up-tempo work 第一章 No.4
「こちらのマスターの店が、もう一軒近くにあるのですが、
一緒に行きませんか?」
グレースーツの男性がにこりと笑い、私たちを交互に見た。
すると、友人の美寿江は俯き女性らしい仕草で、躊躇いを見せている。
ーーまさか、まさかとは思うけれど、行きたいのだろうか。
そういえば先ほど、美寿江はグレースーツの男性に向かい、
楽しい時間であったことを、
美しすぎる笑みを浮かべ伝えていた。
男性に対して、ましてや、見ず知らずの人に、無防備で、少女の様なあどけなさのままの、彼女も珍しい