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働くことを考える

気が付けば、働き始めてからもう10年が経過している。
高校生で初めてアルバイトを経験してから、受験の時期を除いてわたしはずっと働き続けてきた。

アルバイトを始めたきっかけは、自分でお小遣いを稼ぐためだった。毎週のように通っていたカラオケ代、友達とランチやカフェに行くためのお金、オシャレして出かけるための洋服代…。
学生生活を楽しく過ごすためには、自由に使えるお小遣いが必要だった。だからわたしは、放課後に友達と遊びに行くため、土日の日中をほぼ毎日、ファストフード店でレジを打ったり、テーブルや床を掃除したりして過ごしたのだ。

大学時代も、ほぼ毎日アルバイトへ通う生活だった。
振り返ると今までの人生で一番楽しかったと感じる大学四年間、その思い出のかなり大きな部分をアルバイトが占めていると言っても過言ではない。

大学時代に働いていたのは、観光地のすぐ近くの居酒屋。料理が他より少し割高なため、大学生などの若いお客さんや観光客よりも、地元の常連客や年配のお客さんが多かった。

おかげでどんちゃん騒ぎも少なく、立地の割にはとても働きやすい環境だったと思う。
気さくで面白い人ばかりだった人間関係にも恵まれ、わたしはこのバイト先が大好きだった。
接客も楽しかったし、つまみ食いさせてもらえる料理も美味しかったし、社員の方たちやバイト仲間とのおしゃべりも楽しかった。

青春時代がぎゅうぎゅうに詰まったアルバイトだったなあ、と、今振り返ると懐かしくて、当時の自分が少し羨ましいくらいだ。

接客の仕事を続けたいと思ったのは、この居酒屋アルバイトが本当に楽しくて、大好きだったからだ。もはや趣味と呼べるほど楽しんでいて、バイトのシフトが入っていない日は退屈に感じてしまうほどだった。

社会人になった今、わたしはずっと接客業を選んで働いている。
幼い子どもの頃から、人とのコミュニケーションも、会話も、全然得意じゃないのに、どうして接客が好きなのだろうと未だに少し不思議に思う。

でも、それはもしかしたら、自分の能力や知識を使って誰かの助けになれるのが嬉しいからかもしれない。

不器用なわたしが、最初に苦労はしてもやっぱり働くのが楽しいと思えたのは、きっと何に対しても誠実に向き合ってきたからだろうな、と思う。

誠実な気持ちは相手に必ず伝わる。目の前の人が一体何を求めているのか、わたしには何ができるのか、どうしたら喜んでもらえるか……。

そうやって真剣に向き合う気持ちさえあれば、不器用でも、ミスしても、忘れても、相手に努力は認めてもらえる。わたしはそうやって食らいついてきた。むしろ、まだ経験も知識も浅い、プロフェッショナルじゃない人間には、それしかできることがなかったのだ。

でも、それこそが一番大事なことだとわたしは知っている。誠実に向き合う。その基本姿勢を忘れなければ、失敗して怒られたとしても誰かが必ず見ていてくれるし、応援してくれる。

人という生き物は、誰かに必要とされ、役に立っていると実感できたときに幸せを感じるらしい。

悲しい思いをすることもあるし、理不尽なことや辛いことももちろんたくさんある。
でもそれ以上に、誰かの役に立てることで得られる喜びはものすごく大きい。

仕事に行きたくなくて憂鬱な朝もあるし、出来なかったことを思って落ち込む夜もある。それでもわたしは働くことが好きだなあと思う。一生働かなくても暮らせるような大金が手に入ったとしても、わたしは働くことをやめないだろう。

誰かに「頑張らなくていいよ」とか、「手を抜いていいよ」と言われても、結局わたしは頑張ってしまうのだ。それは、誰かに認められたいとか、もっと高い給料が欲しいとか、そういう欲求とは関係ない。できることをやらない自分が嫌いだから。いや、そもそも、不器用だから「上手に手を抜く」ということができないせいもある。

だから、わたしのように、「自分は不器用だ」と少しでも劣等感を抱いて不安になってしまっている人がいたら、これだけは伝えたい。

「不器用でもいい。その分、誠実であれば必ず認められる時がくる。」

ひとつずつでも、少しずつでも、確実にこなしていけばいいのだ。
誰かと比べる必要もないし、叱られて落ち込む必要もない。
自分ができることを、無理せず、背伸びせず、できる分だけこなしていけば、ある日突然、数ヶ月前よりはるかに成長している自分に出会える。
わたし自身もそうだった。叱られてばかりだったのが突然褒められるようになって、自分が一番びっくりしたりするのだ。

なかなか上手くいかなくても、逃げずに頑張りたいと思える自分を誇れていれば、きっとこの先、上手くいく。


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