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戯言感想帖

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購入した本をなんとなく紹介したり、読んだ本の感想を自由気ままに書いたりしています。漫画も含みます。
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#熟成下書き

夢野久作『瓶詰地獄』を読んで

夢野久作『瓶詰地獄』を読んで

何の前情報もなしに『瓶詰地獄』と目にして、ホルマリン漬けの贓物を想像していたのは昨年の3月頃。そんな妄想を勝手にしていたものだから、実際の内容との差に驚くことになった。

しかしたしかに「地獄」はそこにあった。

以下、簡単なあらすじ。

遭難し、孤島に漂着した兄(11歳)と妹(7歳)。
それでも食べるものにも困らず、身体を侵すような害虫もいない。
その島は幼い2人にとっては天国だった。ときに自然

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漫画『僕の妻は感情がない』に癒されて

漫画『僕の妻は感情がない』に癒されて

最近『僕の妻は感情がない』という漫画に癒されている。

なんとこの「妻」、ロボットである。

ひとり暮らし3年目。
仕事が忙しく家事をする暇がないタクマは、新たに家電を購入した。

それが家事ロボット(料理特化型)であり、のちに彼の「妻」となるミーナちゃんとの出会いであった。

小柄で、ちょっとつり目気味の澄んだ大きな瞳が印象的。両耳の上でみつあみをねじったお団子がよく似合う。
ロボット+ロリ+母

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漫画版『東京喰種』を語りたい①(心理描写を中心に)

漫画版『東京喰種』を語りたい①(心理描写を中心に)

書きたい欲求がムクムクとしてきたので、いつぞやぶりの漫画感想文。

好きなシーンやキャラについて興が乗るままに自由に書きたいと思っていたけど、めっっっちゃ長くなりそうなので何回かに投稿を分けようと思う|ω・)

まんまとハマる私今回語りたいのは漫画版『東京喰種』『東京喰種:re』。
久しぶりに推しキャラまでできてしまった。
うっかりフィギュアが欲しいかもしれない、とまで思ってしまったのは『DEAT

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綾辻行人『再生』を読んで(一部ネタバレあり)

綾辻行人『再生』を読んで(一部ネタバレあり)

「ホラー小説」というジャンルの響きからは連想しにくいような、なんだか儚く切ない読後感が私のなかに生まれた。

この切なさの正体は何だろう?

異様な光景から物語は始まる。

揺り椅子に行儀よく坐る、白いドレスを着た17歳年下の新妻には頭部がなかった。それは比喩表現でもなんでもなく。

最愛の妻・由伊の首をのこぎりで切り落としておきながら、夫・宇城は待ちわびていた。妻のその身体から「新しい首が生えて

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田山花袋『少女病』を読んで

田山花袋『少女病』を読んで

「すっかり夢中になること」のたとえとして「うれしさに魂天外を飛ぶ」という表現があるらしい。

それほどまでに夢中になれる対象があることをうらやましく感じる反面、生きている動物の、生命の原動力とされる「魂」がぽーんとどこかに行ってしまうのは比喩表現とは言え、いささか恐怖を覚える。

さて、作中の主人公の男は表題の通り「少女」に夢中であり、彼にとって通勤時というのは少女を愛でる至福の時間であった。

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