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精神科で働いていて1番やりがいを感じる時

私は精神科ナースとして
勤務し始めて4年目程度の
自称若手ナースなんですが

今日は今まで精神科病院に勤務していて
1番嬉しかったこと。
1番やりがいを感じたエピソードについて
書いていきます。

「俺はこんなこと頑張ったんだよー」
というテイカー的なnoteではなくて
どちらかと言えば
精神科病院の構造と
精神科ナースは何にやりがい
感じるのかについて書いていきます。

私は今、アルコール依存症の治療病棟に
所属しています。
比較的精神科病院としては
大きい部類の病院なので
県外からもアルコール依存症の
治療を受けに来られます。

患者さん1人に対し
担当の看護師が振り当てられるのですが
約8週間、アルコール依存症の治療プログラムを
受けている間は
定期的に面談を行い
家族とも面談し
時には職場の上司とも面談し
身体的精神的な面への
介入だけでなく
経済的社会的な面への
介入も行っていきます。

ただお酒の問題について考えるだけでは
間違いなく患者さんにとっては
ストレスでしかないので
退院後2度と病院に来ることはありません。

アルコール依存症の人はお酒をやめたいとは限らない

アルコール依存症の人って
どうやって受診するのか
ご存知でしょうか。

風邪や怪我だと症状が辛くて
本人が希望して病院に来ますよね。

ところが初診のアルコール依存症の人は
「お酒がやめられなくて辛い!」
というよりも
家族が困り果ててなんとか病院に繋がるケースが
多かったりします。

どちらかと言うと本人はやめたくないんです
病院に行くと
「お酒をやめなさい」
と言われるから病院には行きたくないんです。
ストレスの対処法がわからず
他人に頼ったり
甘える術も知らず
唯一気分を晴らしてくれていたと思っている
お酒を手放したくはないわけです。

アルコール依存症者は
全国に約110万人いると言われますが
精神科病院にかかるのは
約5万人程度しかいません。

そして精神科病院に通院して
退院後に受診を定期的にするのは
お酒をやめられている人で
再度飲んでしまった人は
罪悪感や自責の念に駆られ
病院に来にくくなってきます。

要はそれぐらいアルコール依存症の人が
病院に受診しに来ることって
尊いという感覚が私にはあります。

ある忘れられない患者さん

それぐらいアルコール依存症の治療は
難しいものです。

そんな中ある1人のアルコール依存症患者さんの
担当看護師になりました。

高齢の男性患者さんで
退職後家族との折り合いが悪く
お酒を飲んでしまうパターンの方だったのですが

この方も頼れる人が周りに
ほとんどいない状況でした。

時代のせいなんでしょうが
団塊の世代の方などは
会社以外のコミュニティを持たれてない方が
多いんですよね。

人間は自分のことを肯定的に受け入れてくれる
集団をいくつか持っておくことが
メンタルの安定において重要
なんですが
その方はこれといった趣味もなく
仕事と自宅を往復する毎日で
退職された後は家に籠ることが多かったそうです。

社会人時代は
非常に真面目で熱心な方のようでしたが
お酒の量が増え
朝から飲むようになり
暴言を家族に対して吐くようになったそうです。

そうなると家族がいようがいまいが
孤立していくんですよ。

すると寂しさを紛らわすために
さらにお酒を飲むという
負のループ状態。

どうにかこうにか
家族が説得して
当院に受診したのですが

その後、治療プログラムを受けても
どこか上の空で
なかなか病棟でのルールも守れず
病院の中でも孤立しかけているという
状況だったのです。


そんな状況の中
担当の看護師として
何をすべきか考えました。

過去のお酒問題について振り返りを行うか?
お酒についての正しい知識を学ぶべきか?
認知行動療法を行ってお酒に対する
考え方を学ぶか?

いろいろ考えた結果
まずはおしゃべりをすることに私は決めました

想像するに
おそらく他人とたわいもない話をすることを
何年もしていなかったんじゃないかな?
と思ったわけです。

そりゃそうですよね。
仕事をやめて
家にも外にも居場所がなく
朝からずっとお酒を飲んでいる状態じゃ
家族とも会話なんてできないでしょうからね。

そこで私は本来
患者面談の中でお酒に関わる話を
しないといけないのですが

ひたすらおしゃべりをしてました。
多少、これでいいのかな?
お酒について、依存症についての
お話もしないといけないんじゃないか?

と焦りや不安もありましたし
何より患者さんもそういう経緯があるので
なかなか積極的には
お話もされませんでしたから
気まずい状況になることも何度もありました。

そんな中でも
・昔は仕事をしている時は
こんな大きな成果を上げた、とか
・学生時代は部長をして慕われていた、とか
・若い頃は結構モテていた、とか
過去の話をひたすらしていく内に
家族に対して
本当は悪いと思っている、とか
だけど家族から頭ごなしに
自分を否定されるようなことばかり言われると
カチンと来てしまって
つい言い過ぎてしまう。
この先の人生も長くないだろうし
恩返しもしなきゃいけないけど
残りの人生も短いだろうから
好きなお酒を飲みながら死にたいという
思いもある、など

揺れ動く心情を吐露することも増えてきました。

今まで家族のために
一生懸命に働いて
退職したあとは
家の中に居場所がなく
先が見えない孤独を
紛らわすために飲んでいたお酒が
結果としてさらに孤立を深める。

さらに精神科病院に通院したことで
親族にも縁を切る人がいたそうです。

まだ精神科に対する偏見は根強くありますからね。


そして
そういう想いを今まで誰かに相談してきたことは
ありますか?
と問うと
全くなかったそうです。

何か問題があった時
すぐに誰かに頼る人は依存症には
なりづらいと思います。

真面目で自分に厳しく
人に頼るよりまずは自分で
なんとかしないといけないと思う人ほど
依存症になる傾向にある
わけです。

私は8週間の治療期間の多くを
雑談に費やしてきました。
とはいえ
信頼関係ができたかと言われれば
まだまだではありましたが。

そして退院の日が近くなり
退院後の通院先を
決めなければいけない時期になりました。

前述の通り
遠方から来られる方に限らず
近所のクリニックに
通院する方が多いですからね。

ある日主治医から
「◯◯さん、うち(当院)に通うことになったよ」
と聞かされまして
最後の面談の日になり
「通院先を当院にしてくださって
 ありがとうございます」
とお伝えしました。


すると

「うん…あなたに甘えようと思って」

とおっしゃったのです。


年が半分ほどの若造の男に頼ろうと思った
心情を想像すると
嬉しさだけでなく、切なさも感じましたし
その後、物凄い責任感が襲ってきました。

その方の人生を背負えるわけではありませんが
これはなんとか私が責任持って
サポートしないといけない!
と私のやる気スイッチが全て押された気がしました(笑)

退院後の通院先をクリニックにしても
問題はないのですが
8週間一緒に頑張って
その頑張った姿を知っている病院で
退院後もサポートした方が
メリットは大きいと私は思います。

一般の総合病院はあくまで病気や症状を
治したり、抑えたりするために行くとすれば

精神科病院はそれに加えて
医師や看護師など
特定の誰かを頼って通院することも
少なくないです。

退院した後も
相談や話を聞いてもらいに
患者さんが病棟に顔を出すことが
日常なんですよね。
最近は感染症対策から
なかなか入院していない方が
病棟に来ることはできませんが。

正しい治療も大事ですが
加えて信頼関係が重要とされる
分野
の医療なんです。

たぶんここが精神科で働く上での
1番のやりがいであり
スタッフの力量が試される
ところなんだと思います。

これからの時代は医療に関わらず
どの仕事においても
サービスの内容よりも
誰からサービスを受けたいか
の時代であるようですから

正しい技術や知識よりも
相手との信頼関係が
仕事をする上で大事だという
当たり前であり、でも非常に難しいことを
改めて思いました。



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いや、なげーわ今日!
書くの3時間くらいかかったわ!
こんな長い文章を最後まで読んでくれたあなたが
愛おしくてしょうがない!(笑)
そしてもう読み返して
誤字脱字とかチェックしたくない!

これで〝スキ〟が5個以下とかだったら
泣くぞ!😭(笑)

明日はもっと読みやすい分量になるよう
がんばりますので
懲りずに明日も読んでください😂(笑)

サポートしていただけると相当喜びます😭