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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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2019年9月の記事一覧

あたたかな繭とはだいろの輪廻

 
毎晩なめらかな毛布にお別れを告げる、さよなら、明日の夜、あなたに触れるのは違うからだなのよ、今日はこいびとに会わなかったけど、新品のキャミソールを着た、一日たりとてわたし、まるごとおなじ日なんてないの、ひととはそういう生き物なの、時間や、重力と、共存している。

ぼくのものだとこいびとは言うし、あなたにあげるとわたしは言うけれど、このからだ、髪の一本もわたしのものではないので、ほんとうは受け

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きみの住んでたたまごのいろは

 
きみとキスしているあいだしか生きていてよかったなんておもえないのに、きみは死んでしまいたいなんて思ったこともないらしい、じゃあキスしているあいだ、なにをおもっているの、そう聞いたら、生きていてよかったって、おなじようにおもっているよって笑っていた。

圧倒的にぼくときみは他人でだから抱きしめあったりするってこと、ふたりでいるってことは、つまり、自分がひとりだって理解することなんだって、こんな

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健全で不完全な燦然とした×××

 
セックスも愛も詩にできないなら物語にならないなら終わりだと思った、ちいさな花屋さんになって花を数えてきみと暮らしたいねって、おいしいところだけ思い浮かべてウソをつく、生活、大体の生活、まちを、あるく、ひとのすべて、こんなにうつくしいのにお金になんなくて涙が出そう。

またねって手を振って横断歩道を渡る間ずっと、いなくなっちゃおうかなって、思ったりするの、隣でぷかぷか浮いている次の約束、ぱちん

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ドラム式簡易宇宙で

 
ぼくらいつまでも人工のひかりを追い続けなければならない、太陽を丸めた奴に会うまでずっと、奇跡や偶然を信じ続けなければならない、君たちがそれを簡単そうにやってのけるのは、産まれたときから、教科書もエックス線も共通のかみさまだったからなのかい。
ぼくはまだこの身体に子宮がないってこと、理解も、信用も、できずにいるのだ。

目を閉じるとやけに角張った物質だけがまぶたに映るので、子どものころ、血管を

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君はいつかの母であるから

 
枯れた花の前で立ち尽くすことに意味なんてあるの、君はただ泣いて、ただ泣いているけれど、それが祈りなのか弔いなのかただの哀しみなのか、ぼくはそればかりが気になっている、例えばその涙をひとなめしてその塩辛さでわかりやしないかと、考えて、やめた。

ぼくが泣かないのは冷たいからでも強いからでもなく、海を産めないからだ、幼い頃、転ぶたびにぼくの頬を落ちる雫の中で魚は呼吸を奪われてしんでいった、いつも

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右の目は星座を結ぶためだけにある

 
指差したあのほしがぼくのおだやかなふるさとなんだってこと、信じてくれないならきみとこいびとでいる理由はもうなくなってしまうのだ、心臓とよばれるもののかたちがきみと違ってもメロンパンはあまくておいしいし、背の高いひまわりが好き、きみの使うことばを理解できる、きみにあいをつたえられる。

ふるさとへはもう帰りません、このほしで夜空を見あげて、ちいさな鈍い光をおもって左目からだけなみだをこぼすこと(

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