quiyo |キヨ

裏千家茶道を志して10年以上。 「茶のあるくらし」をテーマにいろいろ書いています。

quiyo |キヨ

裏千家茶道を志して10年以上。 「茶のあるくらし」をテーマにいろいろ書いています。

最近の記事

お月謝の値上げ問題

「〇〇さん、ちょっと来て」 先生が少し不在にしている間、社中さんが小声で私を呼ぶ。 「先生からは何も言われてないのだけれど、そろそろお月謝代をあげようって、社中のみんなで話しているの。これからは、その料金で統一しよう」 「ええっ、いつからですか」と私。 「えっとね、実はみんなとは今年に入ってからこの話をしていて、みんな一月から自主的に上げているんだ。でも〇〇さんは、今月からでも大丈夫だと思う」 いや、大丈夫もなにも。 みんなこうだからあなたも従って、の論理はいたると

    • 茶の湯と禅

      「〇〇先生は名誉師範になるんだって」 まだ全然身についていない四家伝の稽古中、先生は口をへの字にしてつぶやく。 「そんなに名誉が欲しいのかしら」 あぁ、始まった。 その場にいる面子のせいなのか、それとも平日の夜という1日の疲れやモヤモヤが溜まる時間帯のせいなのか分からないけれど、平日夜のお稽古はとにかく、世間話が盛り上がる。 お稽古を有意義なものにするために、自分が学ぶことばかりしか考えず、その場の和やかな空気を壊すようでは、そもそも、人をもてなしかたを学ぶ茶人とし

      • そこまでやる必要はないけれど

        お茶の先生は、地域のお茶ネットワークでも一目置かれる、強く、気高く、それでいて情け深い昭和の女。 そんな先生も齢80歳に近づいているけれど、相変わらず、強い。 そんな先生のお宅で夜咄の儀。 半ば強制的に参加させられた、なんて意識の低い姿勢の私。 社会生活ではもはや使うことのないようなくどい挨拶表現に、自分をころして「相手をおもんばかる」を大義名分とした圧力。 お茶会の世界は日本社会の保守的な側面をギュッと詰め込んだような世界のようで、時々とても窮屈に感じることがある。

        • 大炉の季節

          早いもので2月も半ばに入ろうとしています。 お稽古場には昨年(だったかな)切られた大炉が姿を表していました。 とてもこの寒い時期に、すぐに暖を取れるよう大きく切られた炉に、持ち運ぶのも大変な釜をかけて稽古の準備。湯気がわく様子としゅーしゅーという音で、寒い稽古場が暖かくなっていきます。 大炉といえば、逆勝手。 平点前とは多くが左右逆のお点前をします。 「はい、あなた今日はこれをやってみて」 先生、そんな急に、無茶振りな! 中学生の社中の前で先生に怒られながらお点前をし

        お月謝の値上げ問題

        マガジン

        • 茶菓子のはなし
          10本
        • お茶と本
          3本
        • コラム
          0本

        記事

          五島美術館・茶道具取合せ展

          某日、東京・世田谷にある五島美術館の企画展に行ってきました。 取合せ展は過去にも足を運び、同じものを見ているはずですが、今回も素晴らしく勉強になりました。 織田信長や豊臣秀吉、千利休などの直筆を拝見しましたが、このようなものを見ると、誤字が多く日々フリクションが欠かせない私には、1文字たりとも書き間違えることなく長い手紙を書ける彼らはきっと、生き方やその姿勢も私のそれとは全く異なるものなのだろうと思いました。 どれも価値のあるものに違いないでしょうが、今回一番印象に残った

          五島美術館・茶道具取合せ展

          門標

          約2ヶ月ぶりの更新。 最近は中学生、そして小学生の社中さんが仲間入りしました。 ちょうどお茶名をいただく話がでたところでやってきた子どもたち。最初の頃は、先生の代わりに彼らに帛紗の捌き方や茶道具の扱い方を教えたりしていましたが、この数ヶ月で2人とも新しいことをどんどん吸収していき、中学生のほうは炉の薄茶点前はもう完璧に習得してしまいました。 そんな子どもたちがいるだけで、教室はぱっと明るくなります。 そして最近、先生が今日庵で門標を作ってくださいました。厚みのある木の

          お茶の道は一生

          最近、どういうわけか立て続けに新人が仲間入りしています。 しかも中学生、そして小学生も。 みんな、自分の意志でお茶を習いたいと門を叩いてやってきました。 社中が一気に若返りました。 彼らは好奇心が旺盛なうえに学びの吸収がとても早いです。 ひとりは宇宙に行くこと、ひとりは落語家になることが夢だそうで、 将来が楽しみです。 私自身もつい最近、茶名をいただきました。 今度は准教授、教授という肩書があるからね~とはっぱをかけられていますが、珍しく?もっと上を目指したいという気分に

          お茶の道は一生

          サードプレイスで、イライラが止まらない

          最後に投稿してからあっという間に3カ月も経ってしまった。 あと2月もしないうちに、炉の季節になる。 何かをしていてもあっという間だし、何もしなくてもあっという間だ。 それなら何かを目いっぱい頑張りたいと強く思うのだけど、私は要領が悪いのでそれは叶わない。ああ。 今日は終業時間直後、仕事を大量に残しつつ即座に退勤し、お茶の稽古場へ。 田舎の夜は本当に真っ暗だった。 雨上がりの空にはうっすらと月が浮かんでいた。 鈴虫たちがまるで大合唱をしているようだった。 仕事以外でもいろ

          サードプレイスで、イライラが止まらない

          モヤモヤするときは、正座して茶を飲もう

          こんばんは。 最近不安なことや懸念事項が多く、自分の体調はそっちのけで過ごしていたところ、風邪をひいてしまったようです。こういうときはネガティブな発想になりやすいためか睡眠も浅いようで、この前は金縛りに遭いました。 不調というものは恐ろしいもので、些細な心配事、あらぬ不安もどんどん大きくなっていきます。 そんな状態なのでお稽古はお休みしようと思ったのですが、先生はいつも通り「来なさい」のひとこと。 今月、来月と、大事なお茶会が続いています。幸か不幸か?もしかしたら家元

          モヤモヤするときは、正座して茶を飲もう

          トークイベント「古都鎌倉と茶の湯のこころ」

          先週、鎌倉日仏協会主催のトークイベントに参加しに、鶴岡八幡宮に行ってきました。 ゲストは翻訳家でパリ在住歴の長い村上香住子さんと、茶人の木村宗慎先生です。 (鎌倉市民ではありませんが快く参加させてくださり、ありがとうございました) ジェーン・バーキン親子をはじめ多くの外国人を迎える村上さんの国際色豊かな視点と、 茶道をはじめ、日本の歴史や文化に精通した木村先生のお話はとても面白く、新たな気付きをいただきました。 お話の中で印象的だったことを共有します。 茶道に詳しく

          トークイベント「古都鎌倉と茶の湯のこころ」

          菜種梅雨の誓い

          ブルッ、ブルッ、ブルッ・・・・・・ 土曜日の午前中、ベッドにもぐりこんでうとうとしていた時に着信が入った。 お稽古の社中さんからだった。 「おはようございます。もうお稽古が始まっていますよ」 なんだって?! お稽古は夜からだとすっかり勘違いしていた。 血の気がスーッと引いていったのが、自分でも分かった。 「あぁっ、ええと……今から向かいます!」 「今日はお寝坊ですか~」 電話口の背後から、笑い声がどっと湧いた。 違う。 平日は終電まで働いて、今朝はついさっきまで

          菜種梅雨の誓い

          【メディア掲載】茶の湯は世界を救う

          こんばんは。 日中は暖かい日が続きますね。 さて、私は「天狼院書店」というちょっと変わった本屋さんが主宰しているライティングのゼミを受講しています。 こちらのウェブマガジン「READING LIFE」に寄稿した茶の湯にまつわる記事が公開されましたので、シェアします。 タイトルがちょっと大袈裟な感じですが、最近はお茶の可能性についていろいろ考えています。 それは変だよ、とか、こう思う、とか、ご意見やご感想をいただけるととてもうれしいです。

          【メディア掲載】茶の湯は世界を救う

          思い出の黄味しぐれ

          最近、外に出るといたるところで春の到来を感じます。 そんな春めいた日にいただいた、思い出のお菓子をご紹介したいと思います。 そのお菓子は、「黄味しぐれ」です。 じゃん これは黄身餡が入ったお饅頭の一種です。 黄味餡が白餡を包んでできた蒸し菓子です。 お菓子によっては、白餡が黄味餡を包んでいる場合もあるようです。 白餡は、抹茶や栗等が混ざって色がついている場合が多いです。 黄色い生地の表面には、うっすらとひびが入っており、緑色の白餡が見えています。 このお菓子の特徴

          思い出の黄味しぐれ

          伏見稲荷大社とお茶

          こんばんは。 冬の京都滞在記の続きを書きます。 この京都滞在では、1日目のお茶会参加に続き、2日目は伏見稲荷大社へ行ってきました。 この日は真っ赤な鳥居がひしめきあう様子を一目見てくること、また、 伏見稲荷大社にも茶室があるということで、そちらも要注目。 ちょっと長いですが、写真を多めに添えています。よろしかったらお付き合いください。 ◇ 京都駅から市営バスに乗り換え、南下します。 (またも終始熟睡につき、記憶・記録なし…) 京阪本線伏見稲荷駅から伏見稲荷大社まで

          伏見稲荷大社とお茶

          京都で考えた「大人の教養」

          「教養のある大人になりたい」 小さいころからぼんやりと、カッコいい大人になりたいと思っていた。 きれいで、頭がよくて、仕事ができる女性。それが私の理想の大人だった。 そして今、世間的には大人、というかもう中年といわれる世代に入りつつあるけれど、残念ながら私はその3ついずれも持ち合わせていない。 天は二物を与えず、なんて言葉があるみたいだが、この世の中には私みたいに何も与えてもらえない人間がいるもんだ。むしろマイナスからのスタートかもしれない。 神様が何も与えてくれないなら

          京都で考えた「大人の教養」

          細見美術館古香庵 「数寄がたり」新春寿ぎ茶会

          こんばんは。 この週末はお茶会に参加しに、はるばる京都へ行ってきました。 先週は10年に1度といわれる寒波到来。この冬でとても寒い1週間で、新幹線が雪のために数時間立ち往生といったニュースが流れ、無事に行けるか不安でしたが、なんとか参加することができました。 茶会の会場は左京区にある細見美術館の茶室・古香庵。この美術館の館長が、去年1月から丸一年間、茶道雑誌『淡交』に「数寄がたり」をテーマに寄稿をされていて、今回はその集大成として開かれた茶会です。 新幹線移動中は、日ご

          細見美術館古香庵 「数寄がたり」新春寿ぎ茶会