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小説『door』

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こちらの小説がメインになります。 蓮が出会った、薬品会社社長とその二人を囲む、渦めく野心と心情の謎
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小説 『door』 第一章 4

『カラン』と静かな音をたて、森川の持つグラスの氷が揺れた。 森川とこうやってこのBARで会うようになって 一年半ほど経つ。 私は何度彼に真実を聞きたくなったことか、でも、聞くことはなかった。 森川が何を考えているのか私にはわからなかい。 「君は岩間の奥さんと何か話していたのかな?」 「いえ、以前、お見舞いに行った時にお化粧品を紹介していただいたので、 社交辞令程度のお付き合いで、何度かそちらをお願いして購入して世間話をした程度です」 「そう.......」 「森川

小説 『door 』3 蓮の回想

 その日、私は、会社からの依頼で治験コンタクトレンズの紹介のため、 昼近くに川崎寄りの都内、N総合病院を訪れ待合室に座っていた。 ーー会社のコンタクトレンズ部署営業の先輩から、 「置いてくるだけでいいから、頼むよ人手が足りなくてさ」 「お願い、蓮ちゃん、頼む!今度昼飯おごるからさぁ」って 頼まれたものの......  (治験レンズとは、新しいコンタクトレンズとキッドを無料で提供し 患者さんに試してもらえる方にお願いし、そのデーターを医師に依頼する)  同じメーカーとはい

小説 「door」 2

『door1』前記事よりーー  森川は製薬会社を経営している。 岩間は森川が右腕としている、プロパー社員であった。  森川は一から岩間に仕事のノウハウを教え、『B型肝炎』である岩間を 治療を含め1日業務の中に休養時間として病院での点滴時間と、インターフェロンの移行を含め、森川が関係している医師へ治療を依頼し岩間はそれを受けていた。  岩間は常に「劇症肝炎」になることに怯えてもいた。    時には治療の最中、検査の数値が悪く入院することもあった岩間を森川は見舞っては、肝臓

小説 「door 一章」 1

 まち合わせの時間に遅れてしまう。 足早に歩きながら 腕時計を見ると、針が止まっている。 ーー揺れ動く心。  待ち合わせのバーの前で息を弾ませながら、 鞄から携帯を取り出し時間を確認する。 「なんとか間に合った......」 思わず声になり私は胸を撫で下ろした。  重厚な扉が目の前に広がる。  このドアを開けたなら君が微笑みを浮かべてくれるだろうか......。 ドアの引に手に指を絡めた時、私は躊躇いを覚えた。 それは、このドアを開けた先にいる君が、 自分の失意を