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私なりのSDGs

SDGsというと格好良く聞こえるが、大切なのは言い方よりも自分が今何が出来ているのか冷静に分析出来ているかどうかだ。今日は自分のチャレンジに対して、振り返りの場にしようと思う。

◼️質の高い教育をみんなに

見送りの日の集合写真

児童養護施設で暮らす高校生を対象に『社会学習』という目的で、就労体験を受け入れている事は以前の記事でも書きました。

8月17日この取組みの第一号である女子高校生が、三週間の就労体験を終え下山した。最後は感極まってか彼女は泣きながら小屋を後にしました。

三週間という長いようで短い山小屋生活は彼女にとってどのような日々だっただろうか。忙しい日もあり、暇な日もあって、移り変わる数々の景色を目にした彼女の心境はどのようなものだっただろうか。

尾瀬小屋のスタッフだけでなく、お客様や近隣の山小屋の人達にも可愛がられ、お茶に誘われたり、演奏会に誘われたり、尾瀬の景色だけでなく『人』が彼女を受け入れていたように思います。

アルバイト経験もほとんどない状況で、山もまともに登った事のない女子高校生がいきなり山小屋で住み込みバイトをするなんて、ほとんど事例がない。
それでも彼女が最後に『楽しかった』『また来たい』『帰りたくない』と発した言葉に嘘偽りはないだろう。

この言葉や感情を抱かせた尾瀬小屋スタッフは本当にさすがである。私の独断で『児童養護施設の高校生を働かせる』と皆に打ち明けた時、未知な事に対しての不安や複雑な心境はあったはずだ。しかし、別れ間際に見たさよならの光景はまさに、親が子を見送る時の家族のような雰囲気さえあった。大切な事を沢山教えてくれたスタッフには心から感謝したい。

帰路につく高校生を遠目で見守る尾瀬小屋の大人たち

働いた事によって刺激を得たのは何も高校生だけではない。我々大人の方こそ、『捉え方』『伝え方』『素直さ』『純粋さ』など学ぶ事が沢山ありました。こうした機会は人を成長させるものだと改めて感じた。

4日間ほどではあるが、男子高校生も職業体験に来ており、昨日からは新たな男子高校生が体験に来ました。
正直なところ同じ給与を支払うのであれば、兄の飲食チームの応援を頼んだ方が、現場レベルのパフォーマンスは段違いに上がるし、スタッフの負担が軽くなるのは百も承知だ。それでも、この取り組みをする事が私含め『人の成長』という観点から変えがたい時間になると判断した。結末が善くも悪くもどちらに転がるかは、人で決まるものなのだと再確認できた時間でした。

『学びたい』という真摯な姿勢さえあれば、児童養護施設の子供だろうが、高校生だろうが関係なく、己を磨き上げる教育の場は、全ての人に平等にあるべきだと考えている。その環境を作るのも、職種や年齢、役職や年収も関係ない。全ては人と人。

気付いた人がやればいい。それが私の役割だ。

◼️陸の豊かさも守ろう

話はがらりと変わり、尾瀬小屋では2022年からジビエ料理の展開を始めている。

北海道でエゾ鹿の狩猟を学ぶ私

【尾瀬小屋でのジビエ料理提供の背景】
尾瀬を代表する水芭蕉やニッコウキスゲはその昔、湿原や木道脇に咲き乱れ美しい景観でしたが、いまや絶滅の危機に瀕している。

それはニホンジカによる食害の影響があるからだ。尾瀬にはもともとニホンジカはいなかったが、1990年代半ばから確認されるようになり、2010年頃から被害が拡大。鹿はミズバショウやニッコウキスゲなどの花や芽を摂食し、湿原を踏み荒らすため、植物の根を傷つける。その結果、植物は減少・消失し、裸地になった後に従来とは異なる植物が育つ現象が起きていると考えられています。これは尾瀬の貴重な生態系を壊すことにも繋がりかねないのだ。

【問題解決への課題】
現在、鹿による被害の状況調査、鹿の進入防止柵や罠の設置、銃器による殺処分などの対策が実施され、かつ毎年数百頭の鹿が処分されていますが、鹿の被害が縮小するまでの成果は確認されていない。対策を進めるうえで、下記の様な課題も抱えているのが現状だ。

1. 捕獲・処分の担い手である猟師さんの高齢化・減少

2. 捕殺された鹿の活用方法が確立されていないこと(※一部、おぜしかプロジェクト小山さんによる革の利活用あり)

3. 尾瀬地区は東京電力福島第一原発事故の放射線量の関係で鹿やイノシシの出荷制限対象であり食用肉として活用出来ない。

ミズバショウやニッコウキスゲがなければ、尾瀬が尾瀬でなくなってしまうという危機感が高まる半面、尾瀬の自然を守るために奪われた鹿の命がある事、その鹿の命を大切に活かし、人の暮らしの中で役立て、命の尊さを感じてほしいと私は切望しています。

【今後の狙いと挑戦】
上記理由により、尾瀬の鹿は利活用される事なく食用として提供する事も叶わない。但し、人間が山を楽しむ背景にはこうした命のやり取りがある事を伝えたいし、出荷制限の対象外に生息する鹿を、あえて尾瀬小屋で「食べる」というアクションを実現させ、尾瀬鹿の食害問題をグルメを通して訴求している。尾瀬小屋はジビエ協会にも参画しており、昨年から友人の飲食会社オペレーションファクトリー様と、金星パスタ様、京都の奥山ジビエ様とタッグを組み絶品ジビエ料理の開発と提供に取り組んでいる。

◼️初めてのジビエツアー開催

8月16日インバウンド向けのモニターツアー開催

尾瀬小屋グルメでも取り扱いがあり、ジビエ料理を得意としていたが、今回のツアータイトルは『山小屋で味わうジビエフルコース』という全品ジビエという縛りが設けられ、なかなか重たいタスクが要求されたのだ。後述するフルコースメニューを見てもらえれば分かる通り、料理内容はもはや山小屋の領域を超越している。通常の夕食メニューやレストランメニューを作りながら、提供されたフルコースは時間も手間も凄まじい。少人数だとしても、今後チャレンジを継続するかは悩むレベルだ。しかし、与えられた宿題を完璧にクリアするのが尾瀬小屋スピリッツ。

テーブルに並んだ絶品ジビエ料理を、至仏山を眺めながら食べた参加者の皆様からは感動の嵐だった。どのような形なら今後もサービスを継続出来るかを再考しながら挑戦は続いていく。この挑戦には尾瀬小屋の藍澤シェフの判断が非常に重要であり、彼なしでは成し得ない夢のプランですので、これからもシェフの活躍を見守っていただければと思います。

鹿肉ステーキ 鹿ソース添え
イノシシのすね肉ハンバーグ
鴨のフルーツソテー
イワナの野菜スープ
鹿肉ボロネーゼ

◼️SDGsとは一体何なのか

ここ数年で沢山耳にするようになったSDGsという言葉。いろんな活動事例や取組事例を目にします。
本当に良い内容のものもあれば、上辺やパフォーマンスだけのものもある。お金で活動を買い取ろうとする企業さえある。

ビジネスとは儲かる事が大前提であるのは言うまでもない。慈善事業ではないしボランティアではない訳で、会社を経営し雇用を守らなければならないのだから、儲け以外に『何かの為』とか『誰かの為』という視点を兼ね備える余裕を持つ事は難しい。それは普通の事だし決して悪い事ではない。

ただ、物事を全て自分を当事者に置き換えて考えながら
動いていると、結果的に自分が幸せになる=誰かも幸せになる動きや思考になっている事が多い。

若い労働力が欲しければ、若い力を保有する場所に声を掛ければいいし、自分が若い頃に働く場所で困っていた時に『声を掛けてくれる大人が居たらいいな』と感じてた事を今は逆の立場で声を掛けてあげればいい。

美しい自然が見たいなら、自分自身がその自然を守れば良いし、殺される命を美味しく食べてあげたいと思った自分がそれに向かって挑戦すれば良い。

それらが上手くいった時、自分の周りにいる人達も必ず喜んでいるし『良かったね』の未来が待っている。

わざわざ一から何かを考えなくとも、すぐ側にある身の回りの悩みや不便、課題や問題に目を凝らしていると、自分が出来る事って沢山ある事に気付かされます。大きな事よりも小さな事をコツコツと。

それが日常に潜むSDGsだと考える。

疲れていても苦しくても進む日々

尾瀬小屋
工藤友弘

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