女の朝パート75

11月30日土曜日

良く晴れた朝だった。

空は高く空気は冷め青い空の下では枯れ葉がからから音をたてながら舞っていた。

久しぶりの太陽の登場に何故か心が踊った。


暗転


JR東日本山手線沿いにある田端駅の駅ビルアトレ内にあるスタバで、

女が、珈琲を飲み始めて数分後の事だった。


ロールアップした細身のジーンズに黒のショートブーツを履いたおんながここスタバにやってきた。

おんなは、そのままレジへ向かわず、

このあと自分が座るだろう席に自分の荷物と上着を置いてからレジへ向かった。


珈琲を飲んでいた女はこれと言って驚く様子はなかったが、

何故か少し面白がり、そして喜んだ気がした。

窓の外を眺めながらボケっとしていた顔に、

うっすらと赤みがさし血色が良くなった気がしたから。


おんなはきっと、誰にもその席をとられないよう、前もって自分の席を確保しておいたのだろう。

ありのままの自分を受け入れてくれる居場所は、

地球上に住む生命体には必ず必要だと何かの本に書いてあった。

実際問題、

現実な事として目で見て確認したわけでもないし、

本当かどうかはわからないけれど、

きっとご多分にもれずってやつで、いつも通りや当たり前って事であろう。


ともあれ、

女はきっと本能的におんなのそれ察知したのであろう。


おんなの荷物を黙って受け入れる場所。

身も心も浄められて、どうでも良い事が出来、

もしかしたら何でも聞いてくれるようなそんな場所。。。


女が又ボケっとしながら又窓の外を眺め始める。


おんなが置いていった、

おんなのお荷物とおんなの体温が残っている上着は、

自分達の存在価値をアピールしている気がし、

威風堂々と鎮座している様子が女は面白かった。

例え長時間眺めても決して飽きが来ない気がした。

あの中身は何が入っているのだろう?



荷物を起きレジへ向かう時、

おんなの手にはスマートフォンと財布だけが握られていた。

数分後、マグカップと紙袋を持っておんなが戻ってくる。


椅子に座りその中身を飲むとおんなの頬は少し紅潮した。

始終大人しくおんなは座ってはいたが、

時々下をうつ向いたり顔を上げたりして落ち着きがなかった。


何故かこの時オンナは、このおんなが本気なんだと思った。


滅多に口を開かなかったけれど、

その沈黙は親しいからであり、

例え無言でも心が通いあって、

きっと今、いい感じなのだろうと言う印象を残したからだ。

おびただしく注ぐ太陽の光のように、

おんなの眼差しはとても柔らかかった。


この時オンナは、

女とおんなの間には特別な関係があるのだと確信した。

すると不思議な事に、

オンナは自分の気持ちが喜びに変わり、

それは勝手に繁殖する虫の様にその勢いを増した事に驚いた。


オンナは、女とおんな間には、

星の輝きのような奇妙な美しさがあると思った。



しかし、

良く見ると、三人には共通点があった。





目の前の円卓に、

珈琲で満たされたマグカップとチョコレートチャンクスコーンが入った紙袋が置かれていたこと。






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