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「歪な塔に砂嵐」

キーン、キーンと甲高く鳴り響く。
杭を打ち込む、金槌の音が。
殺風景の砂原、そこには1人の少女。
彼女は打ち続ける。
目の前に聳え立つ未完の塔に。
想いを込めて。

彼女の気高き理想、譲れない理想。
足りない、不可能、だとしても。
理念と信条、それを込めて建てる、柱のないバベルの塔。

塔は必ず倒れる、それを分かっていても止まれない。
誰かの設計図、そんなものはいらない。
それで建てた塔は、私の塔ではないのだから。

まだ、まだだ。
聳え立たせること、それが目的ではない。
一つ一つの部品を、自らの意思で打ち込む。
それが私の塔。

少し一息して
彼女は岩辺に腰をかけて思案する。
塔の行末を。
そして確かめる。
自らの理想を。

設計図、才能、運。
持たざる者を嘲笑う彼らは
簡単に塔を完成させた。
だがそんなものに価値はない。
そんなものに目もくれない。

そんな時、ザザザと左から音がする。
巨大な竜巻、砂嵐。
徐々にこちらに近づく様子を見て
彼女は口角を少しあげてみせた。

私の塔を倒してみせるのか。
やれるものなら、やってみせろ。

風が吹き荒れる中、
キーン、キーンと鳴り響く。
彼女は杭を打つのを、止めはしない。
まだ完成しない塔、いや未完成のまま終わる塔。
だがそこに悔いは残さない、そんな塔。


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