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短歌№61-90

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我知らず
南南西から
風が来る
海の向こうの
異国の熱が

陽光に
舞う花びらより
おぼつかぬ
足取りふらり
宴のあいま

喜びの
名残を残す
間もなくて
椿の花は
首から落ちる

満月の
夜に齧った
逢い引きの
身体に残る
五日後の味

部屋中の
片隅の塵を
集めたら
濯いだ先の
海で会おうね

暗暗裡
鯉を埋めたら
百哩
俚謡で歌うは
狸の理

あんあんり
こいをうめたら
ひゃくまいる
りようでうたうは
たぬきのことわり

閉じ込める
粉々になった
悲しみを
絵の具に変えて
描くカンバス

夕暮れに
長く伸びてく
影ひとつ
溜め息とともに
闇に紛れる

襷持ち
はるか視線の
向こうへと
遠ざかってく
風はランナー

ごりごりと
まわし砕ける
散り広がる
コーヒー豆の
香るフレイヴァ

昼過ぎに
のろのろ起きて
背伸びをし
カーテンをあける
今日は休日

天体の
配置の地図の
水平線
互いに交わした
あなたとわたし

生産と
物流と技術
向上し
すくうひとさじの
繁栄の味

暗闇を
じりりじりりと
削り出し
明るみに戻す
目覚ましの音