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五十肩患者の運動イメージ能力

▼ 文献情報 と 抄録和訳

運動イメージパフォーマンスと触覚空間の鋭さ-五十肩の人では変化しているのか?

Breckenridge JD, McAuley JH, Ginn KA. Motor Imagery Performance and Tactile Spatial Acuity: Are They Altered in People with Frozen Shoulder? Int J Environ Res Public Health. 2020 Oct 14;17(20):7464.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

✅ 結論
五十肩の人の運動イメージパフォーマンスと触覚の閾値が変化することを示した。これらの所見は、感覚運動処理の変化や患部の感覚運動野の表現の乱れが原因の一つであると考えられる。これらの結果は、五十肩が不適応な神経可塑性変化を伴う可能性を示しており、慢性的な肩の痛みを持つ人々の臨床結果を改善するために、これらの変化を逆転させることを目的とした治療を行うべきケースが存在することを示している。

[背景・目的]
五十肩(癒着性腱鞘炎)は、重度の慢性疼痛であるが、十分に理解されておらず、現在の治療法は最適ではない。他の慢性疼痛疾患では、運動イメージや触覚の障害が見られ、これは神経可塑性の変化に関連していると考えられている。本研究の目的は,片側の五十肩患者において,左右判断課題で評価される運動イメージのパフォーマンスと,2点識別で評価される触覚の鋭さが変化しているかどうかを明らかにすることであった。

[方法]
本研究では、理学療法クリニックで五十肩と診断された18名の成人を対象に、左右判定課題を行い、応答時間(RT)と左右判定課題の精度を測定した。次に、両肩の触覚の鋭さを、力を基準とした新しい2点識別テストで評価した。

左右判別課題の例


[結果]
患側と健側の結果を比較した。
左右判定課題:患側の平均RT(SD)が健側のRTよりも有意に遅かった(p=0.031)。精度には左右差はなかった(p>0.05)。RTと精度のいずれも、痛みや障害のスコアや症状の持続時間とは関係がなかった(p>0.05)。
2点識別:患側の肩の平均2点識別閾値は、対側の健側の肩よりも有意に大きかった(p < 0.001)。2点弁別閾は、疼痛・障害スコアや疼痛持続時間とは関係がなかった(p>0.05)。

[結論]
これらの所見を説明する1つの方法として、感覚運動処理の変化や患部肩の感覚運動皮質の表現の乱れが挙げられる。慢性的な肩の痛みを軽減するためには、このような変化を元に戻すことを目的とした治療法を用いる必要があると考えられる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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✅今回の運動イメージは、いわゆるメンタルローテーション課題により測定されている。
運動イメージは、これまでパフォーマンス向上や筋活動の向上を目的に活用されてきた印象があるが、近年ではこのような疼痛との関連を示した研究も増えてきている。
気になることは、このメンタルローテーション課題、それ自体が治療になりえるか、ということだ。”評価することが治療にもなる評価”は、臨床意義が非常に高いと思われる。更に調べてみよう。

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メンタルローテーション課題に関しては、以下の記事で分かりやすく解説されていましたので、紹介します。

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医療従事者と研究活動における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。

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