ぽんぽこ

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こんにちは、小説を書くイヌ科の狸です。 薬剤師免許を持つ農家ですが、普段は投稿サイトでライトノベルを書いています。 昔は回るカウンター付き個人サイトを作って、自分でキリ番Getしていました。 noteに掲示板は無いので、感想欄にコメントをお待ちしております、へへっ。

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  • note創作大賞2024・ホラー小説部門『透影の紅』

    ホラー長編のリストです。

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【受賞!】note創作大賞2023

10/27(金)に発表されました創作大賞2023。 その中で私の作品が『文藝春秋コミック編集部賞』を受賞いたしました! そしてその作品はコチラ↓ アラサーの女性主人公が過酷な労働の日々を過ごしつつも、食べて飲んで、ときには恋愛をして人生を楽しむお話です。 元々は別サイトで投稿していた作品を、今回はリメイクして応募させて頂きました。 この作品を書き始めたキッカケは、私自身が薬剤師だったこと。そして飲み食いが大好きだったことです。(ぽんぽこというPNも、肥えた体型が由来だっ

    • 【Let's家呑み】今更ハイボールにハマったアラフォーの入門おつまみレシピ④『贖罪の大葉チキン』

      健康を心配する気はあるのか~前回のあらすじ~  缶詰料理って手軽で最高!! さすがに怒られた  調子に乗って好きな料理のレシピを書き、ドヤ顔で家族に「こんな記事を書いたんだけど、どう!?」と見せてみたところ。 「アンタ、健康診断で引っ掛かったのに全然健康に気を使ってないじゃない」  と、あまりにもな正論でカウンターパンチを喰らってしまった。 ならば健康的なレシピを書こうじゃないの  悔しいが、その通りである。私がやったことといえば、ビールからハイボールへと酒の種類を

      • 透影の紅【最終話】

          「起きて、悠真くん……」  誰かの声に導かれるように、悠真はゆっくりと覚醒していく。  んん、と何回か身じろぎをした。目蓋がやたらと重たく感じる。というより全身が物凄く怠い。それに……なんだだろう。どこかで嗅いだことのある甘酸っぱい匂いが、ツンと鼻を刺した。 「まぶしい……」  太陽の光が差し込んでいるのか、眩しい。視界がぼんやりとしている。  逆光になっているが、誰かが自分を見下ろしているようなシルエットが目に入った。  そうだ。前にも似たようなことがあった。あれはたし

        • 透影の紅【第23話】

           教会の入り口に立っていたのは、全身を煤だらけにした長身の女だった。  かつての可憐な乙女だった姿はどこにもない。長い髪は炎に巻かれてしまったのかボロボロで、ところどころ短くなってしまっていた。 「本をぉお……寄越せぇええ……」  真っ赤に充血した目を剥き出しにして、唸り声を上げている。知性のようなものはまるで感じられない。  そして左手には悠真たちも知っている、あるモノが掴まれていた。 「そんな……嘘だ……」 「駄目っ、悠真君! 近付いたら殺されちゃうっ!」  駆け寄りそう

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        【受賞!】note創作大賞2023

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        • note創作大賞2024・ホラー小説部門『透影の紅』
          24本

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          透影の紅【第22話】

             悠真たちを迎えたのは、ソファーの上で放心状態になっている洋一と、彼を背後から腕(かいな)で抱く汐音の姿だった。  最初に出逢った頃の、大人しくて引っ込み思案だった彼女の姿は、もはやどこにもない。妖艶に微笑み、最愛の人を手に入れた悦びで満ち溢れていた。 「汐音ちゃん……」 「ありがとうございます、紅莉さん。貴女のお陰で、私は長年欲しかったものを手に入れることができました。そう、ずっと欲しかった……お兄様の心を……」  ブツブツと何かを呟く洋一の頬を優しくひと撫ですると、汐

          透影の紅【第22話】

          透影の紅【第21話】

             今から約十七年前。  とある少女は自身の宿命を知った。  その少女の名前は、日々子といった。  普通の家庭に生まれ、十六年を過ごした。親と喧嘩し、友人と遊び、髪を染めてちょっとだけ悪いことをした気分になる。そして同い年の男に恋をし、失恋する。  そんな、普通の女子高校生だった。  だが、少しずつ、自分が周りの友人たちと違うことに気が付いた。  たしかに中学時代から目立つほどに容姿が整っていた、というのもあるが、それはまた別の話。  ――彼女は人を呪えたのだ。  キッカケ

          透影の紅【第21話】

          透影の紅【第20話】

            「お姉さんに没収された……?」 「アタシが貯金を使って本を買ったのがバレちゃって。お姉ちゃん、マジギレしてさぁ……」  どうやら彼女、高校を中退して配信者として生きていくと決めた時に、両親と大喧嘩をしたらしい。そして半ば家を飛び出し、既に社会人として独り暮らしをしていた姉の元に転がり込んだ。 「ママたちを説得する代わりに、お金の管理は全部お姉ちゃんがするって条件だったんだ。それを今回、アタシが勝手に使ったから……」 「あぁ、それは怒るだろうなぁ」 「うっ……だってぇ! あ

          透影の紅【第20話】

          透影の紅【第19話】

           マルコの教会で一晩過ごしてみた悠真の感想。それは想像よりも快適なものだった。  彼の作る料理はどれも絶品だったし、個室に清潔なベッドもあった。  テレビやパソコンといった類の娯楽に使えるような家電は無かったものの、シャワールームや洗濯機といった生活必需品はちゃんとあった。悪魔が風呂に入るのか疑問に思ったが、意外にも綺麗好きだったようだ。  そうして朝を迎えた悠真は、紅莉と一緒に占星術の魔術書を持っている山科立夏の元へ。彼女が住んでいるマンションは、東京都の青羽根駅からおおよ

          透影の紅【第19話】

          透影の紅【第18話】

             薔薇が咲く季節を知っているだろうか。  冬薔薇(ふゆそうび)という言葉があるが、普通は寒い時期に薔薇は咲かない。新緑にしっかりと太陽の恵みを受け、梅雨と共に散るのだ。    洋一たちが住む洋館でも、多種多様な薔薇が見頃を迎えていた。これらは全て、館の主である洋一が手入れをしているものだ。  中には貴重な品種や、扱いが繊細で栽培が難しいものもある。  ここまで綺麗に咲くまで何度も失敗を繰り返しつつも、彼は我が子を育てるように可愛がってきた。  薔薇と共に過ごすという何とも

          透影の紅【第18話】

          透影の紅【第17話】

            「夕方のニュースです。本日埼玉県氷川市にある宿泊施設にて、男性が倒れているとの通報がありました。男性は全身を刃物のようなもので刺されていたとみられ、その後、病院で死亡が確認されました。男性は三野和雄さんとみられ、警察は建物の入り口にある監視カメラに映っていた不審な女が何か事情を知っているとして行方を追っております。またこの近辺では先週、同様の殺人事件が――」    紅莉は悠真と河口駅で解散した後、家には帰らず荒川の河川敷に来ていた。  河川敷の土手は有名なウォーキングコー

          透影の紅【第17話】

          透影の紅【第16話】

           改めて部屋を見渡すと、呆れの溜め息が出てきた。  最初に部屋に入った時に「ラブホって想像していたよりも綺麗なんだな」と思ったのが、もう懐かしく感じるほどに汚れきってしまっていた。  こうなったのは自分の所為ではないのだが、さすがにラブホテルの従業員に申し訳ないという感情が湧いてくる。 「さて、コイツをどうするんだ?」  しかし紅莉は部屋の惨状には目もくれず、なぜかベッドに転がるカズオに近寄り、彼の服を脱がし始めていた。 「紅莉……?」 「大丈夫、ちょっと待っていて!」  と

          透影の紅【第16話】

          透影の紅【第15話】

             紅莉が部屋の扉を開けると、豚のモンスターが出待ちをしていた。 「ふーっ、ふーっ。き、君が紅莉ちゃんかい?」 「え? あ、はい」 「ふぅ、ふぅ。はいはい。それじゃお邪魔しまーす」 「あ、ちょっ……」  ――あの野郎。  悠真はつい、クローゼットから飛び出しそうになる。  扉の隙間から見えたカズオらしき人物は、サングラスにマスクをした巨体の男だった。  その男は紅莉の許可を得もしないで、マスクの下でフゴフゴと鼻息を荒くしながら部屋の中へと入ってきた。  歳は二十代後半から三

          透影の紅【第15話】

          透影の紅【第14話】

            「あぁ、やっぱり」  ニュースの記事を見た紅莉は、納得した表情で頷いた。 「じゃあ、紅莉の方も?」 「うん。こっちもそれらしい話が出てきたよ」  紅莉が調査したのは、一般人が利用するSNSだ。  彼女は『氷川市』『ビル』『事件』といったワードで検索してみたところ、気になる書き込みが見付かったらしい。所詮は一般人が書いた信憑性の低いものだが、記事よりもやや詳しい内容が幾つか見つけることができた。 「うーん、犯行があったのはちょうど一週間前。その時間帯はバーも営業中だったのか

          透影の紅【第14話】

          透影の紅【第13話】

             教会で本の悪魔であるマルコと会った次の日。  悠真たちは占い師が運営するカレイドスコープへと向かっていた。  最寄りの河口駅から電車に乗り、隣りにある氷川市へ。  氷川駅の改札から出て、西口へと向かう。この駅は河口駅に比べて倍以上も大きい。電車の種類も多く、新幹線も通っている。  規模に比例して利用者も多く、構内は制服やスーツを着た人たちで溢れかえっていた。  学校をサボっている手前、警察に補導されないように私服でやってきたのだが、これでは逆に目立ってしまっていた。  

          透影の紅【第13話】

          透影の紅【第12話】

           大人しかったころの日々子はもういない。一撃で穴が空き、二撃、三撃でさらに穴が広がっていく。最後に用済みの石を屋内へ投げ込むと、日々子は土足のまま中へと侵入する。  侵入を遂げた日々子はパラパラとガラス片を床に落としながら、キョロキョロと室内を見渡した。 「――チッ。手間を掛けさせる」  この部屋に直樹は居なかった。ローテーブルの上にあった花瓶を持っていた兎のトートバッグでなぎ倒し、日々子は廊下へと進む。かくれんぼは継続である。  ひとつひとつ、注意深く部屋を移動していく。

          透影の紅【第12話】

          透影の紅【第11話】

             禍星の子、飯田直樹はラッキーボーイである。  なぜなら彼は、風水という占いの才能を持って生まれたのだから。  風水を扱う上で、ある有名な本がある。  中国における晋の時代。占術のひとつ、卜占(ぼくせん)を専攻していた郭璞(かくはく)によって書かれた葬書という本だ。 『気は風に乗れば則ち散り、水に界せられば則ち止る。古人はこれを聚めて散らせしめず、これを行かせて止るを有らしむ。故にこれを風水と謂う』  要約すると、これは『気は風に乗り、水に留まる』となる。  地理学、天文

          透影の紅【第11話】