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図書館に本がやってくるまで

図書館の「新着図書」のゾーンを覗いてみたことはありますか?多くの図書館にこのゾーンが用意され、新品でパリッとした本たちが誇らしげに並んでいます。

よく図書館に行くという方はお気づきかもしれませんが……このゾーン、入れ替わりが激しい。図書館って、そんなに本を買っているの?と思われている方も多いのではないでしょうか。

年間の図書購入数は館によって違うので今回は割愛しますが、それでも疑問は残りますよね。購入する本、しない本は、どのような基準で決めているのでしょうか。今回は、図書館に入る本はどのように決められているのか、その方法を2つお話します。

1.利用者の希望を考慮する

まず、利用者からの購入依頼を検討します。ただし、希望がすべて通るとは限りません。購入希望の中から、その館が定めた本を購入する際の基準というものと照らし合わせ、合格したもののみが購入されるのです。

この基準は、館によって本当に様々。例えば私が勤めている大学図書館では、資格の問題集や就活に関する本は基本的に購入しません。また、よくあるハウツー本や小説(研究で使うものは除く)などの購入も見送ることになっています。しかし、ほかの大学の図書館を見てみると、毎年TOEICの参考書を購入している館もあれば、流行りの成功哲学の本や漫画が充実している館もあります。どちらがいい、という問題ではなく、単に「どのような目的で図書館を運営しているか」が違うだけなのです。ここに館ごとの個性が表れるのですね。

2.チラシを活用する

一般企業と同じように、図書館も他機関とのお取引をしています。その代表が出版社。その出版社から送られてくるチラシも、購入する本を決める上での大切な情報になっています。図書館に直接出入りはしていない出版社さんからも届く大量のチラシは、本当にバラエティ豊かで新刊情報が盛りだくさん。大学図書館なら、やはり専門書の宣伝が多いのが特徴です。

宣伝チラシを仕入れの参考にするメリットは、蔵書の種類に偏りがなくなること。利用者からの購入依頼だけをもとにすると、やはり特定の分野の本が増えすぎてしまいます。かといって図書館スタッフの独断と偏見で選んでしまうと、せっかく買ったのに誰も読まないというリスクも……。そこでDMを活用すると、利用者の興味に合う本を新しい視点から探すことができるのです。例えば大学図書館で、その大学に「江戸時代のお金の流れ」について研究している教員がいるとしたら、江戸時代の食文化やアイヌ関係の本を入れてみよう、など。利用者の興味がある分野と重なるけれど少し外れている分野の本を入れることによって、利用者に新たな視点を提供できますし、興味・研究の幅を広げてもらう機会を作ることができるのです。そうやって選んだ候補の中から、館ごとにある本を購入する際の指針と照らし合わせ、購入に至ります。

また、ほかに届く宣伝として古書目録データベースの売り込みがあります。古書目録には、和装本(江戸時代の本)のほかに浮世絵や文豪直筆のハガキ、それから巻物などが並んでいます。どれも数万円から数百万と高額ですが、図書館には資料を保存する役割もあるため、実に理にかなった宣伝です。

「資料を保存する役割がある」とはどういうことか、また、この記事でも複数回出てきている「図書館の館ごとの個性」はどのようなところに表れるのか。詳しく知りたいというかたは、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。

そしてデータベースも、図書館にはなくてはならない大切な戦力。図書館は本を読むための場所、というイメージが強いですが、実は本だけではなく、インターネットも含めあらゆる情報を扱う総合基地のような場所なのです。ちなみに、データベースは一本100万円以上するものも普通にあります。そんな高額商品が、図書館に来ればタダで使えるんですよ!ぜひ、ご自分が普段利用する図書館が何を契約しているかをチェックしてみてください。

また、図書館が情報を扱う専門施設であることについては、下記の記事で詳しく述べています。興味のある方は、ぜひ合わせてお読みくださいね。

まとめ

今回は、図書館の本の収集方法について、

1.利用者の希望を考慮する
2.チラシを活用する

という2つをご紹介しました。

膨大な数の本の中から、どれを購入するか選ぶのは至難の業です。そこで役に立つのが、館ごとの基準なのですね。皆さんも次に図書館に行く機会があったらぜひ「この館はどんな基準で本を集めているのかな」と考えながら探検してみてください。自分なりの「基準」を考えてみるのも面白いですよ。館ごとの個性を見つけて、行きつけのカフェのような感覚でお気に入りの館を見つけてくださいね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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