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笑い方を忘れてしまいそうな人へ



"笑ってないなあ"


そう思ったのは病院の帰り、田んぼを両脇に抱えながら自転車のペダルを漕いでいた時だ。

ぽんと現れたイオンモールに立ち寄った。
好きだったブランドの服屋に入るけれど、グッとくるものはなかった。
大好きな雑貨屋さんに入るけれど、やっぱりグッとこない。
ユニクロに入った。ちょっといいなと思うパンツがあった。今は夏だけれど、あっちに陳列してあるジャケットと着れば超かっこいいぞ。
僕は試着がとても長い。服を着て、鏡とにらめっこして、本当に欲しいか、自分の手持ちと合うか、永遠に悩んでいる。

この日も悩んだ。ユニクロといえどジャケットとパンツだと出費は大きい。出費と物欲の天秤を何分も個室の中で行ったり来たりさせていると、糸が切れたような、突然砕けたような感覚がして、なんかどうでもよくなっちゃった。
あれだけ悩んでいたのに、そそくさと自分の服を着て、ジャケットとパンツを棚に戻した。

いろんな店を見た。
でも、全て『どうでもいい』で片付けてしまい、結局何も買わずイオンモールを後にした。


・・・


僕ん家にはWi-Fiがない。こんな状況下でYouTubeを見るのは自殺行為なのだけれど、なんとなくYouTubeをつけた。
大好きなYouTuberの動画。だけど、面白くない。
すぐに試聴を辞めて携帯を枕のほうに投げ捨てると、跳ね返って床に落ちてしまった。
拾うのも億劫で、ご飯を作ってる間はずっとほったらかしにしてたと思う。


ふと大学時代を思い出す。
昼飯はいつものメンツで食べた。勉強して、サークルに行って。サークル終わりは決まってフードファイトしていた気がする。
休日には彼女と会って、泊まりに来たり、泊まりに行ったり。たくさん出かけた。

僕は暗いヤツだけど、よく笑う人だった気がする。
大学に行ってて、笑わない日なんてほとんどなかった。就活の時期はそんな日多かったけど。
毎日穏やかに過ごしていた。しんどい日もあったけど、楽しい日の方が多かった。


・・・


鏡の前に立って、ニィと笑ってみる。
気持ち悪かった。元々自分の笑顔が好きではないのだが、コンプレックスとかそんなレベルの話じゃない。
誰なんだろうこの人ってぐらい、不自然で不格好な『笑顔』だった。
好きじゃない笑顔だったけれど、見慣れていたから、まだ良かった。
しばらく笑ってなかったからか、自分の笑顔が『見慣れないもの』になってしまったようだ。

今度は試しに、ほんの少しだけ口角を上げてみた。こちらの方がなんとなくしっくりきていた。ほっぺたの筋肉も、これぐらいの可動域がしっくりくるみたい。
見事なまでの、愛想笑いの仮面。しっかりと顔に嵌っているらしい。

心から笑うって、どんなふうだったかな。
顔の筋肉だけが辛いんじゃなくて、胸の奥まで辛かった気がする。ただし決して不快な辛さではない。抑えたいけど抑えられない暖かな何かが、口から勝手に溢れ出して、顔を歪ませていくのだ。

好きなものを好きと感じる。そして、心の奥から笑顔を浮かべる。

こんな当たり前のことすら、わからなくなってしまっている。きっと、僕だけじゃないだろう。


・・・


あなたは今、心の奥から笑えていますか。
笑えるチャンスがありますか。

あるなら、大事にしてください。
失くさないようしっかり抱きしめていてください。

チャンス、ありませんか?
ないなら、僕と一緒に探しませんか。落ちたコンタクトを探すみたいに。
お互い、笑わせてあげることはできないかもしれませんが、笑おうと一緒に努力することは出来るかもしれません。

当たり前なんてないんだなあと思った。
自分の命も含めて、当たり前なんてものは簡単に手のひらから零れ落ちてしまうのだ。

当たり前ほど、一度失くしたら取り戻すのが難しいものはないと思う。また一からカケラを拾い上げて、自分の中に建て直していかなければいけない。
もう一度、ただの暇つぶしから、『好き』にしてあげなくちゃならないのだ。




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