見出し画像

第257号『在宅勤務の先にある世界』

これはもちろん弊社に限った話では無く全国・全世界的に影響をもたらしたコロナウィルスの影響とその対策として多くの企業が在宅勤務を続けてきたその先の未来についての話です。

少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるようですがまだまだ予断を許さない状況は続いています。

今回はそんな状況を受けつつ今までの事と今後の取り組みについてどう考えているのかということをお話ししたいと思います。

【サイバーコネクトツーのこれまでの対策】

弊社は現在福岡本社&東京スタジオ&モントリオールスタジオと3拠点ありましてそれぞれで対応対策は少しずつ異なる所から始まりました。

まず最初に深刻化したのはモントリオールスタジオでした。

2020年3月の時点でほぼロックダウン状態となり街中のほとんどの企業が外出禁止となり在宅勤務に切り替えることになったため、サイバーコネクトツーのモントリオールスタジオも早々に全35名のスタッフが完全在宅勤務となりました。

続いて4月から福岡本社・東京スタジオと順に完全在宅勤務に切り替えていって会社には誰もいなくなりました。

(正確に言うと私や他の取締役数名や一部の経理総務スタッフが福岡本社・東京スタジオに1~2名だけ出社してその時間だけ郵便物の受け取りや発送処理などを行いました)

およそ3か月間の完全在宅勤務状態で少しでも前に進めるためにみんな自宅で作業を行いデータと心をオンラインで繋いで開発を続けました。

が、やはり開発効率は落ちました。

それまでの開発効率を100とすると人によってバラバラですが90・70・50・30・20といった実績でした。

それでも完全にゼロじゃない、少しでも前に進めよう!とみんなで踏ん張りながらやってきたのが実状です。

【意外と在宅でもやっていけるかも】

もちろんゲーム開発は役割が非常に細かく多岐にわたりますので人それぞれ意見もバラバラでしたが中にはこんな声も上がりました。

「意外と在宅は快適かも」

「ストレスが激減した気がする」

「通勤しなくていいのが助かる」

はい、在宅勤務が始まって間もないころは本当にこういった意見が目立ちました。会社の運営を全体的に見て逐一判断して大号令を出している立場である役員会のメンバーも「なんか意外とイケそうですね」と一安心しました。

しかしそれも束の間……1か月・2か月・3か月と在宅勤務を続けていてもスタッフの「意外と快適」という意見とは裏腹に一向に開発効率は上がりません。

ぶっちゃけた話どんどん開発は遅れ続けています。(もちろんその間もこれまでと変わらずにお給料を支払い続けています)

本当に人によっては開発効率は以前と変わらず(在宅ながらも)100%の成果をあげてくれていたスタッフもいましたが、やはりそれは一部の人間の話です。

全体で見ると確実に開発効率は落ちていて遅れは顕著だったのです。

【1秒で済んでいた確認に半日かかる】

ローカルでスタッフそれぞれがやっている作業自体はそんなにスピードもクオリティも変化はありませんでしたが、やはり一番影響が大きかったのがそれぞれの確認作業です。

「コレってこんな感じでいいですか?」

「あ、いや、そうじゃない、ソコはもっとこんな感じで」

会社で同じ席にいて仕事をしていた時はこうした細かい確認が1秒で済んでいたはずのものがとにかく時間がかかるようになりました。

画面をスクリーンショット撮ってそれに赤を入れて「画像①に赤を入れました。確認の上修整してください」と部下に指示して、それを確認した部下がその画像と指示を理解した上で「これってこういう意味ですか?」と質問してそれに対して上長が「いいえ、そういう意味ではありません、こういう意味です」……とこうしたやりとりが繰り返されたのです。

それに会社で指示を受ける時には横にいるスタッフも耳では話を聞いていて「なるほど、そういう方針なのね、俺も気を付けよう」と得られる細かな情報も多かったのですが、オンラインだと基本的に一人の上長が一人の部下に指示をしています。

別のスタッフがまた「チェックお願いします」と送ってきたデータを見た上長が「うお、またこのパターンかよ、こないだアイツに伝えた内容をまたコイツにも伝え直すのかよ」と思うことがちょこちょこと発生しました。

実に細かな事ですがこうした小さなやりとりと少しずつのロスがどんどんと開発効率を悪化させていったのです。

【それでも在宅勤務がいいと言う】

「けどやっぱり在宅勤務は通勤時間などのストレスが無くていいです」

「できればもう少し在宅勤務を続けたいです」

今でも一部のスタッフはこう言います。まぁそう言うってことは本心からそう思っているということなのでしょう。

正直な話、在宅でも作業が出来るスタッフはいると思います。

そういう人はそれでもいいのかな、と思います。

ただ、そういうスタッフは作業を行うことに特化するということで正社員から業務委託=フリーランスに切り替えましょう!

そうすれば健全というかわかりやすいですね。

それが今回のコロナ騒動の中で3拠点合計240名のスタッフの完全在宅勤務を実施してみて「意外とイケるかも」と思った後に、私が出した答えです。

【ゲーム開発はスタジオワーク】

結局のところ私はゲームソフトを開発するという行為はひとりひとりがただの『作業』を行っているのではなく、みんながそれぞれのパートごとに見せ合い話し合い考えて相談して決定してまた確認してを繰り返して少しずつ全体像を作っていくというものであり、それが大前提である以上はやはりスタジオワークが最強=必須・必然なんだと思っています。

まとめると以下のようになります。

①「在宅は快適だ」と言いつつもなんだかんだ開発効率は落ちている
本当にこれで開発効率が落ちていなければ新しいスタイルの働き方も検討できたかもしれませんが結局のところ落ちてしまっています。「いいえ、私は落ちてません」と数人から言われても会社全体で落ちている以上は少数派に合わせるわけにはいきません。

②育成・評価は誰がやる?
会社にいる間に行っていることは自分の作業だけではありません。上司や部下とのやりとり中で細かな気づきがあってそれが教育に繋がったりリーダーシップを発揮して多くのスタッフに影響を与えることだってあります。ただアップされたデータのクオリティだけを見るのではなくその過程も会社では周りを含めてみんなが見ていて相対的に評価も行っています。

③機材を頻繁に送り合えない
在宅に切り替えた際にそれぞれのワークステーションをタクシーに乗せて自宅まで持ち帰ってもらいました。(東京スタジオのスタッフの機材は私がレンタカーで丸2日かけて配達しました)戻すときも同様の手間がかかります。場合によっては曜日を決めて「この日は在宅でもOK!」とすることも可能性としては無くもないと一瞬思いましたがやはり運搬の手間と費用を考えるとまるで割に合わないですね。

番外編:自宅だと集中できない
これは一部のスタッフから開発効率が落ちた要因として報告をもらったのですが「家にいると日中は子供がとにかく絡んで来て仕事にならない早く出社したい・正直家にいるとすぐにベッドにごろんと寝転がったり漫画を読んだりと集中できない・私は弱い人間です・やはり出社することで仕事のオンオフをしっかりと切り替えたい」とこうした声も多かったです。

ざっくり要約すると「在宅の方が快適です」と言っているほとんどのスタッフが作業的に仕事をしている人間であまり人を教育・評価する立場にもいなくて自分一人で完結しているタイプの人間であるということです。

なら、やっぱり業務委託でいいと思います。

会社というのはみんなが同じ場所に集まって仕事をするという行為に意味と意義を見出すことが出来る人間がそれこそ力を合わせて大きな成果をあげるための場所だと思うのです。

また「在宅がいい!」と言っているのは全体で見ても少数派でほとんどのスタッフは「早く元の状態で仕事して遅れを取り戻さないと・お客様が楽しみに待っていてくれているのに」という使命感を強く持ってくれています。

*****

サイバーコネクトツーでは2020年6月の段階で少しずつ福岡本社と東京スタジオでシフト勤務体制で出社を段階的に再開していく予定です。

7月からは福岡本社・東京スタジオそれぞれが出社率90%以上になります。

ただモントリオールスタジオはまだ完全在宅勤務が継続されます。(日本と違ってカナダはまだまだ感染拡大が収束化していません)

3拠点完全復活にはほど遠い状態ではありますがまたスタッフと力を合わせて前に向かって進めていこうと思います。

さて後半部分はもう少しだけ本音の部分で【コロナ禍を受けてこれからの仕事の仕方】について語っていこうと思います。

【コロナ禍を受けてこれからの仕事の仕方】

ここから先は

2,817字
この記事のみ ¥ 300

良かったらサポートいただけると嬉しいです。創作の励みになります。