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お茶と本

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お茶をテーマに書かれたすばらしい本をご紹介します。
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欧明社での出合い

世の中にはいろんな本屋がある。 東京の飯田橋には「欧明社」というフランスやフランス語の専門書店があるのだが、今月末をもって閉店という。久しぶりに、足を運んでみた。 人がすれ違うのもやっとの狭い書店には、いつになくお客さんがたくさんいた。ある初老の男性は、しゃがみこんで1冊の本を読みこんでいた。ある若い女性は、まるで手あたり次第に本を選び、抱えていた。フランス語圏出身と思われる男性は、店員さんと教育書について長々と話し合っていた。かつては棚一面に本がぎっしりと詰まっていたもの

『茶の本』で人生のもろさを知る

私ではない誰かになりたい…と時々、無性に自分の存在を消したくなるのだが、そんな風に思うのは私だけだろうか。 誰かに憑依したい 先週の、ある日の昼休みのできごとだ。 お昼休みが終わったら、これから大事なプレゼンがある。私という人間はあまりにも頼りなく、もう、失敗しか想像できない。そんな時に私が何をするかというと、私という個性を完全に消す。その代わりに妄想力を働かせ、自分ではない誰かに憑依する。その憑依の対象は、私人が知っている個別具体的な人の場合が多い。でも、本などの架空の

『日日是好日』の解釈のしかたが変わった日

日日是好日 年末の整理整頓中、久しぶりにこの本を手に取った。 一度ページをめくったが最後、はじめから最後の章まで、おまけにあとがきに柳家小三治さんの解説まで、掃除はそっちのけで一気に読んだ。 最近、なんとなく抱いていた心のもやもやが、この本の中で言語化されていた。 そして月並みな表現ではあるが、改めて良い作品だと思った。 でも今回は、前回……といっても相当昔にさかのぼると思うが、以前読んだ時よりも、作者の言葉に深みと重みを感じた。 ◇ 日日是好日、にちにちこれこうに