見出し画像

「DIE WITH ZERO」死ぬまでに資産を使い切る発想とは?!!

こんにちは。

先日、ダイヤモンド社から出ていた「DIE WITH ZERO」という本を読んで、日本人にはなかった発想だと思いましたので、これを皆さんと共有したいと思います。

著者のビル・パーキンス氏は、1969年にテキサス州ヒューストンで生まれ、アイオワ大学を卒業後、ウォール・ストリートで働き、その後、エネルギー分野のトレーダーとして成功を収めた方です。
現在も1億2000万ドル超の資産を抱えるヘッジファンドのマネージャーでありながら、映画やポーカープレイヤーとして活躍しています。

彼自身や彼のコミュニティの人たちも、多分、ある程度、資産を持っている富裕層と思われますね。
そのため、どちらかというと富裕層の人たち向けの「金持ちの心得」といった側面もあるかもしれません。

それでも、この本がベストセラーになった理由は、この「DIE WITH ZERO」には一般人にも共通する「ある種の真理」が書かれているからと思います。

それでは、まず内容を説明したいと思います。

「DIE WITH ZERO」で提起されているのは、次の2つの異なる問題です。
1. 多くの人は老後のために貯蓄しても、その貯蓄はほとんど残ったまま一生を終える
2. 人生の喜びを最大化するためには、その時々の「経験」を最大限に楽しむことであるが、多くの人はそのことに気づいていない

そして、この2つの問題をミックスして解決するソリューションとして、
老後のために今でしかできない「経験」のチャンスを逃さずに、人生の早い段階から老後のための貯蓄を取り崩して「経験」のためにお金をかけるべきであると説いています。
そして、最終的には、それが死ぬ時に資産を使い切る「DIE WITH ZERO」の生き方となるわけです。

それでは、まず最初に提起された「老後のための貯蓄が使われない」問題点についてみていきましょう。

1. 「老後のための貯蓄が使われない」問題点
私たちは老後に向けて貯蓄しよう、といったメッセージを常に耳にしています。子供の時から、いざという時のためにお小遣いを貯めておきましょう、と聞かされて育ち、大人になっても同じことを言われ続けてきました。
ところが、この老後のための貯蓄はほとんど使われずに終わることが多いそうです。

ある退職者向けの調査結果では、60代で資産が多い人は20年後または死亡するまで、その金額の11.8%しか使っておらず、当初の資産の88%以上を残して亡くなってしまいます。また、60代で資産が少ない人でも、退職後の18年間で資産の1/4しか減っていません
さらには、減らないどころか、全退職者の1/3が退職後に資産を増やしてしまっています

つまり、多くの人は必要以上に金を貯め込み、金を使うタイミングがほとんどなく、さらには70代になっても、まだ未来のために金を貯めようとしている傾向にあるそうです。

それでは、なぜ減らないのか。

人は歳をとると、健康問題の制約などにより、一般にお金を消費しなくなるからです。
そのため、老後のための貯蓄は、資産運用で増えて、かつ支出が減るため、ほとんど減らない場合が多くなるということです。

それでは、一般に言われる、老後のための貯蓄の大きな使い道、目的を挙げてみましょう。

1つ目は自身の医療費のためという目的です。
まず、医療費のためという目的について、自身の終末医療に高額の医療費を使うことに果たしてそれほど意味があるのかよく考えるべきかもしれません。

2つ目は自分の子供のために残すという目的です。
子供のためという目的については、一般に、子供が親が死亡した後に資産を相続する最も多い年齢は子供が60歳前後になってからだそうです。しかしながら、一般的に人は30-40歳の段階で一番お金が必要になることが多いといえます。したがって60歳前後に子供に残してもあまり意味がないかもしれません。

3つ目は自分の残った資産で寄付をするという考え方です。
一般に、亡くなった時の老後のための貯蓄の一部は死後に寄付されることが多いそうです。しかし、本人にとって、もし寄付が貯蓄の目的であれば、なぜもっと早い段階で寄付する決断をしないのか、という疑問があります。

続いて、人生の本来の喜びを最大化するための「経験」を多くの人は十分にできていない、「充実した経験を得られない」問題について見ていきます。

2. 「充実した経験を得られない」問題点
自分が何をすれば幸せになるかを知り、その「経験の充実」に惜しまず金を使うこと多くの人はできていないのではないか、と言われています。
人生の各ステージで考えるべきは、時間、金、健康、経験の4つであるが、若い時期ほど(従来の貯蓄主義により)貯蓄(金)に比重が高くなり、時間と経験が不足しがちです。

逆に、歳をとると、時間、金はあるが、健康に自信がなくなるため、経験を充実させることが極端に難しくなります

結局、若い時に貯蓄主義で経験をせずに、年取ってからも健康面のマイナスからやりたい経験ができずに、人生を終える際に経験の充実度が低いまま終わってしまうわけです。
本来は健康が維持できている年齢で金を時間と経験に使うべきなのです。

この本の中では、以上の問題をできるだけ解消して、「人生の喜びを最大化する」具体的な方法として以下のことを推奨しています。

3. 「DIE WITH ZERO」の方法論
ステップ1:自分の寿命を予測する
ステップ2::死ぬまでの生活資金を見積もり、その分を確保する
ステップ3:純資産を減らす資産ピーク時期を決める
ステップ4:期間別バケットリストを作成する
ステップ5:期間ごとにバケットリストに書かれた「経験」に資産を使う

ビル・パーキンス氏はコンサルタントということもあり、人生というプロジェクト?について、極めて合理的に運営していくノウハウを教えてくれます。
欧米でも、多くの人は、老後のためにせっせと貯金をしているそうです。こうした「今までの欧米人のお金に対する考え方」を180度切り変えて、貯めるだけではなく、「どこかの時点をピークとして貯金を計画的に取り崩し「経験」に使っていく」という発想は非常に合理的ですね。

そして、この本で書かれているメッセージは日本人にも十分活用できるものだと思います。

元々日本人は「貯蓄好き」の国民と言われてきました。私も小さい時からお年玉や臨時のお小遣いをもらったら貯金しなさい、と言われて育ってきました。また「お金の節約は美徳」という文化も日本にはありますよね。

この「DIE WITH ZERO」のように、それは何のために貯めるのか、むしろ貯めたお金を使ってどんな「経験」するのかを計画的に見直してみたらどうかという発想は我々にも多いに役に立つと思います。

さて、ここで本には書かれていない日本の事情を少し加えてみたいと思います。

少し前の2019年に、金融庁の金融審議会市場ワーキンググループの報告書から以下のような老後の必要資金についての試算が公表されました。それは次のようなものです。「老後30年間で2000万円が不足する」

この、いわゆる「老後2000万円問題」は結構、話題になりましたね。この2000万円の試算は夫65歳以上、妻60歳以上の無職の世帯で、年金収入と実際の出費のギャップを考えると、毎月5.5万円の不足が生じるため、それが30年続くと1980万円の不足額になる、という予測です。
つまり、年金とは別に2000万円を老後の資金として持っておく必要があるとのことでした。

また、公益財団法人保険文化センターの調査によると、ゆとりある老後生活を送るためには毎月5.5万円ではなく、15万円程度は余分に必要とのことですので、その場合、年金とは別に5400万円が老後の資金となります。このような日本の事情を考えて「DIE WITH ZERO」を実践すると、5400万円を死ぬまでに必要な生活資金と考えて残しておき、それ以上の資産を「純資産」として取り崩す計画をしていくという計算となります。

日本人は下流、中流家庭が多いため、一般的には5400万円の資産がまずハードルが高いかも知れません。それでも、預貯金だけでなく、株式や投資不動産なども含めると、若くて結構「純資産」を持っている人がいらっしゃるような気もします。

特に今は株高、不動産高の状況にあり、資産運用の環境としては良いため、今後5400万円以上に資産を増やしていく方は多くなると思います。それであれば、「DIE WITH ZERO」方法論ステップ3以降に入ることができます。
その「純資産のピーク時期」を何歳にするかを決めて、その時期から5400万円以外の純資産を「積極的に経験に使う」に使うために取り崩し始める計画を立てるのです。

「経験に使う」を具体的イメージすると、本に書かれていたのは、

少し大胆な旅行に行ったり、子供に生前贈与したり社会に寄付をしたり、また今までやりたかった習い事にお金をかけることなどが挙げられています。

それ以外にも、コミュニティを広げる活動にお金を使ったり、さらにはライブ、演劇などのエンターテイメントや文化の経験にお金をかけることもありかと思います。

また、自分の気に入った趣味や専門分野を極めていくために必要なお金をかけていくことも、経験、知識を深めていくために有意義だと思います。最近、流行りの「推し」にお金を使うことも、ある意味、経験や感性を豊かにすることであれば、ありだと思います。

ちなみに、ビル・パーキンス氏が説く「純資産を取り崩すピーク時期」は、一般には45歳から60歳がよいそうですよ!そろそろ考えないとですね!

そういえば、日本にはもっとドラスティックな言葉がありました。
「宵越しの銭はもたない」
です。

江戸っ子は、その日稼いだお金はその日のうちに使ってしまうのが「粋」とされていました。これは大多数の江戸っ子が、それほど裕福ではなかったから、とか、災害が多く、いつ全てを失うかわからない、という環境のせいもあるようです

それでも、この「宵越しの銭はもたない」には「DIE WITH ZERO」に近いエッセンスが含まれています。つまり江戸っ子は、稼いだお金を貯めるのではなく、子供の教育や園芸、歌舞伎などの趣味にお金を使うことが大切である(粋である)お金自体に執着しない、という当時の文化が「宵越しの銭はもたない」という言葉に表れていたのです。

預貯金を大切にしている現代人からは想像もつきませんが、日本人も昔は「DIE WITH ZERO」の精神で今を生きていた時代があったのですね。そう考えると、現代の我々は、少々お金にとらわれすぎているのかもしれませんね。

(今回読んだ書籍名)

DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
著者:ビル・パーキンス
訳者:児島 修
ダイヤモンド社

この記事が参加している募集

人生を変えた一冊

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?