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旧友よ、共にきてくれるか?(小説)

昔、ずっと仲良くしていた友がいた。

よく物語である、2人で1つのような物だった。

中学の頃の話だ。懐かしい話も何個も出てくる。

いつかに、そいつの家に泊まりに行ったことがあった。

そいつの母は甘く、一人っ子だった旧友にこれでもかと甘やかしていた。

一人っ子だった私だが、10歳の頃に弟ができてから
その雰囲気が懐かしかった。

当然のように私も甘やかされ、とてもくつろげていた。

共通の趣味も何もなかった。

というか、好きなものがことごとく違うのだ。

だが私たちは仲が良かった。

学校の話もせず、なぜ仲が良かったのか今になってはわからない。

中学の頃の話だ。安直な理由でもあったのだろう。

泊まりが終わってからはめっきりその話が持ち上げられていた。

年に4回は泊まりに行っていたか?

そのたびに私の友情は膨らんでいった。

お互いにあったことを報告した居たこともあり、

何もかも知り尽くしていた

泊まりに行き、中2の春休みだった。

大体10回目ほどだっただろうか?

泊まりは最高に楽しかった。
さきも言ったが、そのたびに友情が膨れ上がっていた。

その友情が破裂したように、旧友との関係が次の日から無くなった。

何もなかったように、お互いに話しかけることもなくなった。

何度、何度担任から話を聞かれただろうか…

「どうした」
「何かあったか」
「喧嘩か?」

本当に何もなかった。

最高に楽しかった泊まりから、最高に仲の良かった旧友がいなくなった。

不思議とも感じなかった。

破裂し、互いに飽きていたのだと思っていた。

私は少しずつ飽きていたんだと思う。

そんなことに気づいたのは、中3の夏だった。

いつもとは違う友の家に泊まり行った。

いつもとは違う面白さがあった。

破裂して、終わってから燃え尽きたような感覚があった。

泊まりの頃の記憶がなくなって、睡眠も3時間程度しかとらなかった。

なぜかそこに、懐かしさを感じた。

思い出したのだ。旧友の家へ初めて遊びに行った頃のことを…

自然に涙が出てきた。疲れもあってか、自然にポロっと出てきた。

痛み以外に初めて泣いた。
映画でも泣いたことのなかった俺が、初めて泣いた。

高校がたまたま一緒だった。

中3の頃の友も、共通の趣味を持たなかった。

その時と同じように旧友に話をかけた。

今思えば、少しダルがらみだったと思う。

陽キャではなかった俺が、「うぃぃい」
と…

少し慣れない話の掛け方をしたので、
そのあとにどうやって会話を始めるか困っていると、

旧友からも「うぃぃい」と肩を組まれた。

そんなキャラじゃなかったはずだったが…

どうやら会っていないうちに変わってしまったらしい。

驚きはしなかった。

元々、周りに影響されやすい奴だったから、
キャラが変わっているのは覚悟していた。

だが意外にも会話は弾んだ。

最初は俺と別れてからどういうことがあったか、

いつも通りの世間話だったが、一瞬で真剣な表情にした旧友。

           

「すまなかった」

なにを謝られたかわからず混乱していると、旧友から、

「殴ってしまい、謝罪に行けなかった」

私は唖然とした。

どうやら私は殴られたらしい。

関係がなかったので、恐らく殴られたのは関係が無くなったあの日…

泊まりの…最後の日だ。

旧友が申し訳ない顔をしている。

その顔を私が見下ろしている。

そんな状況が15秒ほど続いた。

かなり大きな声でハッキリとしゃべっていたので、
クラスのみんながこちらを見ている。

すぐに頭を上げるように友人に言い、

そんな昔のことをもう気にはしていない。

自分を悪者に仕立てたくなかった私が咄嗟に出てきた言葉だ。

あの時…なぜ…かばったり、冗談のように見せる言葉を言わなかったのか?

「知らなかった」と…

冗談はやめろ…と…


友人は、長年背負ってきた罪が晴れたような顔をしていた。

私は反対に、

クラスの皆が友人に向ける視線に自分の犯した罪を感じた顔をしていた。

すぐに修正しようと思ったが、
満面の笑顔の友人を前に、私はこのままでいいと思った。

最悪だ。

私は友人に言った。

旧友よ。最悪な私と共にきてくれるか?


友人は少し不思議そうな顔をしながら、

もちろん…


高校生活1日目の夕暮れ時、再開と出会いの場所であった話だ。
互いの顔が、緩く、照れているのが分かった。


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