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【英論抄読】人工膝関節置換術後6カ月における術後慢性疼痛の予測因子

📖 文献情報 と 抄録和訳

人工膝関節置換術後6カ月における術後慢性疼痛の予測因子。術後疼痛軌跡と遺伝の影響

Thomazeau J, Rouquette A, Martinez V, Rabuel C, Prince N, Laplanche JL, Nizard R, Bergmann JF, Perrot S, Lloret-Linares C. Predictive Factors of Chronic Post-Surgical Pain at 6 Months Following Knee Replacement: Influence of Postoperative Pain Trajectory and Genetics. Pain Physician. 2016 Jul;19(5):E729-41.

🔗 ハイパーリンク

PubMed, Google Scholar

💡 ポイント

✓人工膝関節置換術後の慢性術後疼痛を予測する因子を調査した。
✓不安や歩行能力など、急性術後疼痛に関連する因子に関わるすべての治療戦略は、慢性術後疼痛のリスク低減に役立つと考えられる。

📚 概要

[背景]
人工膝関節置換術後の慢性術後疼痛(CPSP)の頻度は依然として高いが、予防の改善により減少させることができる可能性がある。

[目的]
人工膝関節置換術後6ヶ月のCPSPを予測する術前・術後の要因を明らかにすること。

[研究デザイン]
単施設前向き観察研究。

[設定]
フランスの病院の整形外科病棟。

[方法]
2013年3月から7月までに膝関節全置換術または一関節置換術を紹介された連続した患者を前向きに本研究への参加を呼びかけた。各患者について,術前の疼痛強度,不安・抑うつレベル,電気刺激に対する感度・疼痛閾値を記録した。OPRM1 と COMT の一塩基多型を解析した。術後5日間の急性術後疼痛(APOP)を疼痛軌跡でモデル化した。痛みの特性と結果の変化は,術後 3 ヵ月と 6 ヵ月後に観察した.CPSPの予測因子を特定するために二変量解析および多変量ロジスティック回帰を行った。

[結果]
本研究では104名の患者を前向きに評価し,そのうち74名(28.8%)が6か月後にCPSPを報告した。多変量ロジスティック回帰分析において,術前の3因子がCPSPの存在と関連していた:高校卒業レベル(OR = 3.83 [1.20 - 12.20] ),Brief Pain Inventory short form "walk" itemで評価した歩行能力に関する痛みの結果(OR = 4.06 [1.18 - 13.94] ),成人期の身体活動の欠如(OR = 4.01 [1.33 - 12.10] )であった。CPSPの存在と関連する術後因子は、高強度のAPOP軌道の1つであった。COMT遺伝子のA対立遺伝子との間に統計学的に有意な境界線上の関連が認められた(OR = 3.4 [0.93 - 12.51]).APOPの軌跡に基づいて、高強度(n = 28、26%)または低強度(n = 80、74%)の2つの患者群が同定された。高強度のAPOP軌跡を示す患者は、不安レベルが高く、手術前の歩行能力が低かった(P < 0.05)。

[制限事項]
本研究は単一施設の研究であり、CPSPの予測因子を検出したり、遺伝的因子の役割を強調するには、サンプルが少なすぎた可能性がある。

[結論]
膝関節手術後にCPSPのリスクが高い患者を特定するために、術前・術後のいくつかの特徴を利用できる可能性があることが示唆された。不安管理,疼痛が歩行能力に重大な影響を及ぼす前に膝関節置換術を行うなど,APOPを低下させるすべての治療戦略は,CPSPのリスク低減に役立つと考えられる。手術前のトレーニングプログラムを含む特定の管理方法を検証する、さらなる前向き研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

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OPRM1 ・ COMTに関しては以下をご参照頂きたい。

痛みや鎮痛における個人差の遺伝的要因 - 日本緩和医療薬学会

著者自身でも指摘しているように一般化可能性は低いものの、結果は非常に面白いと感じた。

慢性術後疼痛を予測する際にも、やはり”全人的”な評価が必要であると思った。
術前の歩行能力などは評価することが多いが、学業レベル、まして遺伝子レベルでの評価はするといった視点はなかった。
私たちはリハビリテーション職種である前に一人の”人間”である。当然、患者さんも然りである。”全人的”に評価し、”全人的”に関わる。これこそが、リハビリテーションではないだろうか。

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医療従事者における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。

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