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「想い溢れる、そのときに」執筆感想

「死んだ人を想う時、その人の上に花が降るそうです。」

これはエッセイストのジェーン・スーさんがお知り合いを亡くされた時のInstagramポストに、ファンの方が残していたコメントです。
スーさんとフリーアナウンサーの堀井美香さんとのバディで毎週配信されている「Over the Sun」内でも、こちらのコメントが紹介されていました。

拙作「想い溢れる、そのときに」は、このコメントから着想しました。
生きている人が死者を想う時、何かしらあちらに届いていると思えたら素敵じゃないですか。
ただ、花が降るとなると、それはどこで?どんな花が?そもそもなんで降るの?降ったあとの花はどうなるの?
比喩表現その他、ふんわりとさせていればいいことに対しても「何でなのよ?」といちいち突っかかってしまうのは、私の昔からの癖です。だって気になってしまうのだもの。

単に花が降るよりも、こちらの想いを死者に届けられたら。送る花によって意味合いの変わってくるものといえば、「花言葉」です。
こうして少しずつお話を紡いでいきました。

ファンタジー小説に対しては、書くのも読むのも苦手意識を持っていました。
当たり前の話ですが、現実に即したお話の方が書きやすいのです。
今回創作大賞に参加している皆様の作品を読みながら、改めて自分はこういうの書けないなぁ…と、落ち込む瞬間が多くありました。
現実にはない世界を細かく設定し、それに沿ってお話を進めていくだなんて、余程明確に頭の中でその世界を構築していかないとできない芸当です。
国の名前、文化、建築様式、言語、食事、気候、地形、植生等々。それらを読者に違和感なく読ませる技術を、私は持ち合わせていないのです。
みんな凄いね。

こんな私ですので、当然得意な方向に引っ張られてしまいます。
本当はもっと天国未満(と、あの世界のことを自分の中では呼んでいました)のことを細かく描きたかったし、あそこに留まっている他の魂についても何人か設定を用意していました。

しかし、書きながら次々と生じる矛盾に対応できなくなってきました。その魂の出身地とか諸々なのですが、特に入信している宗教の問題を考え出すと、この世界観は簡単に崩壊してしまうことに気付いてからは「無理じゃん!」となってしまいました。
そこに集まる魂の全てが、無宗教の日本人だけなわけありませんものね。

また、当初は真香が天国に行くまでの間、ダボの助手を務めて様々なケースの魂に触れ合っていくという方向も考えていました。
こちらは完全にライトノベルやコミカライズを意識してのことです。
連載ものとして続きやすい設定をと思ったのですが、女性が助手というポジションに着いているという、令和に相応しくない設定が自分の中で許せずに却下しました。
いつまでも女性をお手伝いキャラに据えていくのは、メディア・エンタメ各種、いい加減やめてほしいという自身の気持ちに背くものです。
余談ですが、これは娘2人の父親として、将来的に彼女達の道を狭めることになってしまう可能性を社会から極力排除したいという、小さな願いも込められています。

結局、「本筋と離れてしまうから」という言い訳の下、最終的にこれら全ては無いものとしました。

書き進めていくにつれ、真香の母親のことを書けば書くほど「ファンタジーとは…?」という気持ちが強くなってきましたが、どうにかそれらしい形で終わらせることができたのではないかと思っています。
しかし、これが今の自分の限界なのでしょう。正統派のファンタジー小説を書くには、まだ実力不足であると認めざるを得ません。どんなジャンルもちょちょいのちょい!といきたいところですが、どうやっても似たり寄ったりのものしか書けないのです。
実力もですが、勉強不足でもあるのでしょう。世界観設定の段階で底の浅さが露呈した形です。宮部みゆきマジやばいって感じ。ブレイブストーリー、LOVE。


反省点は多くありますが、自分の作品の中でこれだけ多くの皆様に読んでいただけたのも初めてだったので、本当に嬉しく思っています。
改めまして、最後までお読み下さった方々に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
私は俗にまみれた人間なので、毎回スキの数などに一喜一憂しておりました。
この回だけなんでスキが少ないのだろうとか、この人毎回スキしてくれる大好きLOVEうれぴいとか、金曜夕方に公開するとビュー数増えるのねとか、とにかく頻繁に自身の記事の動向を注視しておりました。
「反応なんて関係ない、書きたいものを書く」などという格好良いことを言えるようになりたいのですが、36年生きてきても尚、私は褒められたいし、嬉しい言葉をもらいたい。そんな心の狭い人間です。

「闘うべきは器やん?」
敬愛するアンミカ先生の金言が心を抉ってきます。
先生、私の器はお猪口です。



長々と書き進めてきましたが、お話を紡いでいる期間、とても楽しかったです。
きっとまた新しいお話を書き始めます。その時はどうぞ、お読み下さると嬉しいです。

最後に、ダイヤモンドリリーの花言葉を物語中に書き忘れてしまったのでここに記しておきます。

「箱入り娘」
「また会える日を楽しみに」

食費になります。うれぴい。