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⑮「どん底ホームレス社長が見た闇と光」

第7章 寄り添う大切さ

ホームレスにならずに済んでいたかも

 持ち逃げ詐欺で全てを失い、今度は、株券詐欺で財産の半分を失った私ですが、その時に寄り添う相手がいれば、ここまで失うものが多くなかったでしょう。私は、身近に寄り添う相手がいなくて、一人で考え、行動していました。当然、心の健康も失われていきます。ホームレスにならずに済んでいたかもしれません。

 ホームレス当初、何故、自分だけがという思いが強くありました。人を憎むこともありました。しかし、それは、自分自身が持って生まれた“すぐに人を信用する”というお人好しの性格が悪い面で出たのでしょう。「そんな性格なのに、よく今まで騙されずに会社経営してこられたな」と陰口をたたく人もいました。そりゃ、悔しかったですよ。

 「人の不幸は蜜の味」という諺もあります。しかし、本当に助けを必要としている人に、寄り添うのが本来の人間らしさではないでしょうか。ホームレス時代の空腹時、食べ物を分けてくれたホームレス仲間の有り難さを痛感します。他人であっても仲間意識を持っているのですから。

 当然、このような状況下では、心も病んでいきます。自分が自分でないような心の状態でした。眠れない、食べられない、フラフラする、一瞬、意識が無くなる・・・。自分でも訳が分からず、病院に行ったところ、極度のパニック障害とうつ病と診断されました。医師から「次回は身内の人と一緒に来てください」と言われましたが、私には身内がいません。それを先生に告げると、「一人では回復しない病気なので困ったなぁ」との返事でした。私は返す言葉がありませんでした。

 医師に今までの経過を正直に全て話すと、こう言われたのです。「今まで生きていてくれてありがとう。普通、これだけのことがあったら自分で命を絶っていますから」。その時、今まで頑張って来た自分に涙が溢れました。


治療の始まり

 自分の心の病の病名が分かって、悲しかった反面、ホッとした一面もありました。治す為に自分に向き合うことが出来るのですから。長い治療の始まりです。当時、一番つらかったことは、睡眠時、詐欺に遭った頃の様子が夢でフラッシュバックすることでした。詐欺に遭って右往左往している様子、金融機関からの連日の督促状で悩んでいる様子、発注先への支払いが出来なくて電話での督促、裁判所からの呼び出し、妻子に追い出された時の様子・・・等、そんな日々が続き、苦しくて飛び起きていました。手は握り締め、目からは涙が。徐々にフラッシュバックは治まって来ましたが、今でも一年に何回かはフラッシュッバックで飛び起きることがあります。人の脳というのは繊細なのですね。

 医師から「時間は掛かるけど、ゆっくりと治していきましょう」と言われた時、心の中で「すぐに完治する薬があれば、少々のお金でも払う」と叫んだものです。それほど、つらいものなのです。

私が通院した心療内科では、最初にテストがあります。今の心の状態を見る為に一週間掛けて、いろいろなテストがありました。積み木であったり、箱庭を作ったり、知恵の輪を解いたり、数字の筆記テストであったり、毎日のように行われます。その結果が出る日、何を言われるか戦々恐々でしたが、医師に言われたことは、「岸田さん、あなたのIQは非常に高いです。一日三時間、勉強すれば東大に合格できるレベルですよ」「しかし、病状は非常に悪いです」。喜べばいいのか悲しめばいいのか。

 しかし、これ以上悪くなることはないのですから、気持ちが楽になりました。
まず処方された薬は、自殺とかを考えられないようにするために、何もやる気を無くす薬でした。この薬は頭がボォーとするだけでなく、一日中眠気に陥ります。一日中、家でダラリダラリとする生活が続きます。やる気が起こらないのですからね。サボっているのではなく、そういう薬なのだから仕方がないと思うようにしました。

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