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イーロン・マスクのように「ワクワクする未来図」を描くための思考法

人を動かすのは、ロジックではなく「感情」です。

僕は5年ほど会社を経営していますが、やっぱり「人はロジックだけじゃ動かない」と感じる瞬間はたくさんあります。

なにより僕自身「こうすればうまくいくな」と頭で理解はしていても、心から情熱を燃やせなければ、その事業を続けることはできませんでした。

自分や周囲の人を動かすのは、やっぱり「感情のこもったビジョン」なんです。ロジックはもちろん大切ですが、ロジカルすぎるビジョンはあんまりおもしろくない。

おもしろくないものには、人が集まらず、盛り上がらない。盛り上がらないと、誰も本気でそれを目指さなくなるので、けっきょく成功しないんです。

ビジネスは一定レベルを超えると、ロジックや理論よりも「感情」のほうが、はるかに重要度が高くなります。

ロジカルな意思決定は、ある程度のデータと基準さえあれば、誰がやってもほとんど同じになっていくからです。それに、ロジカルで正しいだけの意思決定なら、人間よりもAIのほうが、正確にすばやくできるようになってきていますよね。

そうなったとき最後に残るのは、ロジックでは決められない、究極のところ「どっちでもいい」もの。

つまり「こうしたい」という、個人の意思や感情だと思うのです。

ロジックが通用しない意思決定。実際、これができるかどうかで、経営やビジネスの質は大きく変わってきています。

「構想力」によってお金が集まる時代

これまでは、しっかり売上を立てて利益を出すことが、企業の価値につながっていました。利益が上がると、株式相場も上がっていた。

でも、たとえばイーロン・マスクが経営するテスラ社って、売上や利益がずば抜けて高いわけではないんです。販売台数ではゼネラル・モーターズ(GM)やフォードのほうがずっと多い。

しかし時価総額では、テスラは圧倒的にトップを走っています

1兆1284億2495万ドル(139兆3271億9278万円)ー。3月28日時点でのテスラの時価総額だ。

これは日本企業の時価総額上位10社の総額(約138兆円、3月28日時点)に匹敵する数字だ。米国の2大自動車メーカーの時価総額はGMが642億5260万ドル(7兆9333億0114万円、同日)、フォードが655億6970万ドル(8兆0959億2401万円、同日)であり、時価総額ではテスラの足元にも及ばない。

出典:テスラの牙城を崩せるか? GM、フォードなど米自動車のEV戦略とは

売上よりも、構想力で評価されている。「未来への期待感」が、そのまま企業価値になっているんです。

ワクワク感や期待値によって、企業価値が跳ね上がる。それによってお金が入ってきて、そのお金を事業に投資することで、ビジョンを実現していく。

「売上を立ててから、それを再投資していく」という従来のビジネスとは、逆の順番でお金が動くようになっているんですよね。

ワクワクする未来を描く力が、そのまま富を生み出す時代。

このようにビジネス的な側面から見ても「構想力」や「妄想力」はかなり重要になってきているんです。

イーロン・マスクの頭の中

ではイーロン・マスクの構想力は、なにがそんなにすごいのか? 彼の思考法を解説した記事がおもしろかったのでご紹介します。

彼は大きなゴールを叶えるとき、いきなりそこを目指すことはしないそうです。

まずは「持続可能な事業」を作ってキャッシュを生み、それによって産業構造を変える。この「2段階のイノベーション」を経ることで、大きなゴールに辿り着けるのです。

たとえば彼が経営する「SpaceX」なら、最終ゴールは「火星に行く」ことです。

そのためには中間ステップとして、宇宙航空のコストを大幅に下げる必要があります。そうしないと、そもそも業態として成り立たないからです。

この課題を解決するために、彼はまず「宇宙にモノを運ぶ事業」を始めました。

宇宙航空の事業で利益が出れば、SpaceXだけでなく他の会社も、物流業界やロケット製造に参入してくるようになります。人も会社もお金も、どんどん宇宙産業に集まってくる。

するといつのまにか、元々やりたかった「火星に行く」というゴールを達成しやすい産業構造になっているわけです。

業界構造を変えるレバーを引くと、いつしか産業のイノベーションが起こり、大きなゴールに到達できる。この考え方は宇宙産業だけでなく、さまざまな分野に応用できますよね。

イーロン・マスクが評価されているのは「壮大なビジョンを掲げているから」というだけではありません。

ビジョンを実現するための「地図」の解像度がとても高い。だからこそたくさんの人の心を動かすし、期待値も高まっていくのだと思います。

アポロ月面着陸を成功させた、ケネディのビジョン

ビジョンによって人を動かし、大きなゴールを実現する。

その具体例として「アポロ月面着陸」を成功させるために、当時のケネディ大統領が掲げたビジョンをご紹介します。

1961年、人類が宇宙に降り立つなんてまだ絵空事のようだった時代に、彼はアポロ計画を発表しました。

そして「我々は10年以内に月に行く。簡単だからやるのではない。難しいことだからあえてやるのだ」と言ったのです。

そんなことを言われたら、みんなワクワクしますよね。実際に、これを聞いた当時の人は小学生から大企業のエリートまで、誰もが計画実行の支持にまわったそうです。

実現が難しいビジョンのほうが、逆にうまくいくというのはあると思います。難しいことのほうがやりがいがあるので、優秀な人が集まりやすいんですよね。期待値が高まるから、お金も集まります。

そして前人未到の月面着陸は、スタートから10年もしないうちに実現したのです。

ロジックには限界がある

「火星に行こうぜ!」とか「月、行こうぜ! 難しいからやるんだ!」なんて、どう考えてもロジックで導き出せる意思決定ではないですよね。

ロジックには、どうしても限界があるのです。

「こうやれば堅く儲かるだろう」ではなく「これをしたいんだ!」と、感情をベースにした意思決定をする。それができるかどうかで、会社やプロジェクトの伸びしろはかなり変わると思います。

でも、そんなことを急にやろうとしても難しいです。普通に生きていると、たいていは理論やロジックのほうが重要視されますから。株主や社員へのロジカルな説明も求められます。

そんな環境でも「感情」をベースにした意思決定をするには、普段からちゃんと準備をしておかないといけません

では、どんな準備をすればいいのか?

ここからは、僕が事業構想を考えるときに実際にやっている思考の方法をいくつかご紹介していきます。

未来の描き方①自分を知る

まず最初にやるのは「自分の特性や感性を深く知ること」です。

究極のところ、ビジョンってなんでもいいわけです。なんでもいいことを決めるには、自分自身の「哲学」や「思想」を磨いていく必要があります。

「自分はこれが大切だ」「これが好きで、これは嫌だ」という、自分なりの判断軸を突き詰めることで、感情による意思決定はやりやすくなるのです。

・どんなことに、心からワクワクするか?
・これまでの人生で、長く行動が続いているものは何か?
・小さい頃からのコンプレックスや、そこから生まれた個性は何か?

このような問いを投げかけてみると、自分の特性が見えてきます。

自分なりの判断軸がないと、みんなが「いいよね」と言っていることが、そのまま自分にとっても「いいもの」になってしまいます。

みんなと一緒がダメというわけではありません。でも、それだと差別化はできないし、他者を巻き込むほどの熱も生まれない。

「いい・悪い」のコントロール権を自分で握ることが、ビジョンを描くための最初の一歩です。

未来の描き方②心のブレーキを外す

さらに大切なのが「心のブレーキを外す」ことです。

人は無意識のうちに、自分の想像力や行動にストッパーをかけています。「自分にそんなことできるわけない」「こんなこと考えても仕方ない」と。

イーロンマスクもケネディも同じ人間です。本当は「彼らにできて、自分はできない」なんてことはないはず。でも、僕らは過去の経験や常識から「自分にはここまでしか無理だ」と思い込んでしまっているんですよね。

もちろん、スケールの大きいことをやりたいかどうかは自分次第です。ただ、この無意識のストッパーを外さないと「自分が本当にやりたいこと」に気づくことはできません。

ストッパーを外すためにも、僕は「いったんめちゃくちゃ視座を高める」ことを意識しています。できる・できないに関わらず「自分が考えられる1番でかいこと」を考えてみるんです。

僕のいるBLUEPRINTという会社では、ふだん「業界特化型SaaS」の立ち上げを中心におこなっています。僕個人はいま、ディープテック分野での事業立ち上げを模索中です。

目の前の仕事としてはそんな感じなのですが、いまの会社の構想を立てるときは、最終的に「宇宙の青写真」まで考えました。

産業DXを起点に、アップデートできる範囲をどんどん拡張していくイメージ

いったん「一番でかいこと」を考えると、そのあとのアイデアも「これは無理だな」とは感じなくなります。「どうやったらできるかな?」という発想になるんです。

自分で自分を押さえつけている変な要因は、先に排除しておく。そうすると思考が自由になって「本当にやりたいこと」にも気づきやすくなります。

未来の描き方③自然の原理と調和する

ある程度やりたいことが見えてきたら、次はそのビジョンを「検証」していきます。

まず最初に確認するのは、ビジョンが「自然の原理」と調和しているかどうか? です。

「いきなり何を言い出すんだ」と思われるかもしれません。でも、京セラの稲森さんやパナソニックの松下幸之助さんなど、大きな事業を成し遂げた経営者は揃って「自然との調和」を大切にしているんですよね。

© KYOCERA Corporation

経営理念というものは、“何が正しいか”という、一つの人生観、社会観、世界観に深く根ざしたものでなくてはならないだろう。それは、社会の理法、自然の摂理にかなったものでなくてはならない。 (松下幸之助『実践経営哲学』より)

ちょっと抽象的ですが、簡単にいうと「その目標を達成することが、この世界をよりよいものにするかどうか?」ということだと思います。

世の中の流れや自然の法則に反しているものは、基本的にうまくいきません。「よりよい世界をつくるために、自分はどうしたいか?」という、最低限のフィルターは持っておくといいでしょう。

未来の描き方④リサーチする

ここまでをクリアしたら、ビジョンをより具体化していきます。

具体化するには、まず「実現したい未来の解像度を高める」こと。そのうえで「現状とのギャップを明らかにする」必要があります。

リクルートの出木場社長は、投資判断をする基準としてこの「未来の解像度」を重視しているそうです。この記事の中で話していた内容がおもしろかったので、ご紹介します。

投資判断を下す際、必ず経営者に聞く質問があるんです。それは「あなたのサービスがつくるのは、どんな世界なのか」という質問。質問を重ねていくと、その経営者が本当に細部に至るまでビジネスを考えているのかがはっきり分かるんです。

細部までビジネスを設計できている人が語る「そのサービスがつくる世界」は、くっきりとその姿が見えてくる。反面、考え抜けていない経営者にどれだけ質問を重ねても、絵が見えて来ないんです。

詳細な絵が描けるレベルまで、ビジネスの設計を作り込む。これは、構想に人を巻き込むうえでもすごく大切なことだと思います。

ビジョンを具体化するためには、リサーチが必要です。

僕がいつも初見の分野でやっているリサーチの流れは、以下のような感じ。

1.キーワードを検索して、ヒットしたウェブサイトを10ページ分ぐらいざっと見る
2.関連する本を5冊ぐらいざっと読む
3.得た知識をもとに「こういうことかな?」と自分なりに仮説を立てる
4.専門家に一次情報を聞きにいく(ビザスクなどを活用)

アイデアは「情報の組み合わせ」によって生まれます。ですので、リサーチしながら「自分がワクワクする組み合わせ」を考えていく。それが、事業のタネになっていきます。

あと、リサーチには注意すべき落とし穴があります。

それは「情報を集めるだけで満足してしまう」ことです。僕もやりがちなのですが、リサーチって無限に時間を溶かせてしまうんですよね。

調べるだけではなんの意味もありません。「仕事っぽいこと」をしてるだけ。調べた情報からインサイトを生み出し、事業アイデアをつくるまでがリサーチだというのは忘れないようにしたいです。

僕が事業構想を立てるときに活用しているサイトもご紹介します。参考になればうれしいです!

もうひとつ注意したいのが、みんなと同じ情報源だけだと、オリジナルのアイデアは生まれないということ。「ビジネス以外の分野の情報」をいかに取り入れられるかも、大切なポイントです。

僕の場合は、仏教や哲学、量子力学や金融史などについても普段からインプットしています。もちろん「このジャンルが正しい」というわけではなく、自分がワクワクする分野について学んでいくのがいいと思います。

未来の描き方⑤センターピンを見つけて地図を描く

ここまできたら、最後は「地図」を描いていきます。

イーロンマスクほどの規模感じゃなくても、このフレームワークは地図を描くうえでとても参考になります。

リサーチをしていくと、実現したい未来と現状との差分がわかってくると思います。その差分が、解決すべき課題です。

課題には優先順位があります。大切なのは「センターピンとなる課題」を見つけることです。短期的なキャッシュに繋がりつつ、長期的なビジョンの土台づくりができるような課題に、いちばん最初に取り組んでいきます。

課題を見つけたら、今度はその解決策について解像度を高めていきます。仮説検証を繰り返して、事業化して、利益を出して、じわじわと産業構造を変えていく。

ここまできたら、実現したい未来への地図がもう描けているはずです。

(ちなみに、事業化についての詳しいノウハウは別の記事にまとめているので、ご興味のある方はぜひ見てみてください!)

実際にいま、僕はディープテックのなかでも「再生医療」や「バイオテック」の領域で、事業構想を練っています。

クリニックをつくって手元のキャッシュを確保しつつ、再生医療の研究を進めていき、最終的には「オーダーメイド医療のプラットフォーム」を作れないだろうか……と考えているところです。

やっぱりこのフレームワークを使うと、大きな未来への道筋がつけやすくなるのでおすすめです!

未来を描くことは、現状を打破する力になる

「地図を描くだけじゃ、未来は変えられないじゃん」という人もいると思います。それはたしかにそうなんです。行動しないと意味がない。「大きな地図を描いたはいいけど、実現できるとは到底思えない」という人もいるかもしれません。

でも、未来の地図を描くことは、現状を打破する力になると思うんですよね。

毎日なんとなく仕事をこなしていると、目的がわからないことや理不尽なことに対して、どうしても時間を割かなきゃいけなくなります。

最初は「嫌だな」と思っていても、目の前のことに忙殺されて、だんだん何も考えなくなってしまう。

これがずっと続くと、その状態を「変えようがない環境」だと捉えるようになります。ほんとうは自分でコントロールできる変数なのに。僕も、そういうモードに陥りそうだった時期はあります。

世間には「理不尽な環境下で、いかにうまくやるか」というノウハウもたくさん溢れています。そういうノウハウばかり求めてしまっていると、苦しさからは抜け出せません。

いま「環境」だと思っていることも、本当は自分の意思でコントロールできる。

未来の地図を描くことは、それに気づくきっかけになるはずです。

理想の青写真を自分の外に言語化しておくことで、相対的に「今の状況ってだめだな」と気づくことができる。そうすれば「変わらなきゃな」と行動することにもつながっていきますよね。

ビジネス的なメリットがあるのはもちろんですが、それだけでなく「人生を豊かにする」ためにも、自分なりの未来図を描くのはおすすめなんです。

ここまで読んでくれてありがとうございました。「とっておきの青写真」がある方と、ぜひお話をしたいです! 下記よりお気軽にご連絡下さい〜!


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