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「新しい小規模チームはパラレルワーカーの集合体」

2023年4月、僕の会社は15期目に突入します。最近、日本の会社の平均寿命が23年前後という統計を目にし、僕の会社も僕自身の人生もとっくに折り返しちゃってるじゃないかと今更ながら時の流れの速さに恐れおののいている次第です。次の10年を生き残るために、今何をすべきか。これからも首都圏を中心に中量生産で身の丈に合った規模感の経営を細々と、しかし着実に持続する努力を怠らないことは言うまでもありませんが、会社の未来の為に今このタイミングでもっと大胆に新しい行動を起こすべきではないのか。こんなふうに思ったのは、昨年の夏に頂いたある新規プロジェクトへのお誘いがキッカケでした。

愛知県と名古屋市のバックアップで進められる、高級ホテル立地促進補助事業に認定された2023年開業のラグジュアリーホテル。今回はそのホテルのウェディング事業にパートナーとして参画してみないかという打診を頂きました。数年前にも名古屋で新規開業する式場様からパートナー参画の打診を頂いたことがあります。その時は現地でチームを作るのではなく、東京からクリエイターを派遣するという方向性で話を進め、出張撮影のリスクなどを事細かに説明した上で自分たちが出来ることは何かをプレゼンさせていただきました。結果として提供できる商品が限られてしまい、残念ながら参画するには至りませんでした。そういった経緯もあり、もし今回このプロジェクトに参画するのであれば、現地の人たちで構成された映像制作チームを現地でゼロから作ることが不可欠であると感じました。何故ならば、フィロソフィーを共有した東京チームのクリエイターを名古屋まで派遣し、僕たちが考えるウェディング映像を中京圏で提供する方法は手間が掛からず確実ではありますが、長距離移動の物理的なリスクを払拭することが課題となります。もし施工当日の新幹線が止まってしまった場合のプランBを考えつくことが簡単ではないからです。そしてもう一点はサービスのローカライズです。東京のやり方を地方にそのまま移植するだけで本当にいいのか?という課題を考える必要がありました。

現地でスタッフをリクルートして株式会社オンスの「支店」を作るのか、それとも経営理念や哲学などコアな部分は東京と共有しつつも中京圏マーケットに適応したニーズや商習慣にローカライズさせた「別ライン」として進めるのか。一昨年から長野でフォトスタジオを開業するために地元コミュニティとの対話を少なからず実践してきたのですが、今度の名古屋でも同じように地元の同業者や業界関係者とのコミュニケーション(浸透)は必須だと考えていました。前々から感じていた「東京は日本の中でも(すべての面で)特殊な地域」という事が、今回の一連の地方進出でより強固に確信することになります。そしていつしかこう考えるようになりました。「東京はバチカン市国のような日本の中にある外国である。東京以外が本当の日本である。」この仮説をもとに、支店ではなく異なるラインとして立ち上げた方が順応するのではないかと。たった150年ほど前までは藩という無数の小さな国家の集合体みたいなものが日本だったのだから、自分の拠点の外側を「外国」と表現することはそんなに間違った発想ではないようにも感じました。ウェールズやスコットランド、北アイルランドなどを内包するイギリスをもっと薄めたような感じが現在の日本なんじゃないかと。東京人と名古屋人は共通言語が日本語なだけで、文化や習慣は全く別の国の人。だからニーズも考え方もやり方も違うはずなので、東京のやり方を移植するという意味での「支店」ではなく、哲学やテイストをゼロから作り上げる「別ライン」の方向性で進めることにしました。そしてブランド名は「OUNCE AND THEN」とすることに。AND THENとは「その向こう」的な意味合いがあり、「OUNCEのその先」といった感じです。

幸いにも数年前に名古屋で開いたウェディング映像セミナーで講師を担当したご縁などで、名古屋圏に伝手がないわけではありませんでした。ゼロからチームを作っていくために、まずは組織を構築するに当たって現地在住の優秀なアドミニストレーター(アドミニ)の確保が必要不可欠となります。何年も前にご縁があって仕事で出会った現地の方の顔がパッと頭の中に浮かび、すぐに連絡を取ってみることにしました。もしこの人がダメだった場合、今回のプロジェクト参画はお断りしようと決めていました。何故ならば、優秀なアドミニと組まなければチーム運営が成り立たない事を今までの経験で学んでいたからです。彼女とは何年もコミュニケーションをとっていませんでしたが、意を決して連絡して運よく事情を説明する機会を頂くことが出来ました。そしてなんと偶然にも、彼女もちょうど所属していた会社を卒業したばかりとのこと。これはチャンス到来か?神様がゴーサインを出したのだとラテン的に解釈し、この名古屋進出プロジェクトを引き受ける方向で話が一気に進むことになります。

そして今度は現地クリエイターをいかにして採用し、教育してチームとして一体感を醸成していくのかという工程を考えなければなりません。知り合いの現地クリエイターに声をかけるのと同時に求人でも募集を始めることにしました。更にアドミニの地の利を生かした人脈を駆使して数名のクリエイターと面談することが出来ました。情報収集や拠点構築、採用活動からクライアントとの関係構築に関してはやはり現地で顔が利くアドミニと組んだことで、非常に効率良くものごとを進めることが出来ました。そういった様々な工程の中でも改めて採用とか一体感醸成っていう部分は企業活動において本当に難しくて大切な所だと実感しています。

会社組織として最低限の機能を果たすべく半年ほどかけて仕組み化に注力してきましたが、あとはメンバー全員のチームへの関わり方をどう定義していくかという課題が残されています。東京チームは同業他社と掛け持ちをせずにオンスの共通認識(哲学や理念)を何年にもわたって共有してきた人たちで構成されています。一方、今回立ち上げる名古屋チームに関しては専属ではないフリーランス契約であり、各々が同業他社等ですでに仕事を受注しているパラレルワーカーで構成されています。各々が既にある程度完成されたテイストや世界観を持ち合わせて仕事をしており、オンスの表現手法を浸透させる素地が限られているという現実も見えてきました。

東京チームの仕組み作りとは異なり、名古屋チームは多様なバックグラウンドを背負ったクリエイターの集合体を組織化して独立したブランドとして調和させる必要があります。その為にはオンスイズムの哲学を正義として改宗を迫るのではなく、チームのミッションとビジョンを明確にして全員が共通の目的に向かって協力する仕組み作りが必要だと考えました。

  • ミッション(運営理念)撮る人(クリエイター)も撮られる人(顧客)も豊かになること。

  • ビジョン(経営方針)誰もが自分の人生を映像や写真として表現できる世界を目指すこと。

  • バリュー(行動指針)多様性を重んじ、幅広いクリエイターが参加する事でより多彩なコンテンツが生まれる。それらを提供する仕組みを作ることでお客様の人生をより豊かにする選択肢の一つとなり、100年経っても人の心の糧になるような価値を社会に提案する事。


多様性をどうやって統一させるのかが名古屋チーム成功のカギになります。 多様性を統一させることは、人々が個性的であることを尊重し、同時に社会的なつながりや共通の目的を持つことを促進することになります。

  • コミュニケーションの重視: 人々が異なる背景や文化を持っている場合、適切なコミュニケ ーションが必要です。異なる意見や文化に対する理解を深め、相手の視点を尊重することが 大切です。

  • 共通の価値観の確立: 人々が異なる背景を持っている場合でも、共通の価値観を共有することで、統一感を持つことができます。例えば、組織内での目的やビジョンを明確にすることで、人々が共通の目的に向かって協力することができます。

  • 個性を尊重しながらも、平等な扱いをする: 人々が異なる背景を持っている場合、個人の尊厳を尊重しながらも、平等な扱いをすることが大切です。人々が自分らしくいられるような環境を作ることで、多様性が生かされ、統一感を持つことができます。

  • 教育やトレーニングの提供: 異なる背景を持つ人々が共通の目的に向かって協力するためには、必要なスキルや知識を習得することが必要です。教育やトレーニングを提供することで、人々が共通の理解を持ち、統一感を持つことができます。

異なる背景を持つ人々が共通の目的に向かって協力することで、より強い組織や社会を築くことが出来るんじゃないかと。多様な働き方をも内包した新しい時代の新しい小規模チームの在り方は、すでに自己の哲学や目標を自覚して持ち合わせたパラレルワーカーたちの集合体を生み出すことになるかもしれません。

*「今日の小さなしあわせが、やがて人生になる。」
Fuji Film X-H2S
Cinematographer : Hiroshi Iizuka
Photographer : Takashi Gomi


新しく立ち上げるOUNCE AND THENのYouTubeチャンネルです。興味のある方は是非ご覧ください


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