デザイン経営⑥~自由になるための組織・人材論~
Pomoloです。新規事業やコンサルティングをやっています。
今回は前回に続いて、「イノベーションのためのデザイン」のTipsの話をします。
これまでのデザイン経営①~⑤では、最近流行りのデザインやデザイン思考をより企業活動に当てはめやすいように、「デザイン経営」という枠組みで捉えて経産省が定義している「ブランディングのためのデザイン」と「イノベーションのためのデザイン」に分けて私の新規事業での経験や私見も踏まえて考え方をまとめてきました。
ここまで書いてきて、自分の新規事業での経験をもとにしていることもあり、デザイン経営は割と小さめの組織で新しいことを始めるときに適しているな、逆に大企業でルーティン化しているような既存事業組織でのデザイン経営はどう実践すれば良いのだろう?
と、自分の中で新しい問いが生まれました。
このNoteを読まれている方の中にも、大企業のなかで新しいことに取り組んだり、もっと自社の事業の価値を高めたいという思いをもっている方もいるかと思います。
そんな方向けにも示唆が出せればと思い考えていましたが、私がそもそもデザイン経営について考えた動機は、「どうすれば仕事の中で創造的になって新しい価値を生み出せるか?」であり、1つの答えとして、「創造的になるには大きな組織ではなく、小さな組織で動く必要がある」と言えるのだと思います。
そこで今回の「イノベーションのためのデザイン」のTipsでは、組織や人材について触れるため、正解を出すことはできませんが、いろんなタイプの組織で応用してもらえればと思います。
色々と書いていきますが、結局は想いを持った個人やチームがあってこそ新しい価値やサービス・プロダクトは生まれると思います。
そういう意味では「ブランディングのためのデザイン」で、なんのためにやるのか、何が目的なのかを腹落ちするまで考え抜く事が必要です。
そういう話も前提として、本題の話に戻っていこうと思います。
デザイン経営④で
と整理した「発想と実装の橋渡し」と「組織組成」が今回のお話になります。
(「不確実性とどう向き合うか」は前回のデザイン経営⑤で書いています)
「発想と実装の橋渡し」
デザイン経営③では、「イノベーションのためのデザイン」のプロセスを簡易的に
と整理して話をしました。
イノベーションのためのデザインでポイントになるのは、ある地点で大きな「断絶」があるということです。
どこで断絶が起きるかというと、「コンセプト策定」と「プロトタイピング」の間です。
何が起きるかというと、当たり前っちゃっ当たり前なのですが、構想して来たサービスやプロダクトがいざ現実に作っていこうと思うと現実的な制約が起きてきます。技術的な実現性やコストの問題などです。
制約の性質によってはプロトタイピングまでは問題が表面化しないかもしれませんが、その後の行程で必ず起きてきます。
夢見たものを現実にするときってだいたいそうなりますよね?
私がいつもこの問題でイメージするのは生物の進化です。
魚類から進化して陸に上がった生物はいきなり重力という制約を大きく受けることになると思います。
それがデザインの「発想」のフェーズと「実装」のフェーズでも言えるかなと思います。
「発想」しているときは、水の中を自由に上下も関係なく自由に泳ぎ回っていましたが、「実装」のフェーズになると制約という重力で地べたを這いずり回ってなんとか前に進むしかありません。
デザインのプロセスの中では魚から陸上生物へ進化しないといけないときが来ます。
ただ、いつかは陸上に上がらないといけないから最初っから現実的に考えようと思うと新しい発想は生まれません。一方で自由に泳ぎ回れるといつまでも思っていても現実に押し潰されてしまいます。
私はこの両者のどちらにもなれるような両生類的な柔軟性が必要ではないかなと思います。夢と現実のバランスをとるということです。
「発想」をしているときから「実装」のおとしどころも意識しておく、「実装」のフェーズにおいても「発想」のときの自由さや本当にやりたかったことを忘れない。
常に夢と現実を思考の中で行ったり来たりできることが必要だと思います。
自由に発想できる人がデザインに向いているというイメージがあるかもしれませんし、実装するのは現実的な思考ができる人だというイメージもあるかもしれません。
ただ、そうやって上流工程と下流工程で実行主体を変えてしまうのはよくありません。
「発想」から「実装」まで一貫してリードできるということが重要になります。
このバランス感覚はなかなか言葉では表すことができません。
新規サービス開発などを上流から下流まで一貫してやりとおした経験が必要になります。
大企業の中では上流は外部のデザイナーやコンサルが企画を行い、下流はまた別の組織が担当するといった場合にうまくいかない例がよくあるかと思います。
性質の異なる「発想」と「実装」の橋渡しができる人が必要になります。
そういった人はプロデューサー・ディレクター人材とかアントレプレナーと呼ばれるかも知れないのですが、そういう人がひとりでもいることが「イノベーションのためのデザイン」では必要になります。
組織組成
そこを踏まえて、では「イノベーションのためのデザイン」を行うにはどのような人材やチームが必要になるのだろうかという話です。
「発想」と「実装」の橋渡しができる人材というのはお話ししましたが、そういった人材を中心にしてチームはどのように構成されるのがいいのでしょうか?
ここでも「発想」と「実装」の橋渡しということが重要になってきますが、デザインでは発想する力が必要なので構想段階では発想が得意な人材ばかりいればいいような気持ちになりますが、やはり先の実装を見据えていくという意味では、構想段階から、ビジネスや技術に詳しいメンバも入れて実現性もある程度は担保しつつ進めていくことが重要です。
もちろん実現性ばかりを気にして石橋を叩いても新しいものは生まれないのですが、ここで実装に強いメンバを巻き込んでおく意味としては、構想から入ってもらえると、目指しているものを腹落ちしながら実装フェースでもモチベーションアップ高くサービス開発なりビジネス開発に関わってもらえるからです。
すでに誰かが決めたことを実装しているという意識よりも、より自分事化して取り組んでもらえます。
更にそもそもの目的を腹の底から理解していると、制約に囚われずに創造性を発揮して、より良いアウトプットを出してもらえると思います。
その他チームに必要な要素としてはありきたりになってしまいますが、「多様性」は重要です。上のビジネス人材・技術人材を入れるという話にも関わることですが、様々な発想があった方がより発想は広がりますし、実現性も担保されます。
また、様々な性別や年代の人がいる方がより発想が生まれることも、当たり前ですが見落としてはいけない要素です。
新しいサービス開発であればターゲットとするユーザの意見がより多く入ればいいので、該当する属性の人をチームに入れて一緒に検討を進めていくくらいの感覚でいいと思います。
大きな会社であれば一定期間そういう人材をデザインや新規事業については素人でもいいので(むしろ素人の方がいいでしょう)入ってもらうのもありでしょう。
少し話がそれますが、私は素人の感覚というのは新しいサービス・プロダクト開発ではとても重要で、どんどんプロセスが先に進んでいくとメンバの思考も固定されていくので、ある程度人を入れ替えたり新しい人材もいれていくことが重要だと思います。
素人感覚を失うことには常に危機感を覚えておいた方がいいです。
組織組成の話はいくらでも話せそうですが、まとめてみると、
・発想~実装まで一貫して推進できるリーダー人材
・ビジネス、技術などの専門家人材(実装フェーズをリードする人)
・ユーザ視点を持った人、素人感覚がある人も含めた多様な人材
といったところが重要になります。
リーダー人材を中心に多様なメンバがメッシュ上に繋がっているというのが、「イノベーションのためのデザイン」を推進する組織となります。
おそらくスタートアップの初期もCEOを中心として、COOやCTOになっていく人材とどんどん組織を大きくしていくので、スタートアップは1つのデザイン経営のベストプラクティスだと思います。
既存の企業の中での新規事業でも、スタートアップのような組織を意識して、人材の配置や権限委任をどのように行っていくかがポイントになりそうです。
長くなりましたが、「イノベーションのためのデザイン」のTips
について駆け足でお話ししました。
ここまで読んでいただいた方は本当にありがとうございます。
私のデザイン経営についてのNoteも①~⑥までで一旦完結しました。
次回からはデザイン経営①~⑥をまとめたり、私のテーマである「創造性」について色んな角度から考えたことをまとめていきたいと思います。
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