は悪じゃない

          思いやりの温度

          心あたたまる出来事は、たったひとつあるだけでその日一日を素敵なものに変えてしまえる。 金曜日はそんな一日だった。どんよりとした冷たい曇り空の中、優しい光を放つあたたかい光がそっと灯っているような。 その日は朝から雨が降っていて、天気も気分もパッとしない朝だった。 木曜日の楽しかった一日を過ぎた翌日だったから、尚更気分は上がらない。前日にできなかった掃除も、洗濯も、食料品の買い出しもしなければならないし、ずっと痛いままの膝をどうにかするための整骨院と、親知らずを抜くための歯

          思いやりの温度