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夏八木 秋成
2023年10月4日 16:06
前回のお話はこちら第一話とあらすじ12 ほぼ毎日のように、丸子(まん丸の子供だからと、気づいたら母が名付けていた)は花をベランダに置いて行った。ちょうど私が煙草を吸う昼過ぎにやってくるものだから、その花を私が拾って花瓶に生けるのがルーティンとなっていった。 丸子の持ってくる不思議な形の花を調べると、「オダマキ」という名前であることを知った。紫色のものが日本では主流のようだけど、西洋オ
2023年10月11日 23:17
前回のお話はこちら第一話とあらすじ推奨BGM13 今夜はいつも以上に肌寒くて、太陽の温もりを捨てた風がくたびれたジャージの隙間を駆け抜けていった。コンビニの前を通り過ぎて、そのまま山の方へと進んでいく。観光用に作られた広めの道路には、車はおろか野生動物の気配すら無かった。私と風にざわめく木々の葉だけが、世界を動かしていた。『あんたがまなちゃんとこ行こうとしたら、連れ戻せんくなっ
2023年10月13日 07:39
前回のお話はこちら第一話とあらすじ14 およそ三か月ぶりにノックの音が聞こえると、窓際に座っていたダボはドアの方を見て微笑んだ。「どうぞ。」 外の光と一緒に中に入ってきた真香は、手に小さなブーケを持っていた。真香の部屋の窓のステンドグラスと同じ、薄いピンク色の花と一緒に、いくつかの緑も束ねて優しく握っていた。「どれくらい?」「大体三か月、かな。久しぶりだね。」 アジョ
2023年10月16日 16:57
「死んだ人を想う時、その人の上に花が降るそうです。」これはエッセイストのジェーン・スーさんがお知り合いを亡くされた時のInstagramポストに、ファンの方が残していたコメントです。スーさんとフリーアナウンサーの堀井美香さんとのバディで毎週配信されている「Over the Sun」内でも、こちらのコメントが紹介されていました。拙作「想い溢れる、そのときに」は、このコメントから着想しました