岸田昌幸

23年間、会社経営をしてきましたが、莫大な金額の持ち逃げ詐欺に遭い、全てを失いました。…

岸田昌幸

23年間、会社経営をしてきましたが、莫大な金額の持ち逃げ詐欺に遭い、全てを失いました。 セレブ生活から一転、ホームレス生活に転落。 血の滲む努力をして、そこから這い上がり、今はその経験を活かして中小企業支援コンサルタントとして活動しています。

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どん底ホームレス社長が見た闇と光

#創作大賞2022 第1章 どん底 経営者からホームレスへ  “塵も積もれば山となる”という諺があります。小さいことの積み重ねが最良の結果を残す場合もあれば、時として最悪の結果となる場合もあります。どちらにしても結果に表れるのには、やはり原因があるのです。一夜にして成功することもどん底に陥ることは決してありません。私の場合、いろいろな積み重ねが最悪の結果を招いたのです。 会社経営をしていて羽振りのよい生活を送っていた私ですが、莫大な金額の持ち逃げ詐欺に

    • ㉒「どん底ホームレス社長が見た闇と光」(最終回)

      心に余裕を  心に余裕がなければ、人の話を素直に聞くことは難しいものです。職場などでの人間関係を難しくしてしまう原因の一つでもあります。    心に余裕がなくなると、不安なことを考えてしまいます。不安のほとんどは考え過ぎ、取り越し苦労です。起こりもしないことを必死に考えてしまうのです。 しかし、心に余裕がなければ、そうした極端な方向へと走ります。  心に余裕がないと、どうなるか?まず、人が寄ってきません。暗い気持ちは表情に出てしまいます。表情にも余裕がなくなるわけです。人

      • ㉑「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

        第10章 言霊 本当の友情  これまで山あり谷ありの苦難の道を越えてきました。失敗の繰り返しであり、神経をすり減らすことばかりでした。まるで、小船で荒海に出るような苦難の道程。私が苦難に陥ると、去っていった人もいます。気落ちして弱っている自分に甘い言葉を掛けてきた人もいます。今まで私が築いてきた人脈を横取りしようとした人もいます。  そんな中で、私なりに本当の友情とは何か?と考えたりもしました。困っている時に助けてくれるのが本当の友情と言いますが、果たしてそれだけでしょ

        • ⑳「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          義妹夫婦の生活費  時を同じくして、前妻の妹のご主人が仕事中に事故に遭い大怪我で、仕事ができなくなってしまいました。個人事業でしたので、それで収入が途絶えてしまったのです。妹は小さな子ども2人を預けて仕事に出ましたが、それだけでは生活費の足しぐらいにしかなりません。親子4人で生活する費用、病院費用等、全く足りなかったのです。  そこで、前妻から「妹夫婦の生活費を毎月、援助してもらえないか?」と頼まれました。両親の家の借入金を返済している私としては断ることもできず、毎月20

        どん底ホームレス社長が見た闇と光

          ⑲「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          第9章 反骨心 親の借金  親子の絆は何があっても切れないものです。私がまだ学生だった頃のことです。こんな出来事がありました。父親が会社を定年退職したのを機に、今までの家を売って、奈良県に新しい家を建てることになりました。退職金を頭金にし、残りは銀行から借り入れ、まだ働ける父親が毎月、返済するという計画でした。当初は計画通りにいっていましたが、ある時、父親が通勤途中に駅の階段から転げ落ちて骨折し、働けなくなってしまったのです。  父親の仕事は月払い契約のアルバイト契約で

          ⑲「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑱「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          永遠の別れ  人間関係においても前向きに捉えられるようになれた頃、市役所から一通の通知が届きました。封筒を開けると「相続税支払い通知書」が一枚入っていました。私は、何のことか理解できずに市役所に電話をしたのです。  「相続税支払い通知書が届いたのですが、どういうことでしょうか?」。すると職員は「お父様が亡くなられたので長男にあたる人に送らせていただきました」。私は両親が元気に生きていると思っていましたので、もう一度、聞き直しました。返ってきた答えは同じものでした。  涙

          ⑱「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑰「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          第8章 定まった方向性と虚脱感 責任感が負担に  心の病というのは、真面目で頑張り過ぎる人がかかりやすいと言われています。ホームレス以前、会社を経営していた時の私もそうでした。誰よりも早く出社し、誰よりも遅く退社する毎日。社長であれば、遅く出社し、早く退社したっていいのですが、私の経営理念がそれを許しませんでした。社長が率先して動かないと社員は付いてこないという理念があったからです。社員は、社長の行動をよく見ているものです。社長というのは責任感が強いことが必要ですが、それ

          ⑰「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑯「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          少しずつ向上させる  そんなやる気のない生活が一年程続きました。しかし、私は、生活をする為に、仕事をしないといけません。セーブしながらと思いつつ、ついつい頑張ってしまうものです。その頃が、治療の中でも一番つらかったでしょうか。やる気がなく睡魔に襲われる状態の中で、頑張らないといけないのですから。いつになればこの状態から脱せられるのかという不安と焦りが交錯していました。  やっと精神状態も安定し出して、治療も次の段階に入ります。まずは、今までの薬の量を減らし、気持ちを上向き

          ⑯「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑮「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          第7章 寄り添う大切さ ホームレスにならずに済んでいたかも  持ち逃げ詐欺で全てを失い、今度は、株券詐欺で財産の半分を失った私ですが、その時に寄り添う相手がいれば、ここまで失うものが多くなかったでしょう。私は、身近に寄り添う相手がいなくて、一人で考え、行動していました。当然、心の健康も失われていきます。ホームレスにならずに済んでいたかもしれません。  ホームレス当初、何故、自分だけがという思いが強くありました。人を憎むこともありました。しかし、それは、自分自身が持って生

          ⑮「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑭「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          第6章 終わりは次へ進むためのステップ さらなる試練  ホームレスから立ち直ってからは、朝から夜中まで休み無しで人の何倍も働きました。ほぼ365日休み無しに働いていました。それもこれもまた兵庫県西宮市苦楽園に戻りたいという強い気持ちが強かったからです。8年後ぐらいには生活にも余裕が出来、貯金も人並み以上に出来るようになりました。  そんな時です。友人から一本の電話が掛かってきます。「友人の会社が資金調達に困っているのだけど話しを聞いてもらえないか?」と。「直接、会って聞

          ⑭「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑬「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          5日間、食べるものもなく  しかし、食費を浮かした生活も長くは続きません。仕事も軌道に乗るまでは時間が掛かり、収入も安定しません。ついに食費も底をついてしまいました。数日間は、納豆、もずくで飢えを凌ぎましたが1週間ほどすると、それも底をつきます。  ついに全ての食品が目の前から消えてしまったのです。それから5日間、ほぼ水分だけで耐えましたが、体は身中からフラフラです。栄養失調の孤独死も覚悟したほどです。そんな時、東京の友人から1本の電話が。「元気にしているか?」と電話の向

          ⑬「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑫「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          第5章 正直な生き方 今、死んだら後悔するよ 頂点からホームレスまで一気に落ちると、生きている意味が分からなくなってしまいます。そんな時、自分に問い掛けてみました。今までの人生に意味があったのか?と。出た答えは、自分の宿命を転換しなければ、この苦しみは付いて回るということです。自分の幸不幸を決めるのは、環境でも周りの人間でもありません。自分の心です。自分の心を変えたおかげで、どんな悪い環境であったとしても、飛躍のバネと捉えていくことができたのです。 今、苦しみの真っ只中

          ⑫「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑪「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          危険な会社に一人で乗り込む 次の案件は同じく大阪市で小さな鉄鋼所を経営していたE社長。D社長と同じ頃に、お手伝いさせていただいた案件です。これは、事件になってもおかしくないような事例でした。 E社長は仕事柄、土木や建築関係の人脈が豊富な人でした。しかしF興業という看板を上げている会社に、E社長の会社が借金の肩に乗っ取られようとしていたのです。その借金額は、約500万円。F興業という看板を上げていても、裏では違法な金貸しをしている、元ヤクザの組に関係していた人物が社長です。

          ⑪「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑩「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          第4章 悪徳業者と対決 C社長が行方不明 やっとチームが出来上がり、C社長とこれからの解決策に向けての打ち合わせです。過去5年間の帳簿類等を確認しながら、再生させるための手順も確認しました。しかし、何かがおかしい。帳簿類の数字が合いません。帳簿通りなら業績はもっと順調なはずなのです。「C社長、何か隠していませんか? 正直に言っていただけないと、こちらとしても協力しかねます」。するとC社長は、気まずそうに、引き出しから別の帳簿を出してきたのです。 私たちは、その帳簿に目を

          ⑩「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑨「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ノンバンクからの督促に追われて そんな心温かい銀行員のBさんがいると思えば、毎日、督促の電話をしてくるノンバンクもあります。私が保証人になっている以上仕方がないことですが、毎日の督促電話に疲れ果てた時期もありました。裁判所で債権放棄に応じなかったノンバンクは、5社ぐらいでしょうか。電話に出るのも嫌になります。 例えば、会話内容はこんな感じです。 「返済はいつになったらしていただけるでしょうか?」 「ホームレスですので、いつかは言えない状況です」 「そうしたら、いつ頃、ホー

          ⑨「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          ⑧「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

          第3章 ホームレス生活からの脱出 図書館で猛勉強   ホームレス生活で夜のベンチで一人夜空を眺めている時、このまま命を絶とうかと思ったことが何度かありました。実際、公園の木の枝にひもを掛けて首を吊ろうとしたこともあります。しかし、私は何も悪いことをしていないのに何で死なないといけないのかという疑問が湧いてきたのです。 (このまま命を絶ったら私の人生にはマイナスの足跡しか残らないじゃないか。この世に生を受けた限り、プラスの足跡を残したい!) そう考えるようになったのです。

          ⑧「どん底ホームレス社長が見た闇と光」