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  • 小説『door』

    こちらの小説がメインになります。 蓮が出会った、薬品会社社長とその二人を囲む、渦めく野心と心情の謎

  • 小説 「up-tempowork」

    新人駆け出しのOLと犬猿の仲の上司との物語

  • 小説『nostalgie』

    カメラマン志望の若い青年と絵本作家を夢見る女性二人の物語

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個展・写真展告知

写真家、ホリウチジョー 2021 summer 世田谷での 写真展開催♡︎ʾʾ 都内、主に渋谷で活躍しているフォトグラファー。 森山大道をも彷彿するような写真家、ホリウチジョーさんの個展です。 (*´-`) お近くにいらした時はどうぞお立ち寄りくださいませ♡︎ʾʾ 圧倒されるその写真。 これからも開催されますので、 今後ともどうぞよろしくお願いします。 お時間が許されましたら 是非 あそびにいらしてください♪

    • up-tempo work  3章 No.2

        ドアを開けると取り付けられた鈴が『カランコロン』と心地よく鳴った。 「いらっしゃいませ」 「こんにちは〜、昨日はごめんなさい」 頭を下げながら、会計を後回しにしたことを謝ると、「ガラテア」のマスター後藤寿史は笑顔を浮かべて目で合図をする。 視線の先を見ると、カウンターに神崎美寿江が座っている。 白いスーツの彼女のその姿は、百合の花でも飾られているかのような華やかさだ。 「久しぶり」 私は美寿江の隣の椅子に座った。 「あゝ、りこ。『久しぶり』ってそうね。 言われて

      • up-tempo work 始動 第三章

        ーーどうしよう いくら考えても状況が変わるわけではない。 冷えたカップを俯いて眺めていると、 ふと、コーヒークリームの上に、ぽっかりと浮かびあがる顔。 ーーそうだ、彼はどうしているのだろう。 関連会社へ勤務している、幼馴染でもある桜樹を思い出した。 電話してみよう、何かいい策でも思いついてくれるかもしれない。 何しろアイツは機転が利く。 桜樹の顔を思い出した途端、明るい気持ちになった。  あたり一面、何も見えない真っ暗闇の中、隙間から差すドアの光を見つけた気分だ

        • 『Waltz』 Words

          テーブルの上の君の手にそっと触れると 君は戯けて見せた 無邪気な 屈託のない笑顔をみせる まるで初めての恋をするかのような気持ちで 君の姿を見ている 君がどうあろうと 構わない 最後の恋人 戸惑いも迷いもなく 私は、 君の手を固く握りしめた 『Waltz』

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        • 小説『nostalgie』
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          「up-tempo work」第2章「辞令」No.3

          ー 何かの冗談ですか ー 大竹が真顔ではっきりとした声で憮然と放った言葉。  大竹の憮然とした態度を、部長はまるで予測していたかのように動じる様子もなく、大竹を真っ直ぐと見据え「大竹ちゃんも一人で手が回らなくなってきて補佐が欲しいとも言っていたじゃないか、まぁ、一つ頼むよ。いいね、任せたよ」一歩もひきさがらず、安定した声だが鋭い視線で大竹を見る。 すると、大竹は私を見た。 私を見る彼の目を私もまっすぐ見ていた。 メガネの奥の大竹の瞳は意外にも『その時』は、優し気だった

          「up-tempo work」第2章「辞令」No.3

          「up-tempo work」第2章「辞令」 No.2

          部長に声をかけられた大竹がゆっくりこちらに向かい歩いてくる。 すると周囲は、仕事の手を休め、会話を中断し、電話中の人は受話器を持ったままストップモーションのように動きが止まり私たちの方へ視線を向け始た。 部長の席の前へポケットに手を入れたまま彼は私の横に立つと、ちらりとだけ私を見た。 大竹は背格好も整っており、自身が持つ雰囲気だろうか、立っているだけでも存在感があった。  部長は座席の背をもたれに背を預け足を組みなおし、薄いイエローのスーツズボンのポケットに右手を入

          「up-tempo work」第2章「辞令」 No.2

          up-tempo work 第2章 「辞令」No.1

          「どうしよう」 諦めるにも諦められない、ため息ばかりが出る。天国から地獄へ突き落とされた気分で私はコーヒーカップを前にしていた。『思い出すのも嫌だ』 ...... 入社が決まり会社へ向かう、 目の前に開かれる新しい世界。 希望に満ち、清々しい朝に軽快に歩く、 新しい社会のはず、 夢と希望の門出のはず....... そのはずだったのに、何かから突き落とされたような気持ちで私は馴染みの店のコーヒーを前にして、口もつけられず俯いていた。 店のマスターも心配そうにチラチラと

          up-tempo work 第2章 「辞令」No.1

          up-temp work 第一章了

           それにしても、緑のスーツを着て行くことができる職業とは一体何だろう。一般的ではないように思えて美寿江ではないが、知りたくなり、 彼をチラリと見た。 ーーもう会うこともないだろう、ええぃ! 聞いちゃえ! 「あの、お仕事は何をされているのですか?」 カメレオンスーツへ直球を投げた。 すると、彼は『クスリ』と笑い、 一瞬俯いたかと思うと私をまっすぐに見据え、 「銀行員だよ」 ーー嘘つけ! 右手をポケットに入れながら、太々しく平然と言ってのけるその様子に、 危うく、声に

          up-temp work 第一章了

          up-tempo work 第一章 No.4

          「こちらのマスターの店が、もう一軒近くにあるのですが、 一緒に行きませんか?」 グレースーツの男性がにこりと笑い、私たちを交互に見た。 すると、友人の美寿江は俯き女性らしい仕草で、躊躇いを見せている。 ーーまさか、まさかとは思うけれど、行きたいのだろうか。  そういえば先ほど、美寿江はグレースーツの男性に向かい、 楽しい時間であったことを、 美しすぎる笑みを浮かべ伝えていた。 男性に対して、ましてや、見ず知らずの人に、無防備で、少女の様なあどけなさのままの、彼女も珍しい

          up-tempo work 第一章 No.4

          up-tempowork第一章No.3

          「何のお仕事されているんですか?」  友人は二人に突然、尋ねた。 「さぁ、何でしょうね」 グレースーツは答えなかった。 その会話を聞いた、カメレオンスーツは微笑を浮かべた。 そのまま、友人の言葉を『聞いちゃいない』とでも言いたげな様子で、 悠然と二人はカードゲームを続けている。 今度は声を1オクターブ上げ、 「何のお仕事をされているんですか?」 再び聞くが二人は笑みを浮かべるだけで何も答えない。 ーーどうやら答える気はなさそうだ。私はハラハラしながら友人を見ていた。

          up-tempowork第一章No.3

          up-tempowork第一章No.2

           BARのドアからゆっくりと歩いてくる男性二人。 遊びなれた雰囲気が服装や余裕を見せる動きから伝わってくる。 前を歩く男性は、スーツは一見地味なグレーだが、 薄暗く少し離れた距離でもわかるほどの、生地の質の良さ、品のいいネクタイ、 よく磨かれた靴など、まるでスキがない。 後ろの男性はポケットに手を入れ悠然と立っている。 スーツの色は、なんと緑色だ。 普通の会社員は絶対に選ばない色。 センスがいいのか、悪いのかよくわからないが、「カメレオンか」と思った。  前を歩いてい

          up-tempowork第一章No.2

          up-tempowork 第一章 No.1

           大学生の時に薬科大に進学した高校時代の友人が、年の離れた医師と学生結婚した。 大人の男性に見初められた友人はトンデモナイ美人だった。 ある夜、その彼女に洒落たバーに連れていってもらった。 カウンターに座り、ふたりでグラスを傾けていた。 もっとも私はアルコールは飲めないので、 ジュースのカクテルを飲んでいた。 彼女はストレスが溜まっているのか、 ウォッカ系の濃いカクテルをガンガン飲みながら、 結婚生活への不満を延々と話し続けているが、 私はずっと頷きながら聞いていた。

          up-tempowork 第一章 No.1

          rainy

          土砂降りの雨降る心に灯をつけた貴方 飾らない姿が愛しい 互いの心が寄り添う瞬間(とき) 許されるならずっと抱きしめていてほしい 日曜日の朝も夜も 光射す時も月夜に照らされる時も とびきりの瞬間(とき)は 痛いほど爪を立て 貴方の愛を受け止めるから 抱きしめられると貴方の言葉を信じたくなる 優しい嘘は知りたくないから 目を閉じて抱かれるの 言葉などいらないから 掴む腕に身を委ねて 貴方の優しさに縋りたくなる リフレインする貴方の愛しかた 覚えていく貴方の愛しかた 知

          「nostalgie 一章」No.5

          わぁ……。 ファインダーを覗いた私は思わず感嘆の声を上げた。 「ねぇ、秦さん、秦さん何かね、違う!違うよ!」  解読難解な言葉を繰り返す、私。 ーー今まで覗いていたファインダーから見る感覚とは、全く違うのだ。 テーブルの上に無造作に散りばめられたビーズは、太陽の柔らかい光を浴び、キラキラと輝いている。  熱もダルさも瞬間的に忘れ、はしゃいぐ私に、秦はその姿を見て笑っていた。 「たくさん、撮ってご覧よ」 「シャッター押すの、緊張するよ〜」 「何故?......変だよ、

          「nostalgie 一章」No.5

          「nostalgie」No.4

          「nostaigie 4」小説  「いつか世界中を周り撮って歩くんだ」 秦がいつもそう言っていた。 「見てろよ」 誰に言うわけでもなく、一人呟いていた。  デジタルカメラ1台しか持つ余裕がなかったのに、秦はずっとそう言い続けていた。  「街の景色を撮ってくる」と出かけては、ぼんやりとした灯、華やかさを撮る秦ではなかった。 暗闇、夜の灯。 昼間に撮っていても、どこか暗く重い。 その灯からは、何故なのかわからないけれど、 「悲哀」のようなものを感じることがあった。  労働

          「nostalgie」No.4

          「nostalgie」 No.3

          「nostaigie 3」    テーブルがコトンと音を立てた。 『それ』は、君の手にすっぽりおさまるほどの、 小さなサイズの透明な丸いケースだった。 ーーあ、あれ?見覚えがある。 私が手芸用に使っていたケースを拝借したものだ。 中に何かが入っている。 何だろうと、目をこらしてみると、中には色とりどりの小さなビーズが入ってる。 「ねぇ、シン(秦)さん、これ何?」 「さっき、まほろに聞いただろう?」 「今日は何を撮る?ってさ」 「これを撮るの?」 「そう〜」 にこりと

          「nostalgie」 No.3