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不定期更新です😅 宜しくお願いします✨ 現在、『リック・グレン書記ー夢 Ⅰ ー』を順次掲載中です📚 『リック・グレン書記』  第1部:夢 Ⅰ ~執筆中~  第2部:夢 Ⅱ  第3部:旅  第4部:晩年  第5部:エピローグ

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  • リック・グレン書記ー第1部 夢Ⅰ-

    リック・グレンの書記をまとめたものになります。 第1部 夢Ⅰを日刊を目標に随時掲載しています。

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夢Ⅰ(1)

♥ ☘ ♠ ♦  とある国の晴れ渡った夜の静けさのなか、鳴り虫の声だけが涼し気に届いてくる。  窓を背に初老の男が書斎机に向かって書き物をしている。  部屋は、入口と窓を挟んだ位置に書斎机を配置したシンプルなもので、壁一面に大小さまざまな本が並んでいる。  書斎机の上は綺麗に整理されていて、男の向かって左手奥のかどに地球儀が置かれている。  初老の男は、ときおり地球儀に向かって何か語りかけ、また、納得したり微笑みかけたりしていた。  男の名は、リック・グレンと言い。

    • 夢Ⅰ(40)

      第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(39) ☆主な登場人物☆ Ⅵ  眩い閃光を感じた。  リックが、かつて用いていた「感覚」をもとに表現するなら、それは閃光と言う例えが正しいように思われた。一瞬の出来事のはずなのだが、まるで一点に止まっている、粒のような光の、一粒一粒の動きを感じ取ることが出来たし。同時に面になり色彩を運んでいる様子も伝わってくる。  リックの末端をくすぐる振動が、閃光の尋常ならざる力強さを物語っている。  「イナビカリ カモ シレナイ」それら光の粒の

      • 夢Ⅰ(39)

        第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(38) ☆主な登場人物☆ Ж ※ Ж ☆  二人の間をさわさわと風が流れ、景色を揺らす。まるで切り取られるように、白く輪郭を溶かされた風景は、今では、ときに触れることが出来るほど近くなり。緩慢な光の流れによるものか。ふとすると、リックの一部を切り取っていく。  恐れや、痛みはなかった。  ゆらゆらと風に漂う、人差し指と薬指を見つめながら「僕は、待っているのかもしれない。」という言葉が、唐突にくっきりと体に馴染んだ。それは、リック自身

        • 夢Ⅰ(38)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(37) ☆主な登場人物☆ Ⅵ  足を止め、リックは羽織の襟をしっかりと立て直した。  傾斜は黙々と続き、思考は遠い過去に溶けてしまっていた。  両脇を連なる黒々とした山脈を思わせる、どしりとそそり立つ根に挟まれ、ヌエ達一行は、根と根の間に出来た谷のような地形をひたすらに登っている。ゆっくりと、高度を上げるごとに、大気に含まれる冷気が、その濃度を増していく。  周囲には、孤立した低木や葉の小さな植物が点々と生えるのみで。  雲か霧か

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        夢Ⅰ(1)

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        • リック・グレン書記ー第1部 夢Ⅰ-
          40本

        記事

          夢(37)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(36) ☆主な登場人物☆ Λ V V Λ  川魚の表皮を火の穂が、パチパチパチと滑っていく。  木陰に腰を落ち着けて、四人が囲む即席の炉に並んだ6匹の魚の、小ぶりの1匹は、リックの記念すべき連日の弓の鍛錬の賜物である。    数十万回と繰り返し。  繰り返した動作は、次第に掌に、腕に、身体に馴染み、そして、筋となり体表に刷り込まれ、小ぶりではあるが1匹の魚を捉えたのだった。  《赤色》が練習を強制することはなく。  彼は本当に

          夢(37)

          【更新】《小説挿絵》「とある国の晴れ渡る静かな夜」

          【更新】《小説挿絵》「とある国の晴れ渡る静かな夜」

          夢Ⅰ(36)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(35) ☆主な登場人物☆ Λ V Λ Λ  森に入ってから、先を急ぐはずの旅の速度は明らかに遅くなっていた。  リックの歩幅に合わせたことも理由の一つではあったが、ヌエ達からも焦りや、背後から迫る者を警戒する様な緊張感は感じられず、要所々々でしっかりと休憩を取り、一日の終わりには長い休息を挟んだ。  休憩の折には、彼らは自慢の弓さばきで野鳥を獲り。澄んだ空が、ちらちらと映り込む渓流に差し掛かると、川魚を取ることで、日々の食卓を潤

          夢Ⅰ(36)

          夢Ⅰ(35)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(34) ☆主な登場人物☆ Ν Ν V Λ  リックの前を赤い羽織を靡かせて《赤色》が、後ろには《青色》。  《赤色》の前、一行の先頭を《茶色》が進んでいた。  「起点の石柱」を後にして、「果て無き森」に踏み込み。ひと月分の夜を過ごしたが、森の中で起こる出来事は、日増しに難解さを増し、リックは森に対して理解しようとすること、予測することをすでに諦めていて、進むごとに起こること、出会う物を素直に受け取めることに力を注いだ。  また、《水

          夢Ⅰ(35)

          夢Ⅰ(34)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(33) ☆主な登場人物☆ Ν Ν V Λ  一行を振り向いた《水色》の左手には、大事そうに十字型の石が握られていた。はっきりと十字の型をしたその石の放つ、強く青い光は、指の間から漏れ出ると、まるで液体か、または生き物のように大部屋の闇の中で、自由に、その姿を変容させた。  それは、決して綺麗な光景と呼べるものではなく。一つの姿にとどまることなく、くねくねと姿を変える光に、リックは、背筋を内側からなぞられる様な悪寒を覚えた。  なので

          夢Ⅰ(34)

          夢Ⅰ(33)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(32) ☆主な登場人物☆ Ν Ν Λ Ν  リックの肩に、そっと添えられた《茶色》の掌から、彼の心の痛みが忍び込んできた。それは、ザクリ。ザクリと、何度も何度も、繰り返し刺されているようで、確かに《茶色》が感じている痛みなのだと、リックには、確信を持つことが出来た。  その事実を否定出来ないからなのか。  話を終えても、彼はついに一度も石柱から視線を離さなかった。  「大丈夫。心配いらない。」  彼の言葉が、リックの脳裏に張り付い

          夢Ⅰ(33)

          夢Ⅰ(32)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(31) ☆主な登場人物☆ Ⅴ  月が出ていた。  月は、大地と太陽を繋ぐ大きな三角の一端を担い、半身になりながら、くっきりと太陽を見つめている。  まるで、夢から覚めるように草原に降り立つと、一筋の風が、背の低い草々を撫でながら、リックの頬や髪を涼しく流れていった。  眼前にそびえる「起点の石柱」は、夜空を背にして、白く浮かび上がり、以前集落で目にした石柱とは比べ物にならない大きさで天に向けてそそり立っている。  あの日。  ソ

          夢Ⅰ(32)

          夢Ⅰ(31)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(30) ☆主な登場人物☆ ◤ ◖ ◥ ◗ 《茶色》は、ソリの入り口で、リックとしっかりと向き合うと、雪原を抜けるまでの日課をリックに伝えた。彼の声音は、普段よりも少し強く、いつもと変わらず穏やかな表情の目には、強い光を宿していた。 《茶色》の目に宿っている光は、あの夜、炎に飲まれていく森を前にして、父親と祖父そして兄が宿していた強い光だった。 その光が、今、リックの瞳の奥に向けられていた。     強さを増す風は、彼方から重い

          夢Ⅰ(31)

          夢Ⅰ(30)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(29) ☆主な登場人物☆ ◤ ◣ ◥ ◗ 「地図」に貼り付けられたヌエの羽織りの一部達は、青白く光る筋を宿していて、それぞれが独立した記号のように見えた。 《茶色》の、僅かに開かれた目は、目の前の「地図」を眺めているのか。焦点は、どこか別の空間を見つめているように、リックには感じていた。「雪が。」「こんなに。白く。」「冷たいと。知らなかった。」《茶色》は、リック側の手で、足元の雪を大きく優しく握りしめ、独り言のようにそう言った。「

          夢Ⅰ(30)

          夢Ⅰ(29)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(28) ☆主な登場人物☆ ◢ ◤ ◣ ◥ ソリを覆う布を不規則に撫でる風が、聴覚を刺激する。 頭の下に入れた右腕を少しずらすと、ソリの床に敷かれた毛皮が、手の甲に柔らかく触れた。   「力の民」を追うどころか、ソリは、「力の民」から逃れるために前進していた。脇にある短剣に秘めた思いは、今でも、衰えてはいなかったが、いつからか、リックは「力の民」のことを憎しみを込め「奴ら」と呼ぶことが出来なくなっていた。 目的を持たず、完全に一人

          夢Ⅰ(29)

          夢Ⅰ(28)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(27) ☆主な登場人物☆ ◣ ◢ ◤ ◣ ヌエの当主達が、5人。雪の上に綺麗なサークルを描いて並んでいる。 ヌエ達は、まるで自然に溶け込もうとするように。ゆったりとした動きで、息を吸い。そして、ゆっくりと送り出し。また吸い込んだ。   光を浴びた、ヌエ達の豊かな毛並みが、サラサラと風に靡き。 青く澄んだ空には、鋭く光る太陽が、ぽかりと浮かぶ。   ソリの隣を流れていた大河は、姿を消していた。いったい、どこへ行ってしまったの

          夢Ⅰ(28)

          夢Ⅰ(27)

          第1話:夢Ⅰ(1)はこちら ⇦夢Ⅰ(26) ☆主な登場人物☆ ◢ ❖ ❖ ◢ 後部に掛けられた布を開けて《赤色》が休憩のためにソリに上がってきた。深く息を吸い込み呼吸を整え、積み荷の隙間に身を落ち着かせる様子から、疲れは見て取れない。   曇天の中、4人のヌエに引かれたソリは、大河沿いを上流へと順調に歩みを進めていた。 ここ数日、布の隙間から見える空は、黒く淀んでいて。太陽の位置はわからなくなっているが、ヌエ達の規則的な休憩の周期からして、おそらく正午ごろだろう