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肉体労働者も、頭脳労働者も、平等に頑張ってる。そんなの日本だけ。

 2019年5月29日、肉体労働者と頭脳労働者の死亡率が日本と韓国、ヨーロッパ諸国でどのように違うのか?といった論文がBMJ Journalsに掲載されました。東京大学とエラスムス大学、チューリッヒ大学など各国を代表するような大学の共同研究です。

 1990-2015年の25年に渡る各国データを分析した気合の入った研究で、何日か前にTVニュースにもなっていました。

 さて、日本の管理職と言えばストレスフルで、自殺が多いイメージがあります。でも肉体労働だって体をめちゃくちゃ酷使して大変です。病気にかかるリスクだって高いかもしれません。


 結論から言うと、日本では肉体労働と頭脳労働では死亡率に差があまりありません。一方、ヨーロッパ諸国では状況が異なります。


 ・日本人の死亡率は世界に比べて高いのでしょうか?

 ・肉体労働と頭脳労働では死亡率にどんな違いがあるのでしょうか?

 ・1990年に比べて、2015年にかけて私たちの労働環境は良くなっているのでしょうか?
 


 日本って、思ったほど悪くないじゃん。むしろ、生きやすい社会なんじゃないかなーと思えるデータを他国と比較しながら検証していきましょう!



ジョージアのCMに学ぶ、肉体労働 VS 頭脳労働

 このCMは山田孝之演じる営業マンと鳶職(とび職)演じる新井浩文が、お互いの苦労を想像して認め合うホッコリした内容です。

 CMから想像がつく通り、やっぱりお互い大変なことがありますよね。営業マンは精神的なストレスが溜まるでしょうし、鳶職は命を落とす危険と隣り合わせで仕事をしています。どんな職種でも、大変なことがそれぞれあるものです。例えば薬剤師も、医師と患者の板挟みの中で、薬を一文字間違えたり、計算をちょっと間違えればヒトを殺してしまうかもしれないというストレスに面しています。


 今回研究チームは

25年に渡って集められた35~64歳の労働人口、約244万人のデータを用いて
①高い役職の頭脳労働者:管理職、専門職
②頭脳労働者:事務員、販売員、サービス職
③肉体労働者:建設・製造業、運輸業、清掃業、梱包業
④農業




4つのグループに分け、それぞれの死亡率を算出しました。

・ヨーロッパ諸国や韓国と比較した日本人の死亡率は?

・頭脳労働者と肉体労働者に死亡率の違いは出るの?

・1990年代と2010年代を比較すると、労働環境は改善されているのでしょうか?



ヨーロッパ諸国や韓国と比較した日本人の死亡率
 

 縦軸には死亡率。横軸には労働の種類を国別に表しています。

Upper non manual
 => ①高い役職の頭脳労働者:管理職、専門職

Lower non manual
 => ②頭脳労働者:事務員、販売員、サービス職

Manual                 
  => ③肉体労働者:建設・製造業、運輸業、清掃業、梱包業

Farmer
 => ④農業

 例外的に農業はめちゃめちゃ死亡率が高いんですが、これは自営業の形態が多く、昔ながらのやり方が続いており、会社のように利益重視の方法に変更していく場合が少ないからだと考えられます。


ここから、少しずつ結論をまとめていきます。 



 1.日本の死亡率は決して高くない。

 日本人は働きすぎのイメージがあります。でも死亡率は、ヨーロッパ諸国と比較しても決して高くありません。縦軸が他の国に比べてさほど高いとは言えないのが良くわかるかと思います。


 2.ヨーロッパ人と日本人では早死にしやすい職業が違う


 ヨーロッパでは、肉体労働>頭脳労働>高い役職の頭脳労働の順に死亡率が高い傾向。

 日本は高い役職の頭脳労働>肉体労働>頭脳労働の順に死亡率が高いのですが、注目してほしいのは、死亡率の差があまりないこと。これは日本独特の特徴です。

 責任が軽く、肉体的負担も少ない職が一番長生きするというのは面白いですね(笑)のらりくらりやるのが長生きの秘訣かもしれません♪


 韓国では、ヨーロッパと真逆で、高い役職の頭脳労働が最も死亡率が高いという結果。


次に時系列で死亡率が変化するのかを見ていきます。



時系列でみる労働者の死亡率

 *Tanaka, Hirokazu, et al.2019 Fig2

3.頭脳労働者も肉体労働者も、日本の死亡率は世界最高レベルに良い

 右上と左上のグラフを見てみてください。赤が日本です。1990年から2015年にかけてずーっと世界の最先端を走っています。労働生産性が低い等、いろいろ問題はあるかもしれませんが、日本人は労働の中で死んでしまうという最悪のシナリオを上手く避けてきた民族なのかもしれません。



4.管理職や専門職の死亡率は、2000年をピークに改善傾向。


 いわゆる責任の重い職業に就く日本人は2000年をピークに死亡率がグッと上がっています。バブル崩壊と共に急上昇したと考えられます。これらの職に就く人は、労働時間がどんどん増えていくせいで健康診断の時間を取ることが出来ず、癌など致死的な病気による死亡率が高いと考えられています。自殺に関しても、日本や韓国では「恥」の感情によって、高い地位にある人達はミスやストレスにより自殺をしやすい傾向があると分析されています。

 しかし、それもだいぶ改善傾向にあり、2020年にはヨーロッパ諸国とならべるのかな・・・?という勢いで回復しています。

 韓国は近年、管理職・専門職の死亡率急上昇。経済の成長とマネージャーのケアの歯車が上手くハマっていないような印象です。これは重大問題。



世界の労働環境は少しずつ良くなっており、日本人はトップを走り続けている。

*Tanaka, Hirokazu, et al.2019 Appendix Fig 1-1

1990~2015年にかけての、日本、韓国、ヨーロッパ諸国の35-65歳の死亡率をグラフにしたものが↑のグラフ。


 日本人はもともと死亡率は高くないですが、徐々に改善を積み重ねて、最新のデータでもトップクラスに低い死亡率を叩き出しています。日本人は生産性が低い、効率が悪い、働きすぎだ。色々なネガティブイメージがありますが、本当にそうなんでしょうか??

 人生のイベントの中で1番最悪な『死』を迎えることが、他の国と比べて高くないことは明らかです。良き事じゃないですか。


 私はこれらのデータを見て、やっぱり日本人で良かったと思います。どんな職業に就いても、他の国より死亡リスクを上げずに働けるんですから。管理職や専門職は確かに大変だけど、それも現在進行形で急速改善中ですし。


 裕福ではなかったとしても、日本で働くことが出来れば、衣食住は確保できる。知ろうと思えばどんな知識も探せるし自分のモノにできます。

やっぱり良い国だなぁ。


 どんな職業の人も大変ですが、自分の幸せ掴むために頑張ってください♪


幸せを掴むためのエビデンス、

現在進行中で集めてます。

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引用
Tanaka, Hirokazu, et al. "Mortality inequalities by occupational class among men in Japan, South Korea and eight European countries: a national register-based study, 1990–2015." J Epidemiol Community Health (2019): jech-2018.
https://jech.bmj.com/content/early/2019/06/07/jech-2018-211715


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