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アフターコロナにおいて、企業はリモートワークを続けていくべきか

コロナ騒動により、働く環境は大きく変わりました。緊急事態宣言が解除されたものの、第二波の到来が懸念されるなど、予断を許さない状況が続いています。

やむを得ずリモートワークに切り替えた企業が多い中、アフターコロナでは、元のオフィスワークに戻るべきか?リモートワークを続けていくべきか?迷っている企業は多いでしょう。

まず結論から述べると、私の意見はズバリ…

結論:リモートワークをぜひ続けていくべき

ここには、3つのメリットと4つの大きな懸念が挙げられます。その懸念を反証していく形で、私の経験と周りの人から得られた知見を元に考えていきます。


3つのメリット

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メリット①:感染リスクを下げられる(社会的使命)

病院関係や交通関係、小売店などエッセンシャルワーカーと呼ばれる職種の人をはじめ、現場に出ないと仕事ができない人はたくさんいます。そうした出勤が必須の人たちの感染リスクを下げるためにも、リモートで仕事ができる業態の企業はリモートワークにするべきです。そうすることで交通量や接触量、密度を下げることは、社会的にも重要だと思います。これはコロナに限らず、インフルエンザなどほかの感染症や災害のリスクを考えた時にも。

さらに言及すると、弊社はCO2削減など環境系の事柄にも取り組んでいますが、そのCO2排出量の要因、第3位が交通。出勤はここに該当するものなので、環境という面でも不必要に動かない方が地球にやさしくすることにつながります

(ちなみに…CO2排出量の要因1位は、冷暖房や工場の操業などでエネルギーを使っているビルディング。そして2位は、意外にもゲップなどのメタンガスをすごく出す食用の牛です。)

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メリット②:従業員が働きやすくなり、時間の有効活用ができる

出勤は、実は人生の大部分の時間を占めています。それをカットできることにより、時間の自由度がグンと上がります。家族と時間を過ごす、勉強する、趣味に費やすなど時間の活用度が上がり、ワークワイフバランスがかなりとりやすくなります。

また、リモートワークだと、妊娠・出産を理由に辞める女性が減る、夫の転勤について行かなければいけない場合も続けられる、介護で実家に帰ることも検討しやすいなど、採用や雇用維持にも効果的という点で、労使双方にメリットがあります。

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メリット③:コストカットにつながる

弊社もフルリモートという方針を決めましたが、その結果、オフィスを増床しなくてもよくなりました。逆に、減床する方向も。オフィスはきちんと借りると賃料が高いですし、光熱費もかかります。リモートワークだと、そうした費用を削減できるコストメリットもあります。

さらに、従業員の出勤の必要がなくなれば、移動費もかかりません。仮に1000人を雇用している企業の場合、1人1日500円かかるとして、1000人動くと50万円。1週間だと5日間で250万円。1ヶ月だと4週間で1000万円。すごく安く見積もっても、年間1億円以上かかる計算になります。この通勤手当が圧縮できるだけでも、コスト的には大きいです。


メリットは大きい!…しかし、4つの懸念も

このような3つの大きなメリットが明確にあるため、頻度や期間はさておき、業務の大部分においてリモートワークをベースにする(場合によっては、出社も組み合わせる)方向性をもった方がいいと強く思います。
ただ、リモートをベースにすることによる懸念もいくつかあるのは事実です。弊社の社長など数人にヒアリングした内容も踏まえると、4つほど考えられます。

①一体感の喪失。会社への共感、ビジョン共有、チームビルディングの弱体化
②業務の生産性の低下
③メンタルヘルス問題、精神的な病の増加
④セキュリティ、情報機密のレベルの低下

これらの課題をどうしていくかをクリアできなければ、今後もリモートワークを恒久的にベースにしていくかどうかは、なかなか判断できないのが実情だと思います。


やってみないと、わからない!

4つの懸念に対する反証を挙げる前に、大前提として言えるのは「答えがないことだから、正直やってみないとわからない」ということ。
まずは、リモートワークを続けてみる。すると、これら4つの課題が出てくるかもしれませんし、別にそんなに大きな問題ではないかもしれません。それは、これから判明していくことです。現時点で明確な解はありません。やる前から「絶対大丈夫!」と言うことはムリですし、懸念を100%払拭することはできません。


オフィスワークに後戻りできる形も残したまま、リモートワークの続行を!

実際にアフターコロナもリモートワークを続ける際は、オフィスワークに後戻りできる形で展開していくのがいいと思います。もちろん、リモートワークをベースにできる可能性はあるという前提で。

例えば、時限立法として、3ヶ月間はコロナ時のようにリモートをベースにしてやるとします。そして3ヶ月後に改めて問題がないかを検証して、再判断を促すのも一つの方法です。
もしくは、定期的に気になることを追っていき、事故の件数や生産性、チームの一体感、退職率などのアンケートをとったり、数値の変化をモニタリングしたり。リモートワークを始めた以降にそれらが悪化する傾向がみられた場合は、リモート要因の可能性もあるので、一度出社ベースに戻していくなど、結果次第で柔軟に対応していくのがいいと思います。


重要なのは、リモートワークを既得権益にしないこと

夏休みやボーナス、住宅補助の有無など、一度やると当たり前になってしまうことは、すべての制度に往々にしてあります。背景や目的があって、ある効果を狙って、ある条件の中でできた制度も、気づくと当然の権利のように「あって当たり前」なものになってしまっています。ない時にできると有り難みがある制度も、あることが当たり前になると、「ないと不満に感じるもの」になります。
つまり、いろいろな物事を既得権益にしないことが大切です。リモートで働くことも、前提事項として捉えないようにすることが重要です。


4つの懸念への反証

では、先ほど挙げた4つの懸念に対して、私なりの反証を述べていきます。

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①への反証:「一体感やビジョンの共有」は、リモートでも損なわれない

一体感が醸成されている要因を再整理して、それがどのようにリモートで実現できるかを考えていくといいと思います。

例えば、Googleなど全世界に会社があるようなグローバル企業のケース。基本的にチームも複数カントリーにわかれているので、そもそも一緒に働くのは不可能なケースが多いです。だからといって、そのチームに全然一体感がないかというと、そうではない。成功している企業はあると思っています。
Googleの日本法人の社長を紹介してもらい、ヒアリングできる機会に恵まれたことがあります。その際に、ある企業が今後グローバル化していくにあたって、海外のブランチのテンションを下げずにうまく展開していくにはどうすべきか、ということを伺いました。そのためには、以下の2点が大事ということでした。
①メインの社長がブランチに足を運び、関心をもっていることをきちんと伝える
②特定の領域のメンバー全員で年1〜2回は集まり、1泊2日や2泊3日で密の濃い時間を過ごす

これらの要素をうまく取り入れれば、リモート化したとしても、一体感をそこまで下げずに保てるのではないか、と感じます。

そもそも、「一体感の要素」とは何か。それは、目指している方向性、ミッションビジョンが一致していることだと私は思います。その大きな方向性に賛同していて、自分もやりたいと思っていること。当然、会社のミッションビジョンと個人のミッションビジョンは、完全には紐づきません。私はよく漫画の「ONE PIECE」に例えるんですが、海賊王になりたいのはルフィーだけであって、仲間がみんななりたいわけじゃない。ゾロは世界一の剣豪になりたくて、サンジは世界一のコックになりたくて、ナミは世界の海図が書きたくて、ウソップは勇敢な男になりたい。でも麦わらの海賊団としては、海賊王になるために「ラフテル」を目指すということを打ち出しています。例えるならば、会社のミッションビジョンがそれです。その方向性に賛同しており、そこに近づいていくと、ゾロもサンジもナミもウソップも自分のミッションビジョンに近づけるということで船に乗っています。この点が重要だと思っています。

さらに、年末や半期末の総会など定期的なお祭りみたいな形でイベントを開き、そこで方向性を確認したり共有したりする振り返りの機会があるといいです。
会社の方向性やミッションビジョンへの共感、自分のミッションビジョンとの合致、そして定期的なイベントによる振り返り(再燃、改めての着火)。それに、チームの上司や同僚と定期的にコミュニケーションをとって密で良好な関係を保つことにより、自分が取り組んでいる業務内容の位置づけが確認できます。これらのポイントが網羅できれば、一体感は十分に醸成・維持できると思います。

では、これをリモートでできないか。
実は、ほとんどのことはリモートでも問題なくできると思っています。ミッションビジョンの共感は、集まっているかどうかなんて関係ありません。いかにそれを表現して言語化するかが重要です。自分のミッションも然り。周りがどうとか関係なく、自分できちんと考えて明確にするだけです。

イベントに関しては集まった方が効果的だとは思いますが、最近、弊社で総会をYouTube Liveでやってみました。1000人に対して5人くらいの規模でしたが、これがすごくよかったです。集まって謎に長い時間拘束されて、すごく遠くから壇上を見るよりも、画面を通して近い距離感で社長などが話したりコメントを取り上げてもらったり。2時間でしたが、テレビ番組のごとくしっかり構成されていたので、飽きずにちゃんと見られました。むしろ、密度が濃くて、個人的にははるかにモチベーションが上がりました
また、日々の上司や同僚とのコミュニケーションも、これまで述べてきたリモートコミュニケーション術を駆使すればオフィスにいるかのごとくできてしまうので、集まる必要はありません。業務の位置づけへの理解も、上司の説明力の問題です。

結論、実感としても、一体感を損なうことなくできる可能性が高いと感じています。

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②への反証:大きな「生産性の低下」にはつながらない

生産性や成果の低下に対する懸念は、業種や職種によって考えていく必要があると思います。

エンジニアやデザイナーなどクリエイティブ系の人は、そもそも以前からリモート体制で仕事しているケースが多いです。アウトプットも明確なので、期間内に成果物が上がったがどうかがわかってさえいれば、全く問題ないでしょう。

オペレーション、いわゆる事務作業においても、リモートワーク(在宅)の方がはるかに集中力が高まるので、むしろ生産性が上がるのではないかと思います。
ただ、わからないことを聞く際に、聞き方や伝え方という点においては、オフィスで横に同僚がいた方がコミュニケーションしやすいかもしれません。でも、これも動画で作ったマニュアルや自分の発信チャンネル、定期的な朝会や昼会の機会などを駆使すれば、解決できます。経験上、オフィスと同じ程度の育成は不可能ではないと感じているので、こちらも問題ないでしょう。

営業職の場合は、正直わかりません。
クライアントとのインターフェースが近い方が得意な人もいるので、オンラインだと人間関係を構築できないなど、営業スタイルとしてうまく成果を出しにくいケースはあると思います。私自身も、経営していた会社では、リモートで営業していました。大人数に対してプレゼンする時は、リモートだと全員の顔が見えないので反応がわからないなど、伝えにくいと感じる場面もありました。
でも、オフィスに集まるとしても、リモートであっても、クライアントの元に行くなら行けばいいので、この点は、あまりリモートワークとは関係ないと思っています。訪問できるかどうかはクライアント側の事情であって、自社がリモートワークをベースにしているかどうかは関係ありません。そのため、リモートワークに切り替えたからといって、生産性が下がることにはつながらないと思います。

ここまで、クリエイティブ系や事務職、営業職を見てきましたが、全体的には問題ないと言えるでしょう。リモートワークに変えたからといって、大きく成果が下がるわけではないと思われます。

ちなみに、職種というより、自己管理ができない人たちは、そもそもリモートワークができないかもしれません
「リモートワークになったことで、3〜4割の人が行方不明になった」とよく言われています。行方不明とは、つまり、オフィスにいた時は何をしているかわからなくても存在していた人が、リモートワークになったら会議にもコミュニケーションツールにも顔を出してこない、どこにいるかわからなくなってしまった…ということです。オフィスにいた時は見えるから存在を感じていて、なんとなくやっている感が出ていても、実際は仕事をほとんどしていなかったため、仕事だけが可視化される状況になると、いなくなってしまった…要するに、いなくても困らなかった人がたくさんいた、ということです。

このように、リモートワークになって極端に生産性が落ちる人は、おそらくオフィスワークでもあまり生産性が上がっていなかったはず。雰囲気ではがんばっていそうな感じがしていても、実績がないからリモートになると途端に存在感が消えてしまう。つまり、そういう人は会社への貢献もないわけなので、いらない人材…終了の方向にしていくのが妥当という判断もとられていくでしょう。

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③への反証:「メンタルヘルス問題」は仕組みで解決!ポジティブな側面も

メンタルヘルスやモチベーション、仕事への取り組み姿勢に関する問題は、たしかに懸念されます。これに関しては、リモートワークに切り替えた時に大きなダメージがあるんじゃないかと思われます。特に自己管理ができない人、周りがやってるからがんばるタイプの人は、自宅で一人で作業する環境だとだらけてしまって、仕事が進まないということはあるでしょう。

でも、すべてのメンタルヘルスの問題が「リモートワークだから起こったか」と問われると、そうでもないはず。単純に仕事との相性であったり、求められている能力とのギャップであったり…その辺りをうまく伝えられなかった時に、メンタル面の課題が出てくると思っています。つまり、リモートワークにおいても真のコミュニケーション力が求められています

大事なのは、お互いに信頼し合える状況をつくっていく、コミュニケーションのとり方。そのためには、自分自身がきちんと情報を発信すると共に、相手にちゃんと反応していくことがマストです。コミュニケーションの密度が下がらないように、みんなが意識して取り組んでいくことができれば、オフィスに集まらなくてもコミュニケーションが多い状態や、むしろ理解し合うような形は再現できると思っています。

一方で、リモートワークだと嫌な人と話さなくて済みます。オフィスにいると、同じ空間を共有したり、すれ違ったりすることもありますが、リモートだと特定の何人かとコミュニケーションをとっていれば、仕事は成り立ちます。物理的に離れている分、嫌な人は断絶するという手段がとりやすいです。気に入らない同僚や仲の悪い先輩、嫌な上司とは違うラインで仕事することにより、そちらを完全に気にせず仕事できるので、そういう意味では、メンタルヘルスにおいてはポジティブな側面が強いです。

信頼関係やコミュニケーションが減りがちという部分は仕組みでカバーしながら、一方でこうしたポジティブ面を活かしていくと、むしろメンタルヘルスにはプラスになる要素もリモートワークにはあります。

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④への反証:「セキュリティ問題」は、テクノロジーによって解消できる

セキュリティに関しては、様々なテクノロジーによって解消できると思っています。すでに何らかのサービスを利用することによって、リモートワークでもなんとかなっているケースも多いはず。そうしたテクノロジーをしっかり導入して使っていけば、問題はありません。


ここまで、4つの懸念に対する反証を述べてきました。
結論は、やはり…

結論:リモートワークは続けられる!アフターコロナにおいても続けるべき!

ちなみに、広告リサーチを専門とするアメリカのマーケティング調査会社「ギャラップ・ロビンソン」の調査でも、「柔軟な働き方を提供するリモートワークは、業績を改善し、優秀な人材を惹きつける」とされ、リモートワークが効果的ということは明らかです。
(参考元:https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja/305210/テレワークは効果的か-答えは-yes-ギャラップ社調査.aspx)

つまり、4つの大きな懸念はありますが、すべてやり方次第でなんとかなるうえ、ここで挙げた3つのメリット以上の効果が得られます!後戻りできる範囲で段階的に、既得権益や当たり前の期待値にならないようにリモートワークを導入し、トライしていくのを推奨したいです。



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