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この選択を正解にしたい

先月、引越しをした。
一年暮らした小樽から、以前一人暮らしをしていた札幌へと戻った形だ。

今回の引越しは、強い覚悟と決意を伴う決心だった。
そのまま小樽のアパートに住んでいれば、職場まで徒歩15分というかなり便利な環境だ。買い物にも全く不便せず、駅にもとても近かった。それに何より、海水浴場までも歩いて行ける距離。海が大好きなわたしにとって、まさに理想的な暮らしだったのだ。

それなのに、たった一年でこの素晴らしい環境を手放すことになった。でも、これは自分で選んだことだ。

人が多すぎず、古い建物が残るレトロな街並みも趣があり、人もあたたかくて住みやすかった小樽。
ずっとこの街にいられるならそうしたかったけど、小樽のアパートで暮らし始めてから半年ほど経った頃、突然ニュースが舞い込んできた。
父と母が、札幌でマンションを一部屋買うことにしたのだという。
あまりに急な話だったので驚いた。
確かに、母はずっと「今住んでいる町を出たい」と言っていた。そして「いずれ札幌に引越したい」と。
でもそれは「いずれ」の話で、まさかこんなに早く現実になるなんて思っていなかった。

母が決断を話してくれたとき、わたしは思ったのだ。「札幌からなら、職場がある小樽まで通える」。

実家から職場が通勤圏内になるのだ。
この機にもしも実家に住むことができれば、一人暮らしよりもお金を貯めやすくなる……。

ただ、降って湧いたその選択肢に飛びつく前に、わたしはずいぶん迷った。

小樽が大好きだったからだ。
今まで、転職しながら引越しを繰り返してきたけど、小樽がいちばん、住み心地がいいと感じていた。

20代でワーホリに行きたいという目標のため、
このまま小樽で一人暮らしを続けて、少しずつでもコツコツ貯金を頑張るか、
通勤は大変になるが、札幌で両親と住み、なるべく短期間でお金を貯めるか。

……迷った結果、わたしが選んだのは後者だった。

手放さなければならないものがたくさんあった。
でも、それ以上に、得られるものがあるなら。目指すものに少しでも早く近づけるなら。そう思ったのだ。

……わたしは、選ぶのが苦手だ。
ずっとそうだった。
自分の好きなものが分からないというよりも、嫌いなものがあまりないから。避けるべきものを直感で判断できないから。

目の前に選択肢が提示されると、確信をもってぱっと選ぶことがなかなかできない。
「疑えない」「批判的に見られない」というのは、物事や他人のいいところが目に付きやすいという美点でもあるかもしれないけど、そのせいでいいように利用されたり、騙されて後悔したりしてしまうリスクがある。なんでも自分で判断し、自分で責任を取る社会人になってから、それを身をもって理解した。

今まで自分で選んできたことの結果を振り返ってみれば、何かと後悔することが多かった。
「あのときなんでこうしなかったのかなあ」とか、「もっと別のやり方で頑張ってみればよかったなあ」とか、「あんなに焦って決断しなければよかったなあ」とか……。

でもそれって、考え出すとキリがない。
しかもたぶん、実際に違う選択肢を選んでいたとしても、「こうすればよかった」という思いは結局出てくるのだ。

失敗や後悔から色んなことを学んで、わたしはようやく気が付いた。
「選んだ道がダメだったとか、間違いだったとかではない。選んだ道を正解にできるかどうかは自分の頑張り次第なのだ」と。

札幌で暮らすようになった今、やっぱり後悔しそうになることはいくつもある。
でも、選んだことを覆すことはもうできないから、この環境で得たものに目を向けていこうと、きっぱり気持ちを切り替えることができるようになってきた。

例えば、ひとり寂しくご飯を食べることがなくなって、母の作った栄養満点の料理が食べられること。
テレビを見ながら一緒に楽しさを分かち合える人がひとつ屋根の下にいてくれること。
月々一定額を支払えばいいようにしてくれているので、光熱費や食費の負担が減り貯金がしやすくなったこと。

何より、気楽におしゃべりできる家族がいつも近くにいることで、思い悩む夜や涙を零してしまうことが格段に減った。
笑い声や笑顔やおふざけが増えた。
これはかなりいい変化だ。

何かを選ぶには、選択肢を一つ一つ、じゅうぶんに検討できるだけの知識が必要だ。
でも、新しいことに挑戦するとき、違う世界に踏み出す決心をするとき、自分の判断に自信をもてるほどの知識なんかないことの方が多い。

だから、わたしはどんな選択をしても、それを悔やむのをやめて、それを正解にできるように努力したい。

それができれば、わたしはもっと自分に自信がもてるだろう。自分が歩いて来た道を誇れるだろう。



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