Take-21:映画『逆転のトライアングル(2022)』は面白かったのか?
【映画のキャッチコピー】
●『狂った時代を、笑い飛ばせ』
●『現代の超絶セレブを乗せた豪華客船が無人島に漂着。そこで頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群のトイレの清掃婦だった』
【作品の舞台】
現代:無人島のロケ地はギリシャのエヴィア島。
[原題]
『Triangle of Sadness』
直訳で「哀しみの三角形」
【上映時間】2時間 27分
Amazonプライム・U-NEXT・Hulu・TELASA・YouTubeにて現在配信中
さて皆様、良き映画ライフをお過ごしでしょうか? N市の野良猫ペイザンヌでございます。
今回は『逆転のトライアングル』。
こちらはデンマークの映画でございます。
「男と女、デート代はどちらが出すか論争」が以前ありましたが、まさに冒頭はまさにそこから始まりまして、その会話、やりとりなど、なかなか興味深かったですな。
公開してしばらく経つので「違う意味のグロさ」というか、中盤のオエオエが嫌だった……なんて書いてらっしゃる方も多く見ますね。下の画像にコラを施されたのを見たことある──なんて人も多いかとw
ストーリー展開は〈序章〉-〈船〉-〈島〉が〈2-4-4〉くらいの比率で描かれガチ・エンタメというよりは、どこか外国文学ぽい匂いがしたかな、と。少なくとも無人島でドロドロの展開だけではありませんてした。
資本家やインフルエンサーなども「凄い嫌なヤツ」というより「金持っててチョイめんどくさい」連中くらいな描かれ方なんで「あ〜なんか近場にいそう……」という妙なリアリティがありましたw
なので「逆転してザマミロ」というカタルシス開放的な話のみではなかった気もします。
逆にいえばもっとエンタメでドロドロを期待してた人はやや物足りなかったのでは? なんてことも少し思ったり……どうなんだろ?
普通、この手の話だと、さっさと沈没して無人島メインの話にしますしね。
まあその分集約されたラストは衝撃……というか、「あの登場人物」の鬼気迫る顔はなかなか目に焼き付いて今でも離れないくらいです。
類似の映画では『東京島(2010)』や『流されて…(1974)』など思い出す感じですね。
最近で言えば先日公開されたばかりの『コンクリート・ユートピア(2022)』を観たときなどにも共通のテーマを少し感じましたね。あちらも倒壊した高級住宅マンションの金持ち住民が、なぜか崩れなかった一般家庭マンションに助けを求めて立場が逆転する場面などがありました。
ボクはこの『逆転のトライアングル』を観ながらぼんやり思い浮かべてました。
例えば身近な会社やバイトなんかでも時々こうしたヒエラルキーの逆転現象が、起こったりするよな……なんてことを。
セクハラしたとかそんな理由で転落する人もいれば、気づかぬうちにいつの間にか反転していることもあります……「あれ?」てな感じで。
それまでオラオラしてた人が一気に転落したり、それまではさほど目立たなかった人がリーダーシップを発揮したりw
ラストのオチなどは高橋留美子先生の『めぞん一刻』の中で〈番外編〉として無人島に漂着する回があるけど、あの回をモロに思い出しちゃった人も多いのでは、とw(小学館コミックス第六巻収録)
インタビューによると、監督は「資本としての容姿」と「通貨としての美」というポイントを押したかったらしいですね。
ひと昔前の無人島モノだと男が食い物や腕力をエサに女性を手懐けようとする話が多かった気がしますが、今回翻弄されるのがイケメン男子というのも現代ぽくて面白いですな。
こちらは2022年カンヌ国際映画祭てパルムドールを、そして2023年アカデミー賞の方でも作品賞・監督賞・脚本賞とノミネートされましたが、そちらは今回、惜しくも無冠となってしまいました。
監督はリューベン・オストルンド。
過去には『フレンチアルプスで起きたこと(2014)』などを撮っております。
こちらは妻子を置きざりにして一目散に雪崩から逃げ出してしまった一家の父親が家族からの信頼を取り戻そうとする姿を描いた作品でした。
またその三年後の『ザ・スクエア/思いやりの聖域(2017)』では現代美術館のキュレーターで周囲から尊敬されている男の身に降り掛かる不条理な悲喜劇を描いており、状況による人間の転落や心理を描くことが芯にある監督さんなのかもしれませんね。
ちなみに本作『逆転のトライアングル』でヤヤというヒロインを演じたチャールビ・ディーンは、2020年8月に32歳の若さで亡くなっており、この作品が遺作となっておりますね。本作のラストがラストだっただけに……ねえ、なんとも嫌な気分というのか。合掌であります。
では皆様、また次回に!
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