シェア
reina
2021年5月24日 16:38
ここ数年、自己啓発系の本はほぼ読まなくなった。書いてある内容といえば、全てが哲学や宗教的な視点、心理学的な視点か、もしくは武勇伝に思えることが多くなり疲れてしまった。それを読むなら心理学、哲学のプロが大昔に書いた本を読み、自分なりの理解に変換したいと思うようになってしまったからだ。本書も手にとる前は、怪しい…と思っていたのだが(失礼)、目から鱗だった。私が読書記録SNSを始めることになっ
2021年9月27日 15:48
障害者、ハンセン病や公害患者、女性、生活保護受給者などのマイノリティへの差別について社会学的文学的な立場から書かれた本。事実から統計を取り出したりはほぼしておらず、エッセイに近い印象。著者も『まとまらない』言葉たちをなんとか章に分けたと書いていたが、全体を通してメインテーマは『壊されていく言葉』だ。若者言葉で言葉が崩れる〜という壊れるじゃない。意図的に"壊されていく"言葉のことだ。生きる
2021年10月21日 03:35
※長いし、ちょっと暗いし出口がない。でも私なりにまとめた感想です。目次⬛︎読んだきっかけ⬛︎正欲に登場する人々⬛︎"明日死にたくない"が、正常?⬛︎隠れている自己責任論⬛︎共通するのは"理解されたい"気持ち⬛︎読んだきっかけ『過去10年で最高の言語体験でした。』と大学時代の友人が薦めてくれたので読んだ。読み終わって感じたことは、『この世界には逃げ場がない』。友人にそのまま伝
2021年10月17日 17:44
安部公房の『壁』に登場する人たちは、ある日突然奪われる。名前、影、目、家ーーそれはいわゆる自己証明と言えるものだ。少なくとも現実世界を生きる上で、他人からあなたはあなたであると言われるためには必要なものだ。ではそれらを失くした時に、人は自らのアイデンティティを喪失せずにいられるのか?まさに突然アリス・イン・ワンダーランドの世界に引き込まれるような、そんな物語だ。本書は、以上三つで構
2021年9月26日 23:41
もし、この世のどこかに、送る直前にやめたメールの溜まる場所があったら?繋がらなかった電話読まれなかった手紙大人は、キレイごとだけでは生きていけないことを知っている。だから大人の都合は子どもに押し付けられる。それでも誰もが、捨てたり手放したり居なくなってしまったものへの1ミリの後悔もない、はずがない。初めて読んだ一木さんの本。好きになる瞬間を、細かく鮮明に刻み込むように描写していた
2021年9月21日 23:14
この世にいるのが辛い時、私たちはきっと、誰かから愛されたり理解されたりした記憶で生きている。でもその受け皿がもしなかったとしたら?そんなことを考えさせられるような、オウム信者たちの自己喪失のプロセスがわかる一冊だった。被害者側の体験を記したアンダーグラウンドとは違い、信者側(実行犯よりオウム内で地位が低い人々だが)のインタビュー。『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』も良かったが、本書の後半に
2021年9月18日 00:21
アート、映画などの分野から日本の未成熟さが持つ可能性についての討議とプレゼンをまとめた内容。【目次】 はじめに——東浩紀 Ⅰ 「日本的未成熟」の系譜——キース・ヴィンセント Ⅱ アート界における“クール・ジャパン”の戦略的プロデュース法——村上隆 Ⅲ 日本映画と未成熟——黒沢清 Ⅳ 「かわいい」の本質——宮台真司 Ⅴ [討議]日本的未成熟をめぐって ——キース・ヴィンセン
2021年9月16日 23:12
悪女と聞いて、あなたはどんな女をイメージするだろうか。純粋無垢ですという顔をして実は大胆な女?それとも見た目からしてフェロモンのようなものがむんむんと出ている女を想像するだろうか。本書はいわゆるフランスにおける、ファム・ファタルーーその出会いが運命の意志によって定められていると同時に、男にとって「破滅をまねく」ような魅力を放つ女を指すーーを取り扱う。フランス文学を女子大で教えて
2021年9月1日 23:45
例えば私の人生が波のようなものだとしたら、寄せては返すその波に抗って生きていきたいと思う。ウィリアム・ストーナー。彼は、波と歩調を合わせるように、波と共に生きてきた男と言えるだろう。決して折れることはないが、それゆえに自分自身の置き場所を宿命的に変えられない、そんな印象を受けた。多くの人がそうであるように、彼は自らの人生に期待をした。ただ、期待をし、望んだ分だけの責任については、負わな
2021年8月28日 14:33
江國香織の短編集。10人の女子高生たちの物語。本当にいつか、記憶の彼方に消えていき、必死に掴もうとしてもこぼれおちていくような密やかな記憶。中高女子校だった私には、この子達のものの見え方がよくわかってしまった。でも、当時17歳の私が、30歳の女性に『わかるよ』なんて言われても、なんて薄っぺらい共感なんだろうときっと思ったはずだ。うん、絶対。指緑の猫テイスト オブ パラダイス飴玉
2021年8月27日 16:04
私は想像する。今日は朝ごはんを7時半に食べた。10分から15分遅れることもあるけれど、大体毎日それくらいだ。息子を起こしてトイレに連れて行き、洗濯物は2日に一度。息子が駄々をこねて食べてくれない日もあるが、なんとか上手くやれている。我が家の、朝の風景だ。その後、息子と一緒に電車に乗る。すると、突然変な匂いがする。周囲の人は、咳き込み出す。息子が泣き出す。鼻水が止まらず、目から涙が止
2021年8月27日 17:02
突然だが、あなたは今正常な世界に住んでいると思っているだろうか。もちろん、このコロナウイルスの蔓延により、そんな風には到底思えないという気持ちになっている人もいるだろう。不安が多く、自分で決断できていたことが出来なくなった人も少なくないと思う。しかし今は、基本的には自由意思のもとに世界は成り立っている。自分が何を信じるかも、何を思うかも、何をするかも、基本的には自由があるはずだ。でも本
2021年8月21日 14:12
喪失の物語。失うことと、失い"つつ"あること。あまり婉曲的ではなくストレートに心へ届く短編集。⬛︎レキシントンの幽霊そこはかとなく漂う死の香り、寂しさや孤独はない。ぷかぷかと闇に浮かぶような感覚になる話だった。人は深い眠りの中で亡くなった人の記憶を辿る。自分はこちら側で、あの人はあちら側なのだと理解するのかもしれない。⬛︎緑色の獣妖艶で淫靡な生き物を想像させた。求愛した獣は女の欲
2021年8月14日 17:16
本人の意思を尊重するという搾取、本人を心配する、というかたちでの押し付けがましい介入。社会は良くないものを含んで成り立ってしまう。ラベルを貼られる側の立場に負荷がかかりすぎている。その土地、その性別、生まれ、その環境を選んだあなたの責任。この世界に出口はないのか?本書には犬のエピソードが出てくる。気付いたら泣いてしまっていた。著者が可愛がっていた犬が、彼の外出中に死んでしまった。それを他の