君はいつかの母であるから

 
枯れた花の前で立ち尽くすことに意味なんてあるの、君はただ泣いて、ただ泣いているけれど、それが祈りなのか弔いなのかただの哀しみなのか、ぼくはそればかりが気になっている、例えばその涙をひとなめしてその塩辛さでわかりやしないかと、考えて、やめた。

ぼくが泣かないのは冷たいからでも強いからでもなく、海を産めないからだ、幼い頃、転ぶたびにぼくの頬を落ちる雫の中で魚は呼吸を奪われてしんでいった、いつも赤い魚だったこととそれが金魚ではないことだけはたしかに覚えているけれど、ぼくは、何匹そうしてころしてしまったのか、覚えていない。
そして、それを罪だと、思っていない。

君がぼろぼろとこぼす雫の中で生きてみたいと思った、その水だけを飲んで生きていきたいと思った、ぼくらのはじまりはきっとすべて、その、ちいさな、海なのだと思った。

(わたし、あなたを、生かしてあげたい。泣く、理由なんて、それだけでいいでしょう)






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