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LEONE

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この作品「LEONE 〜どうかレオネとお呼びください〜」は、韓国の小説投稿サイト「JOARA」で2015〜16年に掲載され、TS(トランスセクシャル)のジャンルで名作と評価されて…
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2021年6月の記事一覧

LEONE #40 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第8話 1/3

LEONE #40 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第8話 1/3

1章:The Good, The Bad and The Ugly
第8話  カウボーイ(2億GD)の夜 パート3

発信機を捨てて馬小屋から逃げ出した後、二十分。一番先にセロンに追い付いたのは例の保安官たちだった。

「おい、お嬢さん!」

向かいのビルの屋上から、カルビンが愉快な声で叫んだ。

「俺たちに捕まったほうがまだ安心でしょ。優しくしてやるから!」

「ふざけるな!」

セロンは悲鳴の

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LEONE #41 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第8話 2/3

LEONE #41 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第8話 2/3

パターンが変わった。

セロンは直感した。

どのくらい走ったか、わからなかった。一時間は走ったように感じたが、実は三十分もなかったかも知れない。

何はともあれ、彼女はいまだに逃げていた。

そしてなかなかうまく逃げていた。

要領よく狭い路地に方向を変え、時には道端の物を倒し、追撃者の進路を妨害したりもした。追撃戦になれているはずの懸賞金の狩人に、これほど逃げ続けているだけでもすごいことだった

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LEONE #42 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第8話 3/3

LEONE #42 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第8話 3/3

セロンは目を開けた。

近寄ってきたカウボーイたちは、足を止めた。

カルビンは顔をしかめ、壁の上をにらんだ。その上にいるものが誰なのか確認した後、カッと音を立てながら唾を吐いた。

それを見ていたセロンは、ゆっくりと後ろへ向かった。顔首を上げて壁の上を見た。

「もし余計なお世話だったら、どうかお許しください」

壁の上にギリギリな状態で立ったまま、ビル・クライドはたばこをくわえながら言った。

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LEONE #43 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第9話 1/2

LEONE #43 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第9話 1/2

1章:The Good, The Bad and The Ugly
第9話  カウボーイ(2億GD)の夜 パート4

「それはダメだ」

クライドの気勢が色褪せるほど、カルビンは動揺しなかった。

彼が手振りをすると、保安官たちが一斉にリボルバーを抜いてクライドに照準した。

クライドの突然の登場にもかかわらず、彼らの誰一人も動揺しなかった。逆に笑いがこぼれる始末だった。

ただ、カルビンだけはあ

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LEONE #44 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第9話 2/2

LEONE #44 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第9話 2/2

「……いったい何を企んでいる?」

クライドの表情が険しくゆがんだ。すばやくカルビンへ銃口を向けようとする彼を、セロンが手を挙げて阻んだ。クライドが沈んだ声を吐き出した。

「お嬢様。こいつらは懸賞金の狩人です。同類は同類の人間が一番よく知っていますよ。こやつらが交渉ごとを話す時は、100%何かを企んでいるのに間違いありません」

「それくらいは僕も知っているよ。ビル・クライド」

セロンが冷たく

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LEONE #45 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第10話 1/3

LEONE #45 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第10話 1/3

1章:The Good, The Bad and The Ugly
第10話  “ハイエナ”ビル・クライド

「ビル……クライド……?」

セロン・レオネが青白い顔で彼の名前を呼んでいる間、ビル・クライドは深い考えに耽っていた。

彼は少女との最初の出会いを思い出していた。

ナイスバディーの美女と思っていた女性は、近くで見たらぺったんこの胸を持つ子供で、さらに助けてくれた恩を直ちに後頭部を殴るこ

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LEONE #46 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第10話 2/3

LEONE #46 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第10話 2/3

「それはどういう意味ですか!」

『銀河銀行』の『ペイV』支店長―アダム・コープランドの顔には、すでに血の気が見えなかった。

「お願いされた、いや、言われるままに全部やったでしょう! すでに懸賞金の狩人たちが『カウボーイの夜』を繰り広げています。もうその小娘が捕まるのは時間の問題なんですよ!」

彼としては悔しさ極まりないことだった。

コープランドの言う通り、彼は彼の顧客が注文した依頼をすべて

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LEONE #47 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第10話 3/3

LEONE #47 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第10話 3/3

クライドの話に誰よりも先に反応したのはセロンだった。

「ビル・クライド、てめえ……!」

ここまで来て、また私に侮辱を与えるつもりなのか。

セロン・レオネは怒りに震えながら、彼を振り払おうとした。しかしクライドの握力は、それを許さなかった。彼はもっと固くセロンを引き、押さえる代わりにセロンの顔に自分が取り出した紙切れを押しつけた。

セロンが鋭い声で叫んだ。

「なんだこれは!」

「俺たち

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LEONE #48 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第11話 1/3

LEONE #48 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第11話 1/3

1章:The Good, The Bad and The Ugly
第11話  『アーマード』ルチアーノ

光の中で数多くの人々のうめき声と罵声が沸き起こった。大半は、カウボーイたちの下品な声だったが、だった一人、少女の高い声もひとつ混じっていた。

「ビル・クライド!」

「不満は後で聞きますから、とりあえず走りましょう、お嬢様!」

クライドは少女の手首を握って走った。いや、走ろうとした。少女

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LEONE #49 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第11話 2/3

LEONE #49 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第11話 2/3

「そ、そんな言葉で責任から逃げようとするなんて……!」

コープランドは床に崩れるように座り込んでしまった。彼は先ほど、外から聞こえてきた爆発音が意味することをすでに理解していた。

それは災いを意味した。この都市全体を火の海にさせてしまうかもわからない、とてつもない災難。

「こちらとしても大変残念だと思っています。今後被害状況を教えていただいたら、金銭的な補償は十分に……」

「そんな問題では

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LEONE #50 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第11話 3/3

LEONE #50 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第11話 3/3

彼らは羞恥心を感じた。

仲間の数は数百に達し、獲物はたった1人に過ぎなかった。

彼らは町全体にわたる完璧な包囲陣を構築していて、獲物は道のど真ん中にいた。

ここは彼らのホームグラウンドだった。彼らの、悪名高い数百人の賞金稼ぎたちの故郷だった。また、今は『カウボーイの夜』、彼らの時間であり、直前まで彼らは2億GDのウサギ狩りに没頭していた。

しかし今、彼らは新しい巨大な獲物と出くわした。

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LEONE #51 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第12話 1/2

LEONE #51 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第12話 1/2

1章:The Good, The Bad and The Ugly
第12話  脱出への道

耳元でうなる音が響いた。

体の感覚が消え、まぶたが重くて目を開けることができなかった。誰かが自分をつかまえて揺さぶるようだったが、単なる酔いによる錯覚のようでもあった。

「……兄貴!  兄貴!カルビン兄貴!」

酔いではなかったな。

カルビンはかろうじて目を開けた。

まだ夜だったはずなのに、かすか

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LEONE #52 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第12話 2/2

LEONE #52 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第12話 2/2

ルチアーノだ。

セロンは直感した。

ルチアーノ。彼が直接来たのに間違いなかった。先ほど立ち上った火柱が、そしていま着陸しようとしている『ホワイトスカル』の戦艦がその証拠だった。

「はあ? あれはまたどうなってるんだ?」

クライドは眉をひそめ、遠くに降下する戦艦を眺めた。

ふたりともホコリにまみれ傷だらけだった。街中での爆発に乗じてギリギリその場から抜け出したが、その見返りに再び地面に転が

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LEONE #53 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第13話

LEONE #53 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第13話

1章:The Good, The Bad and The Ugly
第13話  ルチアーノ親衛隊ホワイトスカル vs カウボーイ

レンスキー・モレッティは老練な執事だから、感情を表に出すような愚かな行動はするべきではなった。しかし彼の心は、刻々と焼けていくところだった。

今彼のそばには、ボッシー・ルチアーノが立っていた。ルチアーノが街を火の海にする直前に、レンスキーはここに到着することができ、

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