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うつの遺伝

ハーバード大学で、うつ病になりやすい遺伝子を持つ子供の脳の働きを調べる研究が行われたそうだ。

うつ病という病気は遺伝的な要因と環境的な要因が組み合わさって発症されていると言われており、現時点ではそれぞれの影響の割合は半々くらいだったはずだ。

今回お話ししたいハーバード大学の研究では、fMRIと言って、電磁波によって脳が活性化したときの細胞の発火具合を調べる機械を使って、ネガティブな刺激とポジティブな刺激に対する脳の反応を調べた。

うつ病になりやすい遺伝子を持った子供と持っていない子供を集め、一人ずつfMRIのスキャナーの中に入ってもらう。

その中で脳の活動具合を調べながら、ポジティブな表情(笑顔など)の写真とネガティブな表情(しかめっ面など)の写真を順番に見せた。

するとうつ病になりやすい遺伝子を持っていない子供たちは、感情を作り出す役割をしている扁桃体という部位が、ポジティブな表情にもネガティブな表情にも反応した。

つまり、ポジティブな表情を見たときにはポジティブな感情が作り出され、ネガティブな表情を見るとネガティブな感情が作り出されていた。

その一方でうつ病になりやすい遺伝子を持った子供の脳の扁桃体は、ネガティブな表情には強く活性化したのに対し、ポジティブな表情を見たときには扁桃体が活性化しなかった。

どういう事かというと、ネガティブな刺激にのみ反応し、ポジティブな刺激には脳が反応を示さず、ポジティブな刺激に対してポジティブな感情を作り出すことができなかったという結果になったのだ。

うつ病になりやすい人は物事のネガティブな一面ばかりに目が向いて、ポジティブな部分はフィルターで見えなくなってしまっておることが多い。

例えば、ちょっと相手が嫌そうな顔をしたり、引き攣ったような表情をするとそれに過敏に反応し、「自分は嫌われている」「自分はここにイチャいけない」とネガティブな思考と感情ばかりが生まれてくる。

逆に、自分がこれまで頑張ったことや成し遂げてきたこと、もしくは自分が持っている素敵な一面を過小評価し、それによって自己肯定感のようなものが上がることが少ない。

そういった傾向も今回紹介した研究の結果と合致していて、もしかするとポジティブな一面も見えているんだけど、それによってポジティブな感情を作り出されることがないのかもしれない。

また、うつ病の人は前頭前野の働きが弱くなっていることが多いらしい。

感情というのは扁桃体で作り出されるが、その扁桃体で作り出された感情を促進したり抑制する働きをしているのは前頭前野である。

その状況に適した感情を前頭前野が取捨選択して送り出されている。

しかし、うつ病の人はここの働きが弱くなっているので、その状況にそぐわないネガティブな感情が扁桃体によって生み出されても、前頭前野がその感情を抑制できない。

なので、必要以上にネガティブな感情に苛まれてしまうことになるのだ。

こういった研究は非常に興味深いと思う。なぜなら、うつ病の原因は未だに「分かっていない」というのが正しい答えであり、さまざまな要因が考えられている。

その一つとして遺伝もあるし、脳の働きの違いもあるかもしれない。遺伝的要因が大きいのか、環境的要因が大きいのかが分かれば正しいアプローチを選びやすくなり、早期の回復に回復に繋がるかもしれない。

そういった研究は自分もやってみたいなと思うし、論文を読んだり聞いたりするのもまた面白い。

うつの遺伝。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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