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創造する力、良質なゲーム体験と記憶

僕はゲームが大好きだ
好きなゲームが発売されるとご飯や寝ることを忘れ夜通しでやってしまう
インフルエンザで意識が朦朧としているのに関わらず発売直後のメタルギアを寝食忘れてやってしまうほどだ
こういったプレイはオススメしない
働くようになってからは、忙しさもあってさすがにそれはマズイと思い
今はゲームから少し離れ
友達の感想を聞いたりやネットの攻略動画などを眺める程度にしている
この集中力が勉強などに活かせればどんなに良かったかと思うのだが
世の中そう上手くはいかないものだ


僕の家は早くに父が亡くなり、専業主婦だった母が僕と兄を育てるために働かざる得ない家庭だった
母は日中は働いているものだから、僕と兄はすぐ近くの祖父母の家にいることが多かった
夜になって母が祖父母の家に迎えにきて、自分の家に帰るという生活だ


僕はとにかく早く自分の家に帰りたかった
それと言うのも、ファミコンが自分の家にあったからだ
祖父母の家で宿題を適当にこなしおやつを食べ、相撲中継を見ながらうずうずして母の迎えを待ったものだ

ただ、家に帰ってもすぐにゲームができるわけではない
テレビは一台しかないものだから
まずは兄が最初に好きなゲームを遊ぶのが普通だ
兄弟がいる家庭なら皆さんお分かりになるだろう
僕は兄の横でそれをずっと眺める
ゲームをしていい時間は決められていたから
僕の番に回ってこないことも度々あった
その場合は大好きなドラゴンボールの漫画などを模写したり
ゲームの攻略本を読み込んだりしていた
小学校に上がるか上がらないかの時は読めない字が多かったので挿絵を見て楽しんでいた
特にドラゴンクエストの攻略本はこれでもかと言うほどボロボロになるまで読み込んだ
そういった事もあって僕は兄の良きゲームナビゲーターになっていたと思う

しかし相変わらず僕の番は回ってこない
回ってきたとしても30分とかである、15分なんて事もよくあった
ドラクエが大好きな僕は一向にストーリーを進められない
どうにか家族のテレビの時間と兄のゲームの時間を避け
自分がどっぷりとゲームに浸れる時間を捻出する必要があった

小さいながらに考えた挙句の作戦は、
夜が明ける前に布団からこっそりと抜け出し
家族にバレないように電気を点けず、静かに準備をする
そしてゲームの明かりだけの暗い部屋でひっそりと旅に出るのだ



その解放感、全能感と言ったら何と形容したら良いだろうか
ゲームの中には新しい世界が無限に広がっているように思えた
城があり、街があり、平野があり、山がある、なんと広大な海まであるではないか
仲間を集め、困難を一つ一つ乗り越えていく

壮大な音楽がパーティーに使命感を与え
歩き、
乗り物を変え、
街から街へ、
そして地図から地図へ

そんな最高な時間を独り占めしながら夜は攻略本を読み耽る
挿絵にある、まだ行った事のない無い街を思い浮かべながら
お金を貯めて、かっこいい装備に身を包んだ僕のパーティーが動く姿を夢想するのだ


当時の子供たちにとってはどうやってテレビを占有しゲームの時間を確保するかは最重要問題だったと思う
テレビが複数台ある家など稀だったので、当然ながら家族との折り合いをつけてゲームをするのだ
少なくても僕が育った小さな町ではそれが普通だった
だからこそ、「ゲームができるぞ」「あいつあんなに進んでいるぞ」なんて噂があると喜んで遊びに行ったものだ
兄の同級生の家に5、6人集まり、ゾーマ城を攻略する姿をドキドキしながら見守る
僕は年が離れていたので、話についていけない事も多かったが、背伸びをして持てる限りの知識を披露する

まだ、僕のパーティーが踏み入れていない未踏のダンジョンを、別のパーティーが勇気を持って挑んでいく
主人公の父親がほぼ裸で覆面姿だったり、最強と思っていたバラモスが中ボスとして現れたりと畳み掛けるように驚きとワクワクが目に飛び込んでくる

そしてゾーマ戦、まさかのステータス欄を突き破るほどの立ち姿だ
これぞラスボスと言った威厳を放っている
見ている全員にも緊張が走る一戦で、最後の戦いに相応しい素晴らしいあの戦闘曲がアドレナリンを最高潮にする

強力なブレス攻撃や呪文でパーティーは即壊滅状態へ
こちらもすかさず
けんじゃの石、ベホマラー
そして
スクルト、バイキルト、フバーハ
無慈悲な「いてつくはどう」で一瞬にしてかき消された
一進一退の攻防が繰り広げられ
コマンド入力に緊張が走る
その緊張の一切を受け止めコマンドを進める兄の友人は勇者そのものに見えたものだ


と、前置きがかなり長くなったが
少し前にとても綺麗な状態の「ドラゴンクエスト3 公式ガイドブック」をネットで見つけ、あまりの懐かしさにすかさず購入したのでこの記事を書いてみた
今読み返してみても心躍る内容で当時を思い出す

ドラゴンクエストⅢ 公式ガイドブック


僕は妄想を楽しむ癖がある、知りたいという欲求も割と強いように思う
思い返してみるに、小さい頃にこういった良質なゲームに出会い、
全てを捧げて熱中した体験が強く影響しているのだろう
ドラクエ以外でも本当に素晴らしいゲームにたくさん触れた
ストーリー理解、ゲーム設定の全体把握、数字や文字への慣れ
こういった事が幼少期に熱中しながら鍛えられたと思う

そしてちょっとだけ特殊な環境で育った僕にとって淋しさを忘れ壮大な夢を見せてくれたゲーム体験に本当に感謝している

そんなゲームに熱中している息子達を見てか、最終的には母親もRPGにハマりドラクエやファイナルファンタジーなどの名作タイトルの最新ゲームにおいては当然のごとく買ってくれるようになった
買ってもらうためにあの手この手の作戦を考える負担が少し減って、しめしめと思ったものだ


冒険の書が消えるあの絶望や
復活の呪文を間違えて「LOVE SONG 探して」の軽快な音楽とは裏腹にこの世の終わり感を味わった事も今では笑い話である


書きながらふと思ったが、デジタルデータを携帯するという行為自体は
ファミコン体験から普通にやっていたことなんですよね





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