LEONE #44 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第9話 2/2
「……いったい何を企んでいる?」
クライドの表情が険しくゆがんだ。すばやくカルビンへ銃口を向けようとする彼を、セロンが手を挙げて阻んだ。クライドが沈んだ声を吐き出した。
「お嬢様。こいつらは懸賞金の狩人です。同類は同類の人間が一番よく知っていますよ。こやつらが交渉ごとを話す時は、100%何かを企んでいるのに間違いありません」
「それくらいは僕も知っているよ。ビル・クライド」
セロンが冷たく言い返した。
彼女は、ビル・クライドの突然の出現から来た驚き、衝撃、そして少しの感動からやっと落ち着いた状態だった。
もちろんビル・クライドは優れた実力を持った拳銃使いだ。
それは自分の目で確かめた。
しかしここには、すでに十人を超える賞金稼ぎがいて、もうしばらくして彼らは、数十、数百と増加するはずだった。結局、状況は先と何も変わってはいない。
ということは……。
ここでは交渉が正解だ。少なくともセロン・レオネ自分が、より利益のある方を選んだ方がマシだというのが、彼女の判断だった。
「お前の……いや」
セロンはしばらくためらったが、それでも今まで助けを受けた以上、最小限の礼儀を彼に見せることにした。
「……“あなた”の腕を信じてないわけではない。とりあえず話は聞いてみよう」
「……ちっ。後悔しますよ」
クライドは不満な表情のまま銃を収めた。
セロンがうなずくと、カルビンも同じく首を縦に振った後、保安官たちに向かって手を差し伸べた。しかし不満を抱いたのは、保安官たちもクライドと同じだった。
「カルビン兄貴。あえて……」
「俺の言うとおりにしろ」
サングラスの下、細い目をしているカルビンの目は、引き続きクライドを睨んでいた。
「お前らはあの“ハイエナ”がどれほど厄介な男なのかわからないだろう。お前らがまだ俺をボスだと思うのなら、ここでは俺の言うことに従え」
保安官たちはしばらく自分たちでお互いの顔を見つめ、そのうちあちこちでため息とともに銃口を地面に向けた。その時になって、カルビンはセロン・レオネに目を向けた。少女は腕を組んだままそっけない顔で彼をにらんでいた。
カルビンは肩をすくめて口を開いた。
「よし、お嬢さん。悪いけど、この交渉はお嬢さんより、そちらのビル・クライドを相手にしたいのだが。大丈夫か?」
「……理由は?」
「お嬢さんはカウボーイ、いや。懸賞金の狩人たちの計算法に慣れていないからだ。それともお嬢さんにとってビル・クライドはそんなに頼りない存在なのか?」
セロンはちらっとクライドを眺めた。どう見ても、ここでいたずらに意地を張って、クライドに不信を植えつける必要はなかった。どうせ彼は今、自分の雇用人だった。
彼女はカルビンにうなずいた。
「わかった」
「OK! お嬢さんの寛大さに感謝しよう。……では、交渉を始めようか、ビル・クライド」
カルビンはカチっと手をたたいた。
ただ、やや気さくな態度に変わった彼に比べ、カルビンに向けたクライドの視線には相変わらず不信と不満が込められていた。
「早く言え。俺は同業者と長く話をするのはあまり好きではない」
「もちろん。俺も話を伸ばすのは好きではない。俺の話は簡単だ、ビル・クライド。そのお嬢さんから2億GDを受けることになっていたね?」
クライドは眉をひそめた。
「それで?」
「そして、あのお嬢さんが持っているカバンにその2億GDが入っていて……」
カルビンの指がセロンのカバンに向かった。同時に、セロンのまゆ毛が一瞬ぐらついた。
まさか、このやろう。
「……そうか」
クライドが先より少し緩んだ表情でうなずいた。そしてうなずいたとたん、カルビンはもう一度、手を合わせながら叫んだ。
「なら、解決策は簡単すぎる!」
「おい、ビル・クライド……!」
セロンはすばやく声を上げて、話を遮ろうとした。しかし、カルビンはそれよりさらに声を荒げた。
「君はあのカバンを受け取り、約束の2億GDをもらえ! そして俺たちにそのお嬢さんを引き渡せ。それでこの状況をきれいに整理できれば、君の罰金までサービスで消してやる。これでどうだ?」
セロン・レオネの顔が真っ白になった。
彼女はまるで油が切れた機械のようにギクシャクしながら、後ろのクライドを振り返った。
そして……
「ほお……?」
ビル・クライドは、いたって真剣に、そしていたって興味津々な表情で顎をなでていた。
著者プロフィール チャン(CHYANG)。1990年、韓国、ソウル生まれ。大学在学中にこの作品を執筆。韓国ネット小説界で話題になる。
「公演、展示、フォーラムなど…忙しい人生を送りながら、暇を見つけて書いたのが『LEONE 〜どうか、レオネとお呼びください〜』です。私好みの想像の世界がこの中に込められています。読んでいただける皆様にも、どうか楽しい旅の時間にできたら嬉しいです。ありがとうございます」
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