ラブムー

ライター・ゲーム翻訳者・詩人。幼少期をスヌーピー、パックマン、エラリイ・クイーンに涵養…

ラブムー

ライター・ゲーム翻訳者・詩人。幼少期をスヌーピー、パックマン、エラリイ・クイーンに涵養される。大学では米文学を専攻しながら、古今東西の恋愛論を研究。2020年まで東京都で名曲喫茶を営む。ポップカルチャーと酒と猫をこよなく愛する。IGN Japan、Real Soundなどに寄稿中

最近の記事

「会いたくなったらいつでも」

それはずいぶん ふしぎな日でした 起きたら 黄色いお花が咲いていて わたしの名まえを呼んだのです 祖母の記憶 私事で恐縮だが、わたしの人生において、祖父母と呼べる人は母方の祖母1人だけだった(両祖父はわたしが生まれる前に亡くなっていた)。 その祖母には「ありがたい」という言葉では全く足りないくらい感謝している。わたしは比較的扱いづらい幼児だったと自覚しているが、小さな頃から祖母によく懐いていたし、可愛がってもらっていた。祖母は小さなわたしが「祖父母的存在」に求めるものを

    • 2023年個人Song of The Yearプレイリスト『KeyTail 2023(上)』 全曲解説

      ▲タイトル通りに少々気が早いのですが、2023年上半期にリリースされた曲で個人SOTY(ソング・オブ・ザ・イヤー)的プレイリストを編みました。 ロック、アンビエント、ゲーム音楽、エレクトロニカ、Lo-fi-Hiphopとジャンル横断して——昨今、そんな物言いもあまり聞かなくなりましたが——「2023年現在聴いている忘れ難い曲を残しておきたい」という気持ちで全10曲に厳選しました。ちなみに「Key Tail」というタイトルは「聴いている」と「かぎしっぽ(猫の)」をかけておりま

      • 『ミルキーウェイ・プリンス』3年越しの新訳版リリースについて(by翻訳者)

        あなたは2020年に発売された『ミルキーウェイ・プリンス』というイタリア生まれの恋愛ノベルゲームをご存知だろうか? まったく知らないかもしれない。タイトルは聞いたことがあるかもしれない。あるいはすでにプレイしていて、ほろ苦い印象を持たれているかもしれない。そういった方にはこのnoteを読んで頂き、本日(2023年7月19日)に再リリースされた『ミルキーウェイ・プリンス』新訳版をプレイして頂けるとすごくすごく嬉しいです。 銀河の王子との出会い3年前の寒い冬の晩、初めて『ミルキ

        • 『沈香学』 is killing me.

          ずっと真夜中でいいのに。とは—— メンヘラ美であり、 タフネスであり、 ブラボであり、 無顔であり、 不良であり、 刹那であり、 焦燥であり、 反抗であり、 犯行であり、 執着であり、 幽霊であり、 倦怠であり、 諦念であり、 空(くう)である。 そんなようなことを、新譜『沈香学(じんこうがく)』を聴いて思ったので、それについて書きます。 『沈香学』、その一撃最初の1曲「花一匁」からラスト曲「上辺の私自身なんだよ」まで、ひたすら驚き、ひたすら揺さぶられっぱなしだった。

        「会いたくなったらいつでも」

          『メディテラネア・インフェルノ』デモ版翻訳秘話

          はじめにこのたび、『Milky Way Prince』作者ロレンツォ・レダエリ氏の最新ビジュアルノベル『Mediterranea Inferno(メディテラネア・インフェルノ)』(Steam他)の翻訳を担当することになりました。パブリッシャー「Santa Ragione」から送られてきたプレスリリースは、不肖自分が翻訳していくつかのゲームメディアに送らせて頂いたのですが、迅速に紹介記事を仕上げてくださった、IGN Japan誌とAUTOMATON誌には本当に感謝です。 そう

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          NIKI『Nicole(ニコル)』を2022年アルバム・オブ・ザ・イヤー1位に選ぶ理由

          Text by ラブムー アルバム『Nicole(ニコル)』との出会いは偶然だった。 今年夏、Apple Musicの新作リリースアルバムをいつものように流し見ていたら、バストアップの女性のブレたジャケット画像が目に止まった。若干ホラー映画っぽいような……NIKI? ニキ?どこかで聞いたような……と思いつつ、無意識に1曲目を再生していた。 ふいに耳の中で一陣の風が吹き、あたたかいヴェールに包まれた気がした。静謐だが、心躍らせる音像が耳にこだましていく。それは川のように流れ

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          『イモータリティ』について書かれた、瞠目すべき記事たちを紹介します(Netflix版配信開始記念②)

          『イモータリティ』Netflix版(Andoloid/iOS)配信開始記念(前回はこちら)。第2回は傑作実写FMV(フルモーションビデオ)ゲームであると同時に、ある種の「映画」である(と筆者は考えている)本作について書かれた、様々な視点から書かれた素敵な記事たちを紹介していきたいと思う。 後述する1本の記事を除いて、読むのは本作をプレイする前でも後でもかまわない。ただ、これからプレイされる方で、ネタバレを「完全回避」して本作の概要と意義を知りたいという方は、まずはこの記事を

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          『イモータリティ』 、ネトフリを「捕食」する(Netflix版配信開始記念①)

          『イモータリティ』がネトフリ配信、その意義とは? 「Netflixゲーム」でサム・バーロウ(『Her Stroy』『Telling Lies』)による傑作FMVゲーム『イモータリティ』が配信開始となった。 Netflixゲームはまだリリースタイトルがそれほど多くなく、今年『ポインピー』(『Downwell』クリエイターもっぴん氏の新作)が独占リリースされて話題になった他、『ビフォア・ユア・アイズ』『スピリットフェアラー』などの良質なインディーゲームが移植されているものの、S

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          2021年・私的GOTY第1位『パラダイス・キラー』

          幼少期——具体的には『ポートピア連続殺人事件』や『オホーツクに消ゆ』といった、昭和の古典ADVを初めてプレイし、興奮冷めやらぬ時期だった——自分の内で、架空の、仮想の、理想的な推理ADVを頭の中で作り上げていたことがある。 その「理想的推理ADV」の際立った特徴は、 ●広大な世界があり(当時は「オープンワールド」という言葉/概念はなかった、もちろん) ●この世ならざる世界で物語が展開し(和風サスペンスでも西欧ハードボイルド的世界でもない、SF的にぶっ飛んだ世界を夢想して

          2021年・私的GOTY第1位『パラダイス・キラー』

          2021年・私的GOTY第2位『すみれの空』

          プレイ中は恥ずかしながら涙そうそう、Twitterでも我を忘れて推しまくった作品である。また発売直後、自分的には相当暑苦しい記事をブログにも書いている。 なので、このnoteでも批評的視点からは遠く遠く離れて、主観的に推しまくっていくほかなさそうだ。 さて、どうして自分はそこまで本作『すみれの空』を推しまくるのか?  「心動かされたから」に尽きる。 もし、あなたが筆者(ラブムーと申します)をご存知で、わたしに対してさほど好意も興味も持っていないとしても(あるいはめっち

          2021年・私的GOTY第2位『すみれの空』

          2021年・私的GOTY第3位 『ナビつき!つくってわかるはじめてゲームプログラミング』

          「ゲーム作りは面白いゲームに成り得るか?」そんな困難な命題に対して、任天堂が35年ぶり(ファミリーベーシック以来)にゲンブツを以て答え、それが「ばっちり面白い!」という意味でも、プログラミングやゲーム作りの敷居を、Nintendo Switchというファミリーコンピューター以来に普く普及した比類なきゲームハードで一気に下げたという意味でも、巨大な意義があったと思える本作を、2021年の私的GOTY第3位に置く。 しかし本作発表時、個人的な興味/関心は皆無であった。元々、自分

          2021年・私的GOTY第3位 『ナビつき!つくってわかるはじめてゲームプログラミング』

          2021年・私的GOTY第4位『A Short Hike』

          本作の初リリースは2019年なので、今年の私的GOTYに入れるのは少しばかり躊躇したのだけど、初プレイ時の衝撃は(コロナ渦中において、いっそう)特別なsomethingをまとっていたように思う。 そしてまた、本作も前回書いた『リーガルダンジョン』同様、自分がゲームに対して幼少期から求めているエレメンツがきわめて濃厚に、多量に含まれているように感じたから……どうしても入れておきたかったゲームである。 今年初めには海外のゲームアワードや国内レビューなどで軒並み「傑作」と評されて

          2021年・私的GOTY第4位『A Short Hike』

          2021年・私的GOTY第5位 『リーガルダンジョン』

          この数年、そして2021年においても「ゲーム」について通奏低音的に考えていたのは、「ゲームにおけるインタラクティブ性とは何か?」「ノベルゲームとデジタルノベルを分かつものは?」といった、いかにも聞き慣れたテーマ/主題への問いかけであった。 まあ、昔っからその手の面倒な与太話は、創作者/ゲーマー/レビュアー誰しも意識的に、あるいは無意識的に「一家言」持ってることだろう。「楽しけりゃいいじゃん」。それもまた、清々しく力強い言説である。 が、自分の内ではまだ実感(じつかん)とし

          2021年・私的GOTY第5位 『リーガルダンジョン』