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第313号『ゲームにおける演出論①』

ゲームソフトって何だと思いますか?

あ、いや、別にそんな哲学的な話でもなんでもなくてですね、単純になぜ人はゲームソフトを遊ぶと思いますか?

楽しいから?爽快感があるから?周りの友達もみんなやってるから?

気持ちいいとか、感動する、という感覚の話だけをすると「それ漫画やアニメや映画でも良くない?」ということになりますよね。

では、ゲームソフトならではの感覚って何なのでしょう?

それって私は「触れる」ことだと思うのです。

唯一、ゲームソフトだけがプレイヤーであるお客様が(文字通り)コントロールすることが出来る娯楽だと思うのです。

昔のゲームソフトってシューティングゲームやパズルゲームやアクションゲームが多くて、とにかく触って動かすことが面白い!という直感的なものがほとんどでした。

現在はどんどんゲーム機の性能も向上して表現できることも増えていって、重厚なドラマ体験とセットになっているものも少なくありません。(一方でバトロワ系や対戦ツール系の作品もあっていろんなジャンルが楽しめるようになりました)

今回はちょっと真面目に(いつも真面目ですが)ゲームソフトにおける『ドラマ体験と演出論』について語ってみたいと思います。

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ゲームソフトにおけるドラマ体験と演出論

きっと誰にだって『感動して忘れられない名作ゲーム』って存在しているのではないでしょうか。

それが『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』という人もいれば『ゼルダの伝説』『メタルギアソリッド』だという人もいらっしゃるでしょう。

特にRPGなどのジャンルだと物語体験の印象が強く残っていて「あの感動が忘れられない」という人も多いのではないでしょうか。

さて、ここで私の意見をひとつ述べさせていただくとですね。

『ストーリー=ゲームではない』ということです。誤解が無いように補足しますね。ここで言うストーリーとはテキストやシナリオのことであって、プレイヤーの体験では無いということです。(よく業界ではそれらの体験のことをナラティブと呼んだりしますが本筋と関係無いので触れないでおきますね)

しかし一方で私自身がゲーム制作においてこだわっていることのひとつに『ゲームプレイとドラマ体験の融合』というものがあります。(実はこの部分に物凄く大きなこだわりを持ってゲーム開発を続けています)

前述の通り、ゲームソフトが他の娯楽と決定的に大きく異なる点は『プレイヤーが直接的操作をもって介入すること』であることは不変なので、そこに一番こだわります。

よく弊社では『直感的な簡単操作で気持ちの良いド派手アニメアクション』を作ることをモットーとしています。

『少年漫画』や『超アニメ表現』なんて言い方をすることもありますが、過去に制作してきた『.hack』シリーズや『NARUTO-ナルト-』などでも、とにかくその触り心地の気持ちよさにこだわり追求してきました。

ただ、やはりそれだけではなく同時にこだわっているのが『ドラマ体験との融合』という部分になります。

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簡単に順番を説明すると(例えば『NARUTO-ナルト-』の場合だと)お客様に「絶対に体験したい!欲しい!遊びたい!」と思っていただく為の優先順位は以下の通りということになります。

①自分がナルトになってド派手な忍術や忍者アクションを体験したい!
いわずもがな螺旋丸や九尾の力を使って飛んだり跳ねたりして色んな忍術をブチかまして色んなキャラクターと闘いたい!それが実現出来るゲームソフト=システムを作ります。

②同時に原作が持つ濃厚なドラマ体験もやりたいに決まっている!
『NARUTO-ナルト-』という原作には素晴らしい物語がありますので、やっぱり対戦して闘うだけでなくその物語も体験したい!という夢(願望)を叶えるべく同時にそれも表現して制作します。

この次に『③長く楽しめるオンライン要素』という部分があるのですが、これも本筋とは関係が無いので今回は割愛しますね。

で、当然ながら今回の記事テーマで最も重要となるのが②の『ドラマ体験』ということになります。

ドラマ体験はアクションを最大化するためにある

「え、ドラマ体験って結局はストーリーってことでしょ?要するにシナリオなんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、正確には異なります。

あくまで『アクション>ドラマ体験』ということです。

極論ですが『お話を知りたいのであれば漫画原作を読むか、アニメを観ればいい』ということになりますので。ゲームにおける必然性はそこではありません。

繰り返しますが、あくまで『アクション>ドラマ体験』です。

『NARUTO-ナルト-』のゲームを購入したお客様が一番最初に体験したいことは「ナルトを直接操作して忍術を使って敵をブッ飛ばしたい」なので、それこそを何よりも優先的にプレイしていただけるように設計する必要があります。

ただし、同時に『ただ闘うだけでなくコントローラーを握る手により力が入るようにドラマ体験も融合させること』が重要となってくるのです。

我々はよく脚本のことを『ゲームシナリオ』や『ゲーム脚本』なんて言い方で、通常のシナリオテキストとは差別化を図った表現をすることが多いのですがそれには理由があります。

ゲームシナリオには通常のシナリオ制作とはまた違った作法が存在するためです。

それこそが『アクション>ドラマ体験』ということになります。

ドラマの為にシナリオが存在するのではなく、アクションをより際立たせて熱中できるようにするためにゲームシナリオが存在するのです。

長すぎず・説明不足になりすぎず・適度な量とタイミングでプレイヤーにコントローラーを預けてより没入感を高めるためのゲームシナリオなのです。

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書いていて自分で「誰に向けて書いてるんだ?」という気もしてきましたが、だんだんサイバーコネクトツーのスタッフ全員に共通認識を言語化するために書いているような気分になってきました。

ここから後半部分はより専門的な演出論の話になっていきますので、ウチのスタッフや同じ業界でゲームシナリオや演出に従事している方向けの記事になるかと思います。

あとは、どうしても勉強したい人や参考にしたい人・好奇心が押さえられないというブレイブをお持ちの方のみ読んでいただければと思います。

それでは張り切っていきましょう!

ゲームにおける演出論① ドラマ体験の融合

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