『就活生、神になる。』⑧ 合同説明会って本当に行くべき?
■まえがき ~本編に入る前に~
本記事は、中高時代に病気で学校に通えなくなり、寛解後の大学時代はコロナ禍がクリーンヒットした筆者による就活体験記『就活生、神になる。』の第8回更新となります。過去6回の内容を踏まえた上で進んでおりますので、未読の方は下記リンクよりご確認ください。それでは本編をどうぞ。
■第23章 合同説明会には行くべきか
既に泥沼の既卒就活の夏に突入していた私であったが、大学2年生の初めの頃から情報収集だけは計画的に行っていた。再度自分の立ち位置を見直すためには、出願先の練り直しも視野に入れるべきだと考えていたが、捨てきれぬ志望職種への夢や、拭えない先入観などでなかなかそれも難しい。
そんな時、登録していた大手就活サイトから、「合同説明会のお知らせ」のDMが入っていた。開催場所は東京都心の一等地で、大手企業から中小優良まで数十社が参加するとあった。私は、視野を広げるためにはうってつけだと思い、参加することにした。過去にも同様の合説は参加した経験があるが、もう2年くらいは経っていたので、私も見方が変わっていることだろう。
会場に付くと事前登録した情報で本人確認が行われ、自らが大事にしている就活の軸などのアンケートとスタンプラリー用紙が渡された。どうやら、5社だか10社だか回ると3000円分の金券が貰えるらしい。守銭奴の私にとっては願ったり叶ったりである。せっかくだから一社でも多く回ってやろう。
■23-2 不自然な"入れ食い"状態
会場につくやいなや、通路を歩いているだけで、多くの企業が声を掛けてくれる"入れ食い"状態であった。隣を歩いていた二人組の就活生は、これに目を輝かせて返事をしていたが、皮肉なことに就活生として、ある意味で"百戦錬磨"の私からすれば、これは明らかに異様な光景であった。
まず蓋を開けてみれば、集まってる企業が、総じて待遇が悪かったり、激務の傾向にある業界ばかりであったことである。これはその業界を貶める意味で申し上げる訳ではないが、介護や飲食など、総じて激務、かつ人手不足が深刻な業種であったり、深夜営業で体力的に過酷な労働を強いられる可能性が高い業界が大半を占めていた。
もちろん、その中にも、お給料や福利厚生をきちんと出している会社も存在していたが、数度病気を経験した私からすれば、深夜営業や肉体労働が含まれている時点で、体力的に就労自体が難しい業種であることは言うまでもなかった。
次に多かったのが、大言壮語な釣り文句で就活生に不自然なモチベーションの持たせ方をしてくる企業である。例えば、「待遇面には自信があります!!20代で高級車を乗り回してみませんか!!」と言うような文言が、本当に採用パンフに掲載されているような事例である。これには私も、驚きや呆れを通り越して、笑いが出てしまった。商社や利益率の高い業種でもないのに、社員全員にそんな待遇でやってたら、とっくに会社なんぞ無くなっているであろう。
上記はパンフレットを貰っただけであったが、私が実際に説明会に半ば無理やり引き込まれて"座らされた"企業の中には、「あなたもCEOになりませんか!?」「この会社ならなれます!」という謳い文句でやっているような会社もあった。んな、この場にいる全員がCEOになっていたら、船頭多くして何とやらである。エベレスト登山でもする気ですか。
また、会って数分で「最終面接にご案内します!この日空いてますか?」と聞いてくる引越し業者も存在した。まだ何も御社のことを知らないのに、この食い気味具合には正直恐怖を覚えた。担当者の方の口は笑っていたが、目が笑っていなかったのが、妙に脳裏に焼き付いている。
もちろん、中には1割程度、真剣に人材募集を掛けたいという熱意が伝わってくる中小企業も存在した。「我が社は社員教育を第一に考えており、営業部隊に配属になる方は、文系でも懇切丁寧に、当社製品を技術面から説明できるまでに育て上げます」と言った、わかりやすく実現可能性が高いプロセスが指し示されている会社もあった。特に希望職種ではないので受験はしなかったが、こういった会社が真に報われる社会であってほしいと思う。
ただ、基本的には就活末期の合同説明会には参加する意味は薄いと個人的には思う。ブラック企業大賞に過去ノミネートされている会社までもが多数出席するような情勢の中で、およそちゃんとした職業人人生は送れないだろうなと、説明会の段階で予感させるような会社ばかりであったのは言うまでもない。中には、強引にブースに座らせてきて、LINE登録を迫り、後日何度も電話が掛かってくるような所もあった。
■第24章 就活生側も他人様のことは言えない
ここまでは、就活末期の合同説明会がいかに大変な場所かという話であったが、労働市場で忌避されている企業があれば、労働市場に取り残されている就活生もいるのである。私もその一人である。
就活末期の合同説明会に参加して理解したことは、基本的に就活市場で取り残されるタイプの人間は、大きく分けて3タイプであるということだ。
1つ目は、私のように体力が極端になかったり、病歴があったりと、長期的な就労に疑義が生じるタイプである。私は、よほど志望度が高く緊張さえしなければ、人並み以上にはハキハキと喋れるタイプであり、大手企業でも門前払いはされない大学は一応出ている(と信じたい)が、高校で不自然に1年遅れており、学歴に空白期間が出ている。おまけに大学ではコロナ禍がヒットしたので、集団生活でのガクチカが薄く、既卒と来た。これでは、「この人は本当に働けるのだろうか?」という疑いが人事の方に生じても、何ら反論はできない。
合同説明会には、きちんとコミュニケーションが取れていて、私よりも遥かに聡明そうな方でも、入院経験があると企業に相談していたのが聞こえたことがあった。彼もまた、この季節までどの会社にも採用されなかった人間の一人なんだなと実感したのを覚えている。
2つ目は、実力に対して極端に志望業種や志望企業が高い人である。合同説明会終わりに3000円のギフト券を貰うために、いろんなブースを巡ったうえで、アンケート用紙提出場所に向かったのだが、その間に数人のアンケートが見えてしまったことがあった。
データとして母数が少ないので信頼に足らないと言われれば反論できないが、例えば「早慶ですら下限」になってしまうような業種・企業に、標準的な大学の方が志望にチェックしているパターンが往々にしてあったように思える。
3つ目は、コミュニケーションが壊滅的に取れていない人である。これは若者一般が言う"コミュ障"とかいう次元ではなく、就活末期の合同説明会特有の何かである。そこそこの確率で、企業の方から問いかけられても、うんともすんとも答えなかったり、逆に全く頓珍漢な返事をしてしまう方が多く見受けられた。
極端な例ではあるが、企業の人事の方への質問に対して、一人称が下の名前という人も1回だけ目撃した。
「(下の名前)はねー、(企業名敬称無し)の(事業)で、どういう人が欲しいのかなって思ってるんだけどぉ~」
と、2つ隣の女子が口を開いた時には、何も発言していない私も、恥ずかしさでその場を離れたくなるような感覚になった。企業側も企業側ならば、就活生側も就活生側で、何らかの問題を抱えているのだ。
就活末期の実情と自分の立ち位置が可視化されたことで、より危機感を強めたと同時に、「たかだか3000円のアマギフを貰うために、僕は何をしていたんだろうな」という空虚感と共に、会場を後にしたのであった。
(第8回本編終了・次回に続く)
いかがでしたでしょうか。私の個人的な感想を申し上げると、合説は将来やりたいことが何もない人だったり、とにかく定職に就きたい人にはオススメします。
ただし、自分なりに信念や夢があったり、忙しい方であったり、私のように病弱が故に受からないタイプは、逆に実態との乖離でストレスになったり、変な焦燥感を覚えたり、無為に時間を過ごすことになるので、止めといた方が良いと思います。いま就活を頑張っている新卒の方も、これ読んだだけで何となくわかったでしょう?
これをお読みになっている全ての方の就活の成功に、少しでも寄与できれば幸いです。
▼過去回・次回・その他記事はコチラからどうぞ▼
よろしければいいね・コメント・Twitter共有なども併せてお願いいたします。私なんぞ突然話しかけても大丈夫ですからね。今後の更新をいち早く掴みたい方は、フォローがオススメです。それでは。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?