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ビジネスモデルを見抜く力が不足していたのです。

ところで、富士登山に向かうまでの道中でとある出来事があった。

富士山の麓の河口湖IC付近には、富士登山目的で遠方から車で来る人たちのための駐車場がある。我々も例に漏れず、レンタカーをその駐車場に置かせてもらい、吉田ルート5合目を目指すことにしていた。

この駐車場からは吉田ルート5合目までの直通バスが30分に1本くらいのペースで出ていて、それを使う予定だったのだが、その乗車口に向かって歩いている途中、タクシードライバーに話しかけられた。

「あなたたち、何人組?よかったらタクシー使いませんか?お安くしますよ」

タクシーの営業だ。ここから5合目に行くためには、直通バスに乗るよりも若干割高だが、確かにタクシーを使う方法もあることに気づかされた。

しかしながら、こういうシチュエーションにおいては、いわゆる「白タク」が脳裏に浮かんでしまうところがある。

「白タク」とは要するに、その地域に不慣れな観光客などを狙って不当な料金をふっかけるぼったくりタクシーのことだ。

実際に私も、研究室のゼミ合宿で東南アジアに赴いたとき、空港から出て乗り継ぎの移動のためにタクシー乗り場周辺を歩いた道中で、多数のタクシードライバーに声をかけられ、それらを全て無視して足早に通り過ぎた経験がある。

彼らのほとんどは正規のタクシーだと信じたいところだが、変なドライバーに騙されてしまっては大変であるから、注意が必要であることはよく言われることだ。

そんなことを考えてはいたものの、我々は7人組のパーティで、タクシーも運転手を除いてちょうど7人乗れるサイズだったので、バスを待って大人数一緒に移動するよりも、身内だけでタクシーで移動する方が多少割高でもマシか、と思い、乗車することにした。

運転手は、移動する車内でタネ明かしをしてきた。

「このタクシーは、さっきの駐車場から5合目の間だけを行き来するタクシーなんです。上から降りてくる人の中にはタクシーを使う人がたくさんいるんだけど、行きにタクシーを使う人はなかなかいないんですよ。でも、中身空っぽでまた5合目に戻るのはもったいないでしょ?だから、なるべく人を乗せて運びたいんですよ。」

そう言われて私は、あぁ、私はまだまだだなと思った。

このタクシーからすれば、麓の駐車場から5合目までの移動でなるべく多くの人を乗せて売り上げを上げることが最も合理的だ。

しかし、タクシーのニーズは、富士山を降りてきたばかりの5合目でのニーズの方が大きく、これから登りに行く人の多い駐車場でのニーズの方が小さい。だから、ある程度安くしてでも人を乗せて5合目に帰った方が、売り上げが上がるのだ。

そんな簡単な仕組みにも気づかずに白タクを疑ってしまうとは、私のビジネスモデルを見抜く力が圧倒的に不足していたと反省した。

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