見出し画像

ゲリラ的学習法のススメ 〜行き先不明な時代だからこそ、「学び方」を学ぶ

学びの「ぬるま湯」状態

学びの「ぬるま湯」とは?

文字通り温度の低いお湯のことですが、ここではちょっと異なる意味で使います。

1983年版の岩波書店の広辞苑によると、「ぬるま湯につかる」とは「現在の境遇に甘んじてぬくぬくとくらす」らしい。

では、学びの世界で「ぬるま湯」につかっているとは、どういうことでしょうか?

おそらくみなさんでしたら、難しいことに挑戦しない、簡単なことばかりをやっている状況のことを意味していると思うかもしれません。

もちろん、それも正解です。

今回この記事では、「ぬるま湯」を同じ条件・環境のところでしか学ばないということにします。つまり、家でしか勉強しない、同じテキストでしか勉強しない、同じことしかやらない、つまり教科書やテキストを最初から読むとか、という感じです。

で、一体何が問題なのでしょうか?

文脈依存とは

で、一体何が問題なのでしょうか?

こうした条件・環境では、知識が一定の条件下でしか使えなくなってしまいます。つまり、覚えたことが同じ条件のもとでした思い出せなくなるということです。

この現象は、学習心理学において「文脈依存記憶」として知られています。これは、私たちは情報を記憶し、後でその情報を思い出す際に、元の学習環境(文脈)に強く依存することを指します。

例えば、教室で特定の英文法の本を使って学習した場合、その環境や教材に強く結びついた記憶が形成されます。その後、異なる環境である図書館で模擬テストを受けると、学習した内容を思い出すのが難しくなることがあります。

昔、高校生だった頃、模擬試験を何度も学校で受験したにも関わらず、他会場でやったら成績が振るわないといか、そういう怪現象があったのを思い出しませんか?

もちろん、普段と違う環境なんで緊張したとかあるのですが、これは、学習時の環境(教室、使用した教材)と試験時の環境(図書館)が異なるため、覚えたことが思い出せなかったということなのです。

だから結構、希望大学の会場で受けてこいとか、言われてたんですね〜

「学び方」を学ぶ

そこで、今回、この「ぬるま湯」状態から脱却し、どんな状況でも活かせる知識を身につける方法について学びたいと思います。

それには、一般的な学習法とは異なる「ゲリラ的な思考」を習得する必要があります。

予測不可能な状況や新しい条件を積極的に取り入れ、柔軟かつ効果的な思考法を身につけ、どんな状況でも役立つ知識とスキルを身につけましょう!

3つのヒントを紹介していきます。

同じ場所でやるのではなく、異なる場所で

学習効果を高めるためには、同じ場所や同じ条件での学習に頼らないことが重要です。例えば、何かを学ぶ場合、教室だけでなく、家、図書館、カフェなど、さまざまな場所で勉強してみましょう。

学校の図書館で勉強した後に、マックやスタバで軽く復習してみるってのもありですね。そうすることで、どんな環境でも情報を思い出す耐性を身につけることができます。

ちなみに、これを結構真面目に書いているのは、こちらの論文

格言は、「同じ部屋で2回ではなく、2つの異なる部屋で」

Smith, S. M., Glenberg, A. M., & Bjork, R. A. (1978). Environmental context and human memory. Memory & Cognition, 6, 342–353.

同じトピックだけではなく、異なる概念で学ぶ

インターリーブ学習といわれるもので、関連する概念を交互に学習する方法です。

簡単に言うと、異なる視点で学ぼうということになります。

社会科でのインターリーブ練習

歴史を学ぶとしたら、異なる歴史的イベントや地理的概念を交互に学習することが有効だったりします。例えば、日本史の授業で幕末の政治変化を学んだ後、世界史の授業で同時期のヨーロッパの産業革命について学ぶといった方法です。このように異なるトピックを交互に扱うことで、生徒は各時代の出来事を単独の事実としてではなく、より広い歴史的文脈の中で理解することができます。

だから、変な話、東大受験で日本史・世界史をやってたりするとめちゃ大変なのですが、知識の両方がパワーアップするという現象を感じることがあります。もちろん、日本史or世界史+地理でも同じです。

ポイントは2つの科目を別々のものとして学ぶのでなく、概念や視点を関連付けながら学ってことが重要です。

あとは、細かい話ですが、1番目の場所を変えるの応用ですが、異なるテキストを使うことが重要です。テキストというより、図説かな。受験生あるあるでやってしまいがちなのが、歴史の資料集を学校で渡された瞬間、あまりの厚さとデカさに気が滅入り、ロッカーの肥やしにしてしまうことです。

しかし、教科書と図説を行き来しながら学ぶというのは認知科学的に非常に重要だったりするんです。

数学でのインターリーブ練習

数学では、異なる種類の問題を混在させて解くことが効果的です。例えば、中学校の代数の授業で一次方程式の問題を解いた後、幾何の問題に切り替えてみるという方法です。

これにより、生徒は単に公式を暗記するのではなく、異なる種類の問題に対応するための思考力を養うことができます。また、高校レベルでは、積分と微分の問題を交互に解くことで、それぞれの概念の違いと関連性を深く理解することができます。ベクトルの内積と統計の概念とか混ぜてやったらいいですね。

これ、pythonを使ってより、手を動かしなからやったりするとめちゃわかりやすいと思いますよ〜。GeoGebraとかも使いまくりたいですね。


時間をおいて反復練習する

学校の先生が必ずしたり顔で語るエビングハウスの忘却曲線。
あれがどこまで真実みを持つのか、今となっては全く不明ですが(いろいろなツッコミどころで)、とはいえ、反復学習というのは重要です。

以前に学習した内容を定期的に想起させる練習です。めちゃ地味。

学んだ内容を定期的に復習することで、長期記憶に定着させる方法です。わかっちゃいるんだけど、これが一番辛いんです。

だからこそ、Edtechの出番です。単純暗記はゲーム機能が効果的なんです。
クイズ、ゲーム、フラッシュカードなどを利用することで、この練習を楽しく、効果的に行うことができます。重要なのは、テストのためだけでなく、繰り返し復習することです。

Kahoot!
Quizlet
Anki

とか暗記を助けるサービスはいろいろあるので、みなさんも調べてみてくださいね。英語だったらmikanとかsantaがおすすめです。

成長に必要な「望ましい困難」

「望ましい困難」という学習科学の用語があります。

これはロバート・ビョークが1994年に発表した論文の中で紹介した用語で、挑戦することが長期的な学習の鍵であるという学習理論です。

間違ってはいけないのが、何でもかんでも難しくすればいいってものではありません。例えば、数学IAを習い始めているのにいきなり大学入試問題を解かせたり・・・

すべての困難が望ましいというわけではないです。ここ重要。

その難しさが望ましいものであるためには、今回紹介した3つがポイントだったりします。

つまり、学習内容を

1 異なる場所・異なるテキストで

2 違う視点から

3 繰り返し

学ぶということです。

兎跳びレベルの謎負荷、はちまきして気合い入れての練習のしすぎ、などは「望ましい困難」ではありません。

もうちょい専門的にいうと、認知的負荷と「望ましい困難」は一緒ではないのです。

その「望ましい困難」を提唱したビョーク先生のありがたいお言葉

自分自身の学習活動を管理する方法を学ぶことの重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。ますます複雑化し、急速に変化する世界において、また自分自身で学習することの重要性がますます高まっている中で、学習方法を学ぶことは究極のサバイバルツールである。

Bjork, E. L., & Bjork, R. A. (2011). Making things hard on yourself, but in a good way: Creating desirable difficulties to enhance learning. In M. A. Gernsbacher, R. W. Pew, L. M. Hough, & J. R. Pomerantz (Eds.), Psychology and the real world: Essays illustrating fundamental contributions to society (pp. 56–64). Worth Publishers.

さぁ、「ゲリラ的思考」を体得し、いついかなる時でも使える知識を学び続けましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?