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イタリア吸血鬼のミュージカルを作曲(そして「マクベス」の話など)

こんにちは。
葬儀のオルケスタ「墓の魚 PEZ DE TUMBA」
作曲家です♪

今回、またまた
「墓の魚」
新作動画をアップしましたので、
お知らせさせていただきます♪

今回は、
イタリアの吸血鬼の物語を
コミカルに歌った
ミュージカル調の作品で、
「あきらめなさいなオルラムンデ夫人」
という歌曲になります。

■オルラムンデ夫人って誰?

オルラムンデ夫人
「墓の魚」オリキャラではありません。
綴りはドイツ語のOrlamündeであり、
14世紀ドイツ
クニグンデ・フォン・オルラムンデ伯爵夫人
(Kunigunde von Orlamünde)

という実在の人物です。

オルラムンデ城の白い幽霊

この人物には、
[恋する男と添い遂げる為に
自分の子供達を殺した]

という迷信伝説が残っており、
その殺人鬼としての迷信
この曲の題材に使われています。

しかし、
この伝説は事実ではない・・】
というのが歴史家達の見解です。
夫人には、
そもそも子供がいなかった

とされているからです。

「ホーエンツォレルン家の死の使者」(オルラムンデ伝説の一つ)

また、今回のこの作品・・
オルラムンデ夫人は、
曲のタイトルにまでなっていながら、
曲中で、ほとんど登場しません(笑)

ただ、吸血鬼達・・
つまり夜の魔物達
「外法なやり方で幸せを求めても、
私達は決して幸せになんかなれやしない。
どんな強引な手段を使って、
まともな幸せを得ようとしても、
心を持たない我々は
幸せになどなれやしないんだ」

という悲しみを
伝説の夫人に対して
呟いている一節があるだけです。

肝心なのは、
それを語っているのが
地獄の魔物達である事で、
[魂が暗い世界に堕ちている]者達が、
それでも何処かに理性良心を持ち、
悲しい諦めのこもったユーモア(皮肉)を
神にぶつけている・・

という事です。

■シェイクスピアの
「マクベス」から生まれた作品

このシーンは、作曲家である私が
シェイクスピア「マクベス」から
強い影響を受けています。

マクベスが欲望の為に
手を血に染めた時
「もうお前に穏やかな眠りはないぞ! 
お前は眠りを殺した!」

と、どこからか
声が聞こえてくるシーンがあります。

シェイクスピアの[マクベス]の挿絵

それはマクベス
罪の意識で聴いた幻聴
ともとれますが、
同時に、
彼の魂が暗闇に堕ちた瞬間、
魑魅魍魎の這い回る
卑しい罪の世界の声を聴いた

ともとれる表現なのですよね。

そして
「マクベス」にも
「あきらめなさいなオルラムンデ夫人」にも、
[最初から恵まれている者が
労せずに手に入る幸せも、
ある者達にとっては、
手を血に染めなければ手に入らないもので、
そうして身を穢して手に入れたとしても、
それは腐り果てたものだった・・
というのなら、
結局、暗闇に産まれた者は、
どうして真昼の神を愛せようか?]

という悲しいメッセージが
込められている気がするのです。

■この曲は音楽的には?

ジャズでもクラシックでもない奇妙な
シャンソン・フュネライユ独特の
ピアノ和声が特徴です。

少し解説すると、
ピアノの一つの主題
(「和声の魂」
!!)が
変化、展開しながら
何度も繰り返される
(でも決して同じ繰り返しはない)
のが面白いわけです。

最後に天使達
([古楽的な霊]とされる)が登場する
キリスト教的な浄化の大楽節
があるのですが
(皆さん!!
このキリスト教的な浄化の部
が出て来るのも
シャンソン・フュネライユの特徴なのです!!)
この時ですら、
繰り返される同じ主題
根底に存在しています。

さらに、
あまり目立ちませんが、
この短い浄化の大楽節は、
難易度の高いピアノと、
パイプオルガン
フーガ的な駆け引きにより成り立っていて、
足鍵盤を使った
オルガンならではの技法は、
演奏の場所奏者を限定してしまう
厄介なものになっています(笑)

吸血鬼カルポッチャ・カポと、魔女ガボー・ピサ・ガルネーレ

威張り屋の癖に、夜が怖い
イタリアの吸血鬼
カルポッチャ・カポと、
その周囲の吸血鬼達
(カー・デイ・セニ以外は、
皆イタリアの吸血鬼)は
「墓の魚」に何度も登場する
オリキャラ(ストックキャラクター)ですが、
彼らや、
カルポッチャ・カポの使い魔である
卵菌(Pythium insidiosum)達の物語は、
また「墓の魚」小説の方で
綴っていこうと思っていますので、
そちらも、ぜひ
よろしくお願いいたします。

卵菌(Pythium insidiosum)

以下、歌詞を掲載します。

◆◆◆

「魔女のエチュード 
~宗教幻想を題材にした六つの詩曲~」より
第5番
あきらめなさいなオルラムンデ夫人 
〜一つの主題による展開〜

作詞作曲・黒実 音子

1
【吸血鬼カルポッチャ・カポ】
俺様はよこしまな妖術使、
闇夜の遊び人、
欲望でこの夜の墓場を支配する。

貴族、ユダヤ人、ジプシー、
ぬふふ、みんな俺のお客さ。
神に邪魔させない!!
おお、薄汚れたワルツ!!

【吸血鬼達】
彼は見栄っ張りで、欲張りなうぬぼれ屋。
臆病者で、いつもお日さまにびくびく。
闇が恐くて眠れないクセに、
闇を知らない、
それこそが罪なのでしょう。

【吸血鬼カルポッチャ・カポ】
ああ、素晴らしき俺様の
素晴らしきワルツ!!
踊れ!!我が同胞達!!
ヒキガエル共のダンス!!
希代の色男!!カルポッチャ・カポさ!!
妖しき妖術使!!
夜の支配者!!
さぁ、魔女共よ踊れ!!


【吸血鬼達】
悲しみも、孤独も、忘れて踊れ!!
キャニドンの娘は祝杯を。
痛みも傷もやがて笑える。
闇を受け入れ、
新たな拍子受け入れよ。

2
【吸血鬼カルポッチャ・カポ】
俺様の声は新月の響き!!
どんなお固い女も落とすぜ。
優しさなんてとうに捨てた!!
あるのは心のかけらだけ!!
失ったはるか昔の
時間のかけらだけ・・

【吸血鬼達】
時々、墓場の中でふと思い出す。
華やいでた昔の栄光の時を・・
だけど、想いもやがて消え失せて、
夜と闇に飲まれていくのでしょう。

【吸血鬼カルポッチャ・カポ】
ああ、聞くも涙の
孤独な俺様のワルツ!!
カビ臭いワインで乾杯を!!
ムカデ、トカゲ、イモリ、カエル、
俺達の仲間!!
ああ、すばらしき人生!!
美しき我が恋人達に乾杯を!!

【吸血鬼達】
悲しみも、孤独も、
忘れて踊れ。
キャニドンの娘は祝杯を。
痛みも傷もやがて笑える。
闇を受け入れ、
新たな拍子受け入れよ。

【吸血鬼カルポッチャ・カポ】
ああ、素晴らしき俺様の
素晴らしきワルツ!!
踊れ!!我が同胞達!!
ヒキガエル共のダンス!!
希代の色男!!
カルポッチャ・カポさ!!
妖しき妖術使!!
夜の支配者!!
さぁ、魔女共よ踊れ!!

【天使達(SPIRITO DELLA MUSICA ANTICA)】
ああ、それでも憧れるのは楽園。
ここは望んでいた夢の国。
誰もが永遠に眠り、
もう闇を恐れて
泣かなくていいのよ・・

【全員】
あきらめなさいなオルラムンデ夫人。
子供達を殺して、財を得ても、
私達はきっと
幸せにはなれなかったのだから・・・

◆◆◆


良かったら、ぜひ、
動画を視聴してみて下さいね♪

という訳で、
本日は「墓の魚」
新作動画のご紹介でした♪

こんな作品を日本で制作していく
私や、
葬送のオルケスタ
「墓の魚 PEZ DE TUMBA」

これからも
よろしくお願いいたします~。



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