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戦挙

ボクの名前は旗ねばを、小学四年生。ボクは目立つことが好きで小学校のテッペンである児童会に入ることを目標にしてきた。この小学校では、小学五年生から児童会に入ることが出来る。入るためには、四年生の終わりに行われる選挙に勝たないといけない。待ちに待ったチャンスがやっと来た。ボクは、選挙の募集が解禁してすぐに児童会副会長に応募した。小学四年生の終わりの段階で応募出来る一番上の地位だ。ここで、この学校の選挙のルールを説明しよう。①四年生の終わりから選挙に出る事が出来る②一ヶ月間の選挙活動期間が設けられる③候補者は必ず一人、支援者を選ぶ。選ばれた支援者は、選挙活動の手伝いをする。④一ヶ月の選挙活動期間を終え、全校集会を設け一人一人演説を行い投票し当選者を決める。このようなルールを基に選挙が行われる。ボクは、まず支援者を選ぶことにした。選挙活動には学校内に選挙ポスター等掲示物を作成やスピーチなどのお手伝いをしてくれるサポーターが必要だ。。ボクは、その点を考慮し頭が良くなんでも出来る心友を候補者に選んだ。みんなが大好きドラ○もんで例えるなら、出○杉くんをイメージして貰えば分かりやすいだろう。ボクは出○杉くんと共に選挙に挑むことにした。候補後、対戦相手が決まった。通常なら役職毎の応募に五〜六人立候補するのに、ボクが立候補した副会長には、自分を含めて候補者が二人だけだった。嫌な予感した。すぐにその予感は現実のものとなる。ボクの前に現れたのは、候補者/同級生のドン.支援者/この町内一の金持ちの息子だった。アレに例えるならジャ○アンとス○夫だ。因みにボクは、強いて言うならの○太くんかな、、、。アニメと違うところといえば、このジャ○アンとス○夫には、上級生に兄がいた。そこのコネだけでもかなりの票が入る。誰も立候補しない訳だ。だが、ボクと出○杉くんは前向きだった。初めてやる選挙の内容が楽しかったのだ。芸術家の両親を持つ出○杉くんは絵が得意。さまざまなバリエーションのポスターを楽しみながらハイクオリティに作ってくれた。ボクはというと人格者であるお爺ちゃんと共に毎日のように演説の練習を行い、入念に策を練っていた。ボク達は全く負ける気がしていなかった。しかし、現実はそう甘くなかった。選挙活動期間中、昼休みに各学年を周るが誰も相手にしてくれない。上級生には、ジャ○アンとス○夫の兄達がいる。既に手遅れだ。下級生に至っては、ボクも彼らの気持ちが分かるから、、、言うまでもない。野球に例えると完封負け状態だ。だが、ボク達はまだ負ける気がしてなかった。

〝あの事件が起こるまでは〟

この選挙活動期間の中間には、昼休みの校内生放送に出演し候補者スピーチをするチャンスがあるのです。これは候補者にとって、アピールする絶好のチャンス。ボクも事前にしっかり文章を考え、爺ちゃんに添削して貰うなど完璧に準備を整えた。スピーチ当日、極度の緊張がボクを襲う。人前で喋ることは苦手ではないが放送というカタチは初めての体験だ。次々と候補者達がスピーチをこなしていく。ボクが考えてきた文章に比べたら、みんな大したことがなかった。これは、ボクに流れが来てると思わずニヤけそうになった。そしてボクの番が来た。放送なので原稿を見ながらスピーチできる。原稿を持った瞬間、ボクの手が大きく震えていることに気が付いた。いつもの精神状態ではなかったのだ。だが、持ち時間が決まってる為、早くスピーチを始めないといけない。ボクは、勢いに任せてスピーチを始め、、、、。〝あっあっあっ〟初っ端からどもってしまった。それからスピーチを続けていくも終始噛みっぱなし。しかも、スピーチの途中で時間が来てしまい、ボクの番が終わった。ボクが放送室から出ると出○杉くんが分かりやすく頭を抱えていた。周りの人達は、優しく励ましてくれたが結果は最悪だった。一応、出○杉くんに放送の出来を確認したが、噛みすぎて内容が入ってこなかったと言われた。悩んでいても仕方がないので、今後の策を出○杉くんと一緒に練ったがなにも浮かんでこなかった。完全に詰んだ。ボク達は、ある決断をすることにした。選挙の担当の先生の元へ行き、選挙を辞退したいと申し出た。そう、今回は諦めることにしたのだ。だが先生から途中辞退は認めない、最後までやりなさいと。この時には既に、ボク達のヤル気の糸は完全に切れていた。僅かな望みのなかでの戦いだったのに、自分の失敗のせいで完全試合を成立させてしまったのだ。この事をきっかけに二人はあまり選挙の話をしなくなった。それから時間は経ち、全校集会(最終日)を明日に控えた夜。お爺ちゃんがボクの元へ近づいて来た。そして一言だけ。〝ねばをは、人の上に立つ素質がある。ねばをなら必ず出来る〟お爺ちゃんはボクの肩を叩いてその場を立ち去った。だが、この時点でボクは既に投げ出しており、スピーチすら考えていなかった。ボク達は、明日の演説会を巧くこなして早く終わらせようと考えていたのだ。布団に入り眠りにつく間、何度かお爺ちゃんの言葉が頭をよぎった。

〝そして、当日の朝〟

何故か目覚めが良く、気持ちの良い朝を迎えることが出来た。選挙は、諦めているので全然緊張していなかった。こういう日に限ってコンディションが抜群に良いのだ。学校へ向かっていると途中で出○杉くんと遭遇した。一緒に歩きながら他愛もない話の中で、出○杉くんも凄くコンディションが良いというのだ。ボク達にとってこの選挙はもう既に他人事となってしまっていた。学校に着き、全校集会が行われる体育館へと向かった。ボク達の諦めに気づいているのか誰もエールをかけにこない。まあ、これが結果だ。全校集会が始まる頃、雨が降り出したのだ。ボク達は、〝天気にまで見放された〟と笑い話のネタにしていた。校長先生の選挙開催宣言により順々に演説が始まった。演説の流れは、まず候補者がスピーチをし、その後支援者が応援スピーチをするといった感じだ。次々と演説が進んで行き、副会長候補者の番がやって来た。先ずは、ジャ○アンとス○夫からだ。二人が壇上に立っただけで周りの応援が凄い。人気者があるのが一眼でわかる。二人ともテンポ良くスピーチしている。勝利を確信しているのか、型にはまったようなリスクの少ないスピーチだった。ミスなく、選挙活動を完走したのだ。敵ながらあっぱれだ。そして、ボク達の番が来た。出○杉くんと〝これ以上恥をかかないように早めにスピーチを終わろう〟と打ち合わせをし、演説にのぞんだ。壇上に立ってもジャ○アンとス○夫の時とは違い、静かだった。不思議なことが起きた。校内生放送の時とは違い、全く緊張しないのだ。しかも、かなりリラックスしている。やはりボクは人前に立って話す方が向いているのだ。ボクのスピーチが始まった。軽快に言葉がでてくる、この前とは違う。ボクは、出○杉くんとの打ち合わせを無視し全校生徒に向けて自分の想いをぶつけることにした。

〝ここからがボクの戦挙のはじまりだ〟

選挙活動期間の前半に毎日のように行っていたお爺ちゃんとの練習の成果が意外にもココであらわれた。次々に言葉がでてくるのだ。周りは唖然とした。一番驚いていたのは、隣にいた出○杉くんだ。今にも口があきそうだ。軽快に喋るボクのスピーチにみんなが喰いついてきてるのが、この時なんとなく感じることが出来た。リラックスしているので、周りを落ち着いてみることが出来ていたのだ。ここで試しに洒落を挟むことにした。名前のねばをと納豆を掛け合わせ、納豆のように粘り強くと動作を加えながら喋った。一気に静かな空気が和やかになった。その後も、ボクのスピーチは軽快に進んでいくのだ。スピーチも終盤に差し掛かり、ボクは喋りながら締めの言葉を模索した。冷静な状態の僕の目に、雨が降る外の景色が目に入った。締めの言葉が決まった。ボクは、体育館の外を指差し、全校生徒を外に注目させた。そして、〝今日みたいな雨の日は、いつもみんなを見守っている校旗は居ないけれど、旗ねばをの旗はどんなときでもみんなの前に居る〟と締めくくったのだ。ボクのスピーチが終わった瞬間、体育館が湧いた。ボクは、やりきった。ただ一つ申し訳なかったのは、この次に応援スピーチをする出○杉くんに対してだ。恐る恐る出○杉くんを見てみると意外にも燃えていた。ボクに触発されたのだ。流石、なんでも出来る出○杉くん。ボクのスピーチの流れに乗っかってきたのだ。こうしてボクたちの演説は終わったのだ。ボクたちは、結果より今日の演説の達成感に笑顔が止まらなかった。ジャ○アンとス○夫の完全試合を阻止することが出来たのだ。今日の成果は、次回の選挙に繋がると。全ての演説が終わり、投票が始まった。何故かジャ○アンとス○夫の兄達がこちらに睨みをきかせてくる。このときは、理由がわからなくボクたちは単純にビビっていた。開票が終わり、放送にて当選発表がされた。次々に発表され、副会長の番が来た。結果が発表される。ボクは最初聞き間違えたかと思った。全体の9割強の票を集め当選したのだ。学校中が沸いた。あの人気者のジャ○アンに大差をつけて勝ったからだ。この時、あの睨みの意味が分かった。ボクと出○杉くんはとんでもない逆転劇を演じたのだ。ボクは家に帰り、お爺ちゃんにこの結果を報告した。お爺ちゃんは、〝なるべくしてなったんだよ〟と微笑んでくれた。その言葉を実現するかのようにボクは、その後行われた三回の選挙も危なげなく当選するのであった。もちろん、出○杉くんと共に(笑)

                (おしまい)







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