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ゴミからアイデアが生まれる時代。「北欧のサーキュラーエコノミー」×「コーヒーかす」のチカラ

by パケトラライター 鐙麻樹(ノルウェー・オスロ在住)

あなたはコーヒーを飲みますか?

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Photo:コーヒーかすからできた石鹸

国民一人当たりのコーヒー消費量を世界ランキング化した時、北欧諸国は毎年トップの常連国。日本では、コーヒーは「カフェインを摂取するために疲れた時に飲むもの」と考える方が多いかもしれませんが、北欧では「人との交流を円滑に進めるためのきっかけ」、「リラックス効果のある飲み物」と考えられています。

日本ではお茶を日常的に飲むように、北欧ではそれがコーヒーにかわります。老人ホームに行っても必ずコーヒーマシンは置いてあり、おじいちゃんもおばあちゃんもごくごくと毎日飲んでいます。国民がそれほどたくさん飲んでいると、コーヒーを淹れた後にゴミ箱行きとなるのが、「残りかす」です。

北欧デザインといえば、シンプル、機能的などの特徴が定番でしたが、私は「サステイナブル」というワードが仲間入りする時期だろうと思っています。「サステイナブル」な取り組みを模索するノルウェーやフィンランド。毎日ごみとして大量に出る「かす」も、なんとかできないかと動き始めた人たちがいます。

❝かすは「ごみ」ではない❞ことを広めた女性

ノルウェーの首都オスロにある小さな工場で働く、シリ・ミッテトさん。女性起業家として、コーヒーの残りかすを再利用するグルーテン(Gruten)社を立ち上げました。石鹸やスクラブ、ミミズ堆肥を作ったり、現在は「かす」と菌糸からできる「きのこ栽培」に熱心に取り組んでいます。

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Photo:グルーテン社を立ち上げたシリ・ミッテトさん

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Photo:コーヒーかすで作った石鹸、スクラブ、きのこ栽培セット。オスロにあるノーベル平和センターのショップで販売中

数年前まで、かすは「ごみ」としか捉えられていなかったのですが、石鹸からスタートした彼女の活動はノルウェーの現地メディアで大きく注目を浴びることに。かすが再利用できるという「目からうろこ」の事実を、市民に広める立役者となりました。かすは市内にある飲食店から無料提供されており、お店のごみ削減にもつながっています。

石鹸とスクラブは、ラベンダーとペパーミントの2種類の香り。プラスチックや無駄なごみを出さないために、包装は紙の簡易包装、新聞紙を使うこともあります。また、石鹸の製造過程で形が崩れてしまって通常価格で売るのをためらう形状の場合は、「ユニークな子たち」として通常価格89ノルウェークローネから、60ノルウェークローネとお安くなります。ゴミを出さないのが、シリさんの主義。

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Photo:コーヒーかすから生まれた商品を各地のイベントで販売。スクラブなどの作り方を知りたい人のための教室も大好評。(10月の国際コーヒーの日に撮影)

スクラブは自宅で簡単に手作りできる!

ここで、コーヒーを自宅で飲む読者の方に私が鼻息を荒くしておすすめしたいのが、「スクラブの手作り」です!スクラブ作りはとっても簡単なんです!必要なのは、コーヒーかす、はちみつ、ココナッツオイル(無香料、特別な味付けがされていないものがおすすめ)だけ。

レシピはネットでいろいろ見つかりますが、多少ふやかした「かす」とココナッツオイルを同じ量、そしてはちみつを適量混ぜるだけです。濡れた体に塗り、5分ほど置いてから洗い流します。頭皮、顔、足、かかとなど、どこにでも使えます。驚くほどに、お肌がつるつるに!私は毎日使っているのですが、特に顔がつるつるになり、もうシャワー後には顔にクリームを塗る必要性を感じないほどです。

今は欧州のお店やデパートでもコーヒースクラブが販売されています。しかし、お値段はそこまで安くはないので、自分で作ったほうが圧倒的にコスパもよく、感動度も増すと思います。私はスクラブ作りをずっと続けるつもり。シリさんのスクラブに影響を受けなければ、自分で手作りしてみようとは思わなかったでしょう。

コーヒーかすで食用キノコができる?

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Photo:きのこ栽培キットの次作品、外装はコーヒー豆が入っていた袋を再利用

さて、スクラブの話で熱くなってしまいましたが、今回はシリさんのきのこ栽培の工場を訪れました。ここでは週に40キロの食用きのこを栽培中。現在は7か所の企業オフィスやホテルなどから、捨てる予定だったフィルターコーヒーのかすを提供してもらい、きのこ栽培に使用しています。提供企業にはマイクロソフト社やグーグル社も!

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Photo:きのこが生え始める前の、コーヒーと菌糸が詰まった容器の中の状態

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Photo:容器の穴からキノコが覗きます

育ったきのこはオスロ各地にあるレストランで食材として使われています。シリさんはきのこでパスタを作るのがお気に入りだそう。また、シリさんはプラスチック使用を減らすことにも熱心。とはいえ、生分解性プラスチックだと菌糸に食べられてしまうため、今はプラスチックを使用し、代用品を探しているところなんだとか。

自宅でも栽培可能。グルーテン社では栽培キットも発売中

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Photo:ノルウェーはノーベル平和賞の国。ノーベル平和センターのお店で栽培セットを販売中。環境客の間でも人気の商品。このキットできのこを3~4回栽培できます

実は私も栽培を開始し始めたばかり。きのこを食べるのを、わくわくして待っています。

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Photo:容器ごとに、きのこの数も大きさも様々。育ったきのこは芸術品のよう

「コーヒーかすは、ゴミ以上の価値がある貴重品」と話すシリさん。「人と違うことをしたい」という好奇心が、起業につながったと語ります。「再利用ビジネスは、地元のブランド価値を向上させ、雇用を生みます。今までとは違う考え方もできるんだよ、ということをモデルとして示したかったんです」。

最後に、ノルウェーからフィンランドに移動して、コーヒーかすが発端となったイノベーションを紹介したいと思います。

コーヒーかすで、衣料品が作れる?

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Photo:フィンランドのスタートアップが、コーヒーかすとプラスチックを再利用してスニーカー作り

コーヒーかすと、廃棄予定だったプラスチックで、かっこいい防水スニーカーが作れる・・・「本当?!」と疑いたくなりませんか?フィンランドのスタートアップ「レンス(#rens)」では、廃棄予定だったプラスチックとコーヒーかすを再利用して、防水スニーカーを作り始めました。クラウドファウンディングが大好評に終わり、これから続々とネット販売が始まる予定。

クラウドファウンディングの達成率は900%で、私も5000人以上いた支援者のひとり。完成したスニーカーが届くのを「そろそろかなー」と楽しみにしています。創業者に首都ヘルシンキのオフィスでインタビューをした時、「実は日本のショッピングサイトからもオファーがたくさん来ているんだ!」と言っていました。

ゴミからアイデアが生まれる時代

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Photo:ドイツではコーヒーかすを再利用して、カップを製造。(Kaffeform社)

ごみだと思っていたものには、まだまだ利用価値があります。このような取り組みをしている人や商品に出合うと、インスピレーションをもらって「目の前のごみは、何かに使えるのでは?」と考えるようになり、脳への良い刺激にもなります。

何か買うなら、地球環境を考慮した次世代商品を選んでみませんか?茶葉もなにかに再利用できるかもしれませんね。

ビジネスのヒントに。「パケトラ」

by パケトラライター 鐙麻樹(ノルウェー・オスロ在住
https://pake-tra.com/writer/info/?id=abumi


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