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--キリトリ--

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短編集。 色んな人の日常のキリトリ。 頭の中のおはなし。
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#短編

不幸な小説家

さゆりは小説家だ。

小説家といっても、素人に毛が生えた程度だ。
いつもはブログに短編ストーリーを掲載している。
コメントが大体100くらい、いいねが300くらい。
これ1本で食べていけるわけもなく、昼間は一般企業に勤めている。
小説の収入は月に約8万円。会社からの給料が20万円。
二つ合わせるとまあまあの収入になる。
でも、どちらかが欠けたらやっていけない。

さゆり自身、どちらかの専業になりた

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3番線上の情操

電車はダイヤの乱れもなく、通常通り順調に進んでいる。

行きたくもない目的地が刻一刻と迫ってくる。

私は大きくため息をついた。

今日は結婚式。
天気は快晴。雲ひとつない。
秋も深まり昨日は肌寒かったが、今日は日差しが暖かい。それはそれは結婚式日和だ。

グリーン車の窓から見慣れた景色を眺める。

ああ、本当に行きたくない。

今日の主役は私にとってはどうでもいい人間だ。
大学時代、同じダンス

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13:30の憂鬱

晴れている。

こんなに雲ひとつない青空は久しぶりだ。
青さが目にしみる。

冬物のスーツでは少し暑い。
そういえば今日は天気予報を見ていなかった。
こんなに気温が上がるなら着てこなかったのに。

コーヒーを買いに早くコンビニに行こう。
どうもここの会社とは合わない。
営業先の担当者で好きなヤツなんていないが、ここは特に嫌いだ。
呼びつけておいて無駄話で時間を潰し、結局何も買わない。いつものことだ

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新宿の占い

私はアラサーOLである。

お察しの通り悩み多きお年頃だ。

そこに独身彼氏なしなんて付加価値もつけば、もうやってられなすぎて天を仰ぎたくなるほどだ。

土曜日。
昼過ぎに携帯のバイブレーションで起こされた。
半開きの目で確認したメッセージには「結婚することになりました!結婚式にはぜひきてね!」とビックリマークとハートが飛び交った文章だった。
こんなメッセージは今年に入ってもう4通めだ。

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