小説 『door』 第一章 4
『カラン』と静かな音をたて、森川の持つグラスの氷が揺れた。
森川とこうやってこのBARで会うようになって
一年半ほど経つ。
私は何度彼に真実を聞きたくなったことか、でも、聞くことはなかった。
森川が何を考えているのか私にはわからなかい。
「君は岩間の奥さんと何か話していたのかな?」
「いえ、以前、お見舞いに行った時にお化粧品を紹介していただいたので、
社交辞令程度のお付き合いで、何度かそちらをお願いして購入して世間話をした程度です」
「そう.......」
「森川