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人生学習帳

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BD(双極性障害)、BPD(境界性パーソナリティ障害)、愛着関連、自己愛関連の記事をまとめています。
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#探究学習がすき

「分離-個体化の困難」から考えるBPDの心理的特徴―マスターソンの理論を参考に―

「分離-個体化の困難」から考えるBPDの心理的特徴―マスターソンの理論を参考に―

マスターソンの理論がようやくまとまりをもって理解できそうな気がしてきた。噛み砕いて説明できるか少し試してみたい。

彼は「分離-個体化の困難」という点から境界性パーソナリティ障害(BPD)の心理的特徴をとらえるために、小児科医・マーラーの分離・個体化論を発展させ、持論を展開した。

子どもの発達過程以下はマスターソンが述べた、子どもの発達過程を簡略化したものである。

マスターソンはBPD患者が経

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太宰治を事例としたBPD関連論文を読んで(ざっくり解説と感想)

太宰治を事例としたBPD関連論文を読んで(ざっくり解説と感想)

太宰治を事例にしたBPD関連論文が、読みものとして面白かった。

論文のURLはこちら。

太宰を事例にし、BPD当事者の心理状態・意識・経験に焦点を当てようとしたこの論文。

人間像や病像を把握できるよう、分析の題材として選ばれたのが太宰の綴方(作文)や書簡(手紙)だからか堅苦しさは皆無。かなり楽しく読めた。

以下、ざっくり解説。

ざっくり解説

上記題材を繰り返し精読し、全体の文脈と照らし

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自分の欲求の扱いと、心の分割について―コフートの理論を参考に―

自分の欲求の扱いと、心の分割について―コフートの理論を参考に―

自分の欲求(意見や願望)の扱いが下手、である。

基本的に欲求の存在を見失いがちなのに、突然欲求が暴走することもある。

なぜ私はこんなに欲求の扱いが下手なのか。
そして欲求にまつわる「心の構造」はどうなっているのか。

そのあたりをコフートの理論を参考にしながら考えてみたいと思う。

欲求の扱いが下手な人間の末路

幼い頃から自分にウソをつき続けた。

本当は欲しいものを「欲しくない。全然いらな

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現実と虚構―創作物を楽しむために―

現実と虚構―創作物を楽しむために―

パーソナリティの問題を何かしら抱える人は「現実検討能力」が低い……といろんな本で目にしたことがある。

しかし実際にはその言葉の指し示す内容は漠然としか分からず「そういうものなんだな」としか思えていなかった。

そんななか「ああ、こういうことだったのか」と納得できる具体例を見つけた気がしたので、書き残しておきたい。

現実性の確信とは

人間は現実世界を生きている。
一方で劇や小説あるいは漫画はフ

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感情不安定性と情動調節について

感情不安定性と情動調節について

「双極Ⅱ型障害と境界性パーソナリティ障害の診断に関する差異」という論文を読んだ。

参考URLはこちら。

ときに誤診されやすいBDⅡとBPDについて約20の比較項目が用意され、その相違点あるいは共通点が解説されていた。

具体的には……

遺伝性、幼少期の虐待経験や親との関係、抑うつ症状の出方、「ハイ」なときの様子、情動調節、衝動性、神経画像診断、バイオリズム、性格特性、対人関係、自己同一性など

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